負けず嫌い

真鉄

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「じゃあオナ禁二週間できたら五万だからな!」
「言ったな?  できなかったらお前が俺に払えよ?」
「へっ、余裕余裕。今のうちにご祝儀袋買っとけよな」

  などと何故俺は言ってしまったのか。そうだよ、酔ってたからだよ。生来の負けず嫌いってのもあるけど、お酒って怖い。これからは気をつけます。自制します。だから神様――。

「さ、わんなって……!」
「どこもかしこもめちゃくちゃ敏感になってら。おもしれー」

  後ろからしきりに乳首触ってくるコーイチ殴ってもいいですよね。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



  最初は売り言葉に買い言葉だった。酔った勢いから俺は絶倫自慢(とは言っても悲しいかな童貞だ)を始めたのだが、コーイチが白けた目で「猿じゃあるまいし」とボソリと漏らしたものだから、酒精でいい感じにネジが外れていた俺は「絶倫ではあるが我慢もできるから猿じゃねえ。俺が、俺こそが霊長類だ」と真剣に主張した。そのときは本気で真剣だったんだ。お酒って怖い。

  そして、あれよあれよと言う間に賭けは成立した。正直に申告すると、俺は大学生となった今も毎日のようにオナってる。一人暇になったら、じゃあ取り敢えずオナるとしましょうかな小生は、とおもむろに股間に手を伸ばすぐらいカジュアルにオナる。ニ日と空いた試しがないのだ。それを二週間とか無理にもほどがある。せめて一週間……いや三日と何故言えなかったのか俺よ。始まったばかりの長い夏期休暇と酔っ払った解放感のコンボは調子こいた大学生には凶悪すぎたのだ。

  しかし後悔してももう遅い。賭けが成立した翌日から、俺は一人暮らしのコーイチのマンションに泊まらされ、監視下に置かれることとなった。お泊り道具取ってくるから、という名目で何とか一旦家に帰らせてもらえた。母ちゃんに、今からコーイチの家に二週間泊まる旨を宣言し、「たまにはコーイチくんうちに呼びなさいよ」と苦言を呈する母ちゃんの声に適当にハイハイと答えながら自室に駆け込む。もちろん、これ幸いと抜けるだけ抜いたのは言うまでもない。連続二回発射ぐらい余裕余裕。すっきりした後、適当な着替えを鞄に詰め込んで一階に降りると、玄関先にはお菓子やら飲み物やらが詰め込まれた紙袋が二つも鎮座していた。俺は、刑務所に戻る囚人ってこんな気分かなと思いながら、母ちゃんの思いやりとともに電車に揺られた。

「……何かイカ臭くね?」
「ええー?  魚屋さんが訪問販売に来てんじゃね?」

  出迎えたコーイチは袋を受け取りながら鼻を蠢かし、開口一番そんなことを言ったが、もちろん俺はすっとぼけた。まさか電車で隣になったお姉さんが俺にやたら熱い視線を向けてきていたのは……いやまさかそんなことは。俺はそっとTシャツの首元を広げてくんくんと匂ってみた。……まあ、自分の匂いは自分では分からないと言うし。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



  一日目はつつがなく終わった。ゲームして無駄話して酒飲んで――と、これまでに過ごしたコーイチとの休日と何ら変わらない。むしろクソ暑い自分ちにいるより、遠慮なく冷房かけ放題な分ここのほうが快適かもしれない。

  夜中も過ぎて、いい加減寝るべ、とコーイチのベッドの下に薄い布団を敷く。Tシャツにボクサーパンツ一枚で、タオルケットがわりにバスタオルを腹に掛け、枕に頭を置いた瞬間から睡魔がいい感じに瞼を閉じさせた。どんなところでも寝られるのが俺の特技なのだ。……しかし、頭上から降りかかってきた無情な声に睡魔は一瞬にして撤退を余儀なくされた。

「言っとくけど、夢精もアウトだぞ」
「そ、そんなの不可抗力だ!  横暴だ!」

  そう主張したがコーイチは頑として譲らなかった。くそ、五万程度で鬼になりやがってこの野郎。……輪ゴムか何かで根元を玉ごと縛ったら堰き止めらんないかな。でも鬱血して壊死とかしたら?  そんな悲しいポロリはごめんだ。しかし今日はともかくこれからはヤバいよな……。俺は早くも弱気になっていた。全く勝ち筋が見えてこない。

  しかも一旦股間を意識したら、無性にオナりたくなってきてしまった。何だかむずむずする股間からむりやり意識を逸らそうと、一から順に数え始めた。何回目の二百だか分からない頃、コーイチの健やかな寝息が聞こえ始め、俺はまんじりともせず、ただ輾転反側するばかりだった。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



「証拠を見せないなら負けと見なす」
「だから!  してねーって!」

  翌朝、いつもながら元気に朝勃ちしている股間をバスタオルで隠し、俺は無実を主張した。短い眠りから起こされ、夢精していないなら証拠を見せろなどと無茶振りされて、最悪の目覚めだった。

「大体、証拠ったってどうやって証明すりゃいいんだよ!」

  そういうのを悪魔の証明って言うんだぞ。唇を尖らせ非難する俺をベッドの上から見下ろしながら、コーイチは至極冷静に言った。

「俺が検分する」
「はぁー!?」

  ちんぽをか!?  俺は激しく動揺し、正直ちょっと引いた。

「ええ……、マジで……。そこまでする?  普通」
「ははあ、見せらんねえってか」

  冷笑するコーイチの目に俺は瞬時にムカつき、バスタオルを放り投げてその目の前に仁王立ちになった。ボクサーパンツのゴムに手をかける。

「誰が短小だオラァ!  そこまで言うんなら目ェかっ開いてよく見ろや!」

  そこまで言ってない?  いいや、コーイチの目は間違いなくそう言っていた。似たようなメンタルの俺にはわかる。一気に膝までパンツを引きおろすと、ゴムに引っかかった勃起が下腹に勢いよく当たる間抜けな音が静まり返った部屋に響き渡った。コーイチは珍しく細い目を真ん丸にして、隆々とそそり勃つどす黒い怒張に見入っていた。ふふ、怖いか?  いやまあ、サイズは並なんだけど。身体つきが厳ついから相対的に小さく見えるかもしれないけど並だから。でも絶倫と自負するだけあって玉はでかいぞ。俺は見せつけるようにふんぞり返った。

「ふーん」
「ひゃん!」

  突然の強い快感に俺は溺れた猫のような声をあげて腰を引いた。見ると、俺のちんぽにコーイチが手を伸ばしているではないか。えっ、こいつまさか触ったの?  と呆然としている俺をよそに、コーイチの手がしっかりと俺のちんぽを握り締めた。

「ちょっ、ちょっ、おま……」
「濡れてもないな。オッケ」
「……、う」

  握った筒状の掌が一度全体をしごき、するりと離れて行った。ヤバい。今のめちゃくちゃ気持ちよかった。男に、友人に、コーイチに触られたという気まずさなんて、生まれて初めて自分以外から与えられた衝撃を前にしたら小さいもんだった。

「んじゃー、朝飯にするか」

  そう言うと、コーイチは本当に何事もなかったかのように立ち上がり、さっさと部屋を出て行ってしまった。勃起ちんぽ丸出しで仁王立ちしてる間抜け面の俺を残して。俺だけを残して。
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