飴と鞭

真鉄

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飴と鞭

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「じゃあ、挿れますからね。いきんでください」

  おもちゃの最大直径よりも大きい先端が、ほぐれた蕾にめり込んでくる。俺は息を吐き、言われた通りに腹に力を込めていきんだ。

「う、うあああ……っ!」

  ぶわ、と身体中から冷や汗が一気に噴き出した。自分は排出しようといきんでいるのに、巨大な体積が逆行して押し入ってくるのだ。胸まで入り込んでいるのではないかと思えるほどの威容に、俺ははくはくと浅い呼吸を繰り返すことしかできなかった。痛みなら我慢できるなんて嘘だ。こんなものを無理やり突っ込まれたら裂けてしまい、二度と本来の用途で使うこともできなくなっただろう。ちゃんと舐めておいてよかった。片山がちゃんと広げてくれてよかった。

  入り口の肉をきちきちに押し広げ、ゆっくりと異物が隘路を押し通る。痛みよりも違和感の方が酷かった。脂汗を額に浮かべ、肉杭が俺を最奥まで刺し貫くのを浅い呼吸を繰り返しながらじっと待った。しばらくして、尻に片山の腰が当たった。ついに全部入ったのだ。

「全部飲み込めましたね。よくできました」

  子供を褒めるような口調で、片山が汗で湿った俺の髪を梳いた。目を細め、愛おしげに俺の頭を撫でる仕草に、何故か胸に甘い疼きが走り、俺は困惑した。涙腺が緩み、じわりと目が潤んだのが自分でも分かる。さっきまでの悔しさや恥辱、度を過ぎた強制的な快楽の涙とはまた違う。これは紛れもなく、ただ俺が片山に欲情して目を潤ませているだけなのだ。俺は片山を咥え込んだ腰を緩く動かした。

「ふふ、動くのはまだですよ。僕の大きさと形を中で覚えてください」

  片山が身を寄せてそう囁いた。片山の瞳孔の開いた瞳にとろけた顔の俺が写り込んでいた。俺はそっと口を開き、誘うように舌を出した。片山が嬉しげに笑い、俺の舌に音を立てて吸いついてくる。舌先を唇で吸われ、舌同士を擦り合わせ、上顎の凹凸を舐め上げられ、撹拌された唾液を飲み込み、深いキスを交わしあう。

  何故俺が片山を苦手としていたのかが分かった。こいつは表面上は普通の取引先として振る舞っていたが、瞳だけは俺に対する感情を隠し切れていなかったのだ。俺を冷徹に観察し、俺に熱烈に欲情するこの瞳。観察されている自覚はかすかにあった。だが、欲情されていることには先に肌が感じて警告を出していたのだろう。まさか同性に欲情されているなんて普通は思いもしない。

  だが、今は――。自分自身の感情の変化に戸惑っていた。どうして目の前の凌辱者が愛おしくてたまらないのだろう。羞恥と屈辱は未だにくすぶっている。だが、それよりも悦びがあった。未知の快感を引き出した男に対する依存か、卑怯な手を使ってでも自分をモノにしようとするほどの深い執着に対する畏怖か、どれだけ無様な様子を見せても受け入れてくれる深い恋着に対する信頼か、単に隠れていた被虐性の発露か、自分でも分からない。

  だが、確実に悦びがあった。

「ンひぃっ……!」

  乳首を挟んだままの洗濯バサミを片山の指が何度も弾いた。びりびりと走る刺激にきゅうきゅうと肉の輪を食い締め、俺の中を侵蝕している熱と体積を思い知る。洗濯バサミが外され、片山がいやらしい音を立てて腫れた乳首に吸いついた。乳輪ごと吸引し、甘噛みされて敏感になった乳頭を舌先で強く弾かれる。串刺しにされた腰がヒクヒクと跳ねた。

「ねえ、吉岡さん、こっちでイキたいですか?」

  身を起こした片山が、そう言って俺の萎えたペニスを手でしごき始めた。触れられるとどうしても、射精の欲求を思い出して切望してしまう。腰の奥に蟠る快感の燠火に炙られ、俺は必死に頷いて弱々しく呟いた。

「イ、イカせて、欲しいです……」
「そうですねぇ……。なら、自分でしごいてください」

  見ててあげますよ、と片山が微笑する。もう俺には取り繕える部分などないだろう、とは思うが羞恥で手が動かない。片山の指が煽るように半勃ちの肉茎をくすぐり、裏筋を指で撫で上げた。俺は焦燥感にせわしなく浅い息を繰り返す。抱え込んでいた脚から手を離し、恐る恐る手を股間に向かわせた。片山の手が代わりに俺の脚を押さえ込む。

「見、ないで……くださ、あっ……」

  俺は顔を背け、ぬちぬちと肉茎を掴んだ手を上下に動かし始めた。手の中でむくむくと大きくなったペニスは異常に濡れそぼっていた。先走りの多いタイプだとは自覚していたが、これほどとは、と呆れる。片山が殆ど出し入れせぬままゆるゆると腰を動かし始めた。奥がねっとりと掻き回され、かすかな電流が背筋に流れ出す。片山をふと横目で見ると、俺がしごいているところを熱心にスマホで撮っていた。俺は目を細め、先走りで濡れた手を陰嚢に滑らせ、やわやわと根元を揉んだ。スマホがまんまと俺の手の動きを追うのが可笑しく、愛おしかった。

「あ、あっ……、ふ……」

  肉杭に貫かれたままへこへこと腰を揺らし、俺は一心にペニスをしごいた。指を輪にしてカリの段差を擦る。深いストロークで竿全体を刺激する。人差し指の腹で鈴口をくじる。身を灼く恥辱とともに、食い入るような目で俺を見ている片山に、痴態を見せつけていることに対する悦びがあった。

「あ、んん……、イキそう……」
「いいですよ。ばっちり撮っといてあげますから、最後にいっぱい出してください」

  最後に、とは何なのかと頭の片隅で思ったが、そんなことよりも目前まで来ている絶頂の予感を追いかけることで意識がいっぱいだった。ストロークを強め、ただ解放へとひた走る。ぐちゅぐちゅといやらしい音が耳を汚す。

「ンっ、あっ、イク、イクイクッ……!」

  尿道を熱い塊が駆け上がり、びゅるびゅると激しい勢いで飛沫が飛び出した。まるで十代の頃のような勢いで飛んだ精液は胸どころか顔にまで達し、右の眼鏡のレンズを汚した。ぬめぬめとした白濁で汚れた視界の中、片山が興奮しきった顔で俺を動画におさめていた。俺は荒い息を吐きながら唇に飛んだ白濁をちろりと舐めた。
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