Illusion of Halloween

まちは

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後編

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ソフィーが少し顔を赤くしていると2人の間の甘酸っぱい空気を感じたのか5,6歳くらいの女の子がやってきた。

「ねーねー、おねーさんとおにーさんってつきあってるのー??」
「てるの?」

その聞いてきた女の子は体は1つだか2つの頭を持っていた。
1人は髪をツインテールに縛っていて、好奇心で目をらんらんと光らせていた。
もう1人の子はながいかみのけをおろしていて、どこか眠たげな顔をしていた。
そんな普通とはかけ離れた子を見ても2人は恐ろしいとは微塵も思わなかった。

「つっ!?付き合ってないよ??」

ソフィーは顔を赤らめたまま叫んだ。

「何だつまんないのー!!」
「つまんない…」

その子が不貞腐れたと思ったらすぐに、

「「お菓子をくれなきゃいたずらするぞー!!」」

と2人揃って元気に言った。
ジャックは女の子に目線を合わせると、

「お菓子をあげるからイタズラはしないで欲しいなー?」

とニコニコしながら言った。

「ソフィー、僕のズボンのポケットにソフィーのお店で買ったあめが入ってるからそれを渡してあげてー??」

ソフィーはジャックのズボンからあめの入った瓶を取り出したを
その瓶を女の子の方へ差し出して、

「ごめんね、手が塞がってるから自分で瓶の蓋を開けて1人1つづつあめを取ってくれない??」

女の子は喜んで瓶の蓋を回し水色と白色のあめを2つ取り出し、また蓋を閉めた。
女の子はそのあめを舐め、

「おいしー!」
「あまい」

と頬に手を当てた。

「おにーさんとおねーさんあめありがとう!!」
「ありがとう」
「あめもらったからイタズラはしないね!ばいばーい!!」
「ばいばい…」

女の子は右の手を大きく左の手を小さく振ると、くるっと背を向き走ってたくさんの人の中に紛れた。

「不思議な子だったけど可愛かったね!」
「うん、可愛かったー!!」

2人がほのぼのしているとお菓子をもらうために人が来た。
動物の耳や尻尾がついている子や体が骨だった子など多種多様だった。
一つ共通していたのは自分より背が小さく幼い子ばかりだった。
ソフィーは自分が大きくなったように感じとても誇らしかった。

瓶の中の雨が半分ほどになったとき、ソフィーは誰かに呼ばれたような気がしてふと後ろを振り向いた。
よく目を凝らすと森の中に一人ぽつんと人が立っていた。
なんとなくぼーっとその人を眺めていると甘いチョコレートの匂いが漂ってきた。
今までかいだことのないくらい凝縮されたチョコレートの香り。
そのチョコレートが欲しくなったソフィーはそちらに体を向けようとした。
すると目の前に淡く光るパンプキンのランタンが出てきた。

「わっ!びっくりした!!」

その瞬間今までかおっていたチョコレートの香りが消えた。

「あれ??チョコレートの香りが無くなった…。」

ソフィーがそう言ったのを聞いたジャックはランタンを前に掲げ、小さな声で何かを呟いた。
するとさっきまで黒い人がいた方向から灰色の光がすごい速さでこちらに向かってきた。
その光は2人の前まで来ると一度止まり、パンプキンのランタンの目の部分から中で燃えている炎に飛び込んだ。

「ソフィー、あんなに強い匂いよりこれぐらいのほうがいいでしょー??」

ジャックはソフィーの顔にランタンをもう一度近付けた。
先程よりも赤みが増した炎がみえるランタンからはかすかにチョコレートの香りがする。
その香りにソフィーはなんとなく温かい気持ちになった。

「うん、このぐらいがいいな。さっきのだと甘すぎる匂いで胸焼けしちゃいそうだし。」

ジャックその言葉を聞いて嬉しそうに笑った。


その後2人は自分よりも背の高い人からお菓子を貰ったり、突然どこからか始まったワルツに乗っててきとうなステップを踏んでみたりした。

ワルツが終わると同時にあらゆる音とあらゆるものの動きが止まった。
しんしんと真上から静かで美しい月の光が降り注ぐ。
その月の光を受けた人達はジャックとソフィーを除き、体が淡く発光しだした。
そしてどんどん体が小さくなり、ついには片手で持てるほどの小さな光る玉になった。
その色は1つ1つ異なっていて、まるで雨を太陽の光に透かして見たときのように綺麗だった。

「うわー!すごい!!」

ソフィーは目を輝かせた。
一方ジャックは、そのすべての光たちを静かに見つめていた。
1つ、若草色に光る小さな玉がソフィーの近くによってきてソフィーの周りをくるくると回りだした。

「お母さん…?」

優しくお淑やかだった母にどこか似た色をしている光る小さな玉に対し、ソフィーはポツリと呟いた。
意識しないまま光の玉を掴もうと手を伸ばすと、一瞬その光はソフィーの人差し指に止まりソフィーの頬を撫でるようにソフィーの脇をすり抜け空の彼方へ飛んでいった。

瞳から透明な涙が1つ零れた。

ジャックは何も言わずソフィーを抱き締め、ランタンが頭に当たらないように気をつけながら何度も優しく撫でた。
ソフィーはそのジャックの優しさに心のガタが外れたように号泣しだした。


ソフィーが落ち着き始めると重いものが地面に叩きつけられるような鈍い音がした。

「な゙に゙?」

驚いてジャックの顔を見ると、そこには一年前より大人びてかっこよく見えるジャックの顔があった。

「ジャックの顔が人になってる!!」
「お仕事がさっきので終わったから外れたんだー。」

ソフィーの驚き方にジャックはくすりと笑った。

「ねーねーソフィー。お仕事終わったから僕のことちゃんと名前で呼んでよー。」

ソフィーは深く息を吸って呼吸を整えた。

「アル、アル、アル…アルベルト。」

ソフィーが何度も繰り返し名前を呼ぶと2人は何だかおかしくなって笑いあった。

「もう遅いし帰ろっかー。」

アルベルトは1度ソフィーから離れて自分の後ろに落ちた自分の顔に被さっていたものの中から何かを拾い上げた。

「アル、それは何??」
「んーこれはねー、お仕事を最後まで頑張りましたー!!っていう印!」

アルベルトはソフィーに手の中のものを見せた。

「あれ…これお父さんが持ってるネックレスと同じ…。」

大きめのカボチャの形をしたネックレスがジャックの手の中に収まっていた。

「ソフィーのお父さんもこのお仕事してたらしいからねー。」

ソフィーは自分の知らない父のことをアベルが知っているのが面白くなく、不貞腐れた。
急に拗ね始めたソフィーに困ったアベルは用がなくてポケットに仕舞っていたあめの瓶から緑色のあめを1つ取ると、

「えいっ!」

とあめをソフィーの口の中へ放り込んだ。

「あ、おいひぃ…。」

ソフィーは絶妙な甘さのあめの味にうっとりとした。
アベルはそのソフィーの表情に対して満足そうに頷くと、

「帰ろっかー。」

と言い、今度こそ静かで小さい道を戻っていった。



2人が柵のところまで戻ってくると村の大人たちがちらほらとまっていた。

「アベル、ソフィーお帰り!!仕事お疲れ様。」
「アベルは一年間大変だったね。」

2人は大人たちの声に返事をしながら眠くなって腫れぼったくなった目を擦った。

「2人にはこの時間はもう遅いものね。今日はもう早く帰りましょうか。」

アベルのお母さんがそう言うと大人たちは家に戻り始め、ソフィーは父にアベルは母と一緒に帰った。



ソフィーが家に帰ってベットに潜り込んだとき、隣には父が立っていた。
なんとなく父を眺めてソフィーは、

「さっきね、お母さんにあったよ。」

と、とても小さな声で言った。
父は少し考えるそぶりをした。

「そうか…元気そうだったか?」

聞かれた問にソフィーは眠くて重くなった頭を縦に振った。
父は少し微笑みソフィーの頭を優しくなでるとろうそくを吹き消した。

「お休み。」

部屋を出ていくときに父が挨拶をしたが、すでに幸せな眠りに落ちていたソフィーからの返事は無かった。


END🎃
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みんなの感想(1件)

千夜
2018.11.02 千夜
ネタバレ含む
2018.11.03 まちは

お読みいただきありがとうございます(*´꒳`*)

解除

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