チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第2章ダンジョンの怪物

11王VS怪物

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 俺と鮫島の二人に挟まれた松尾。
 彼女は自分のコマンド画面を見ながら、呆然《ぼうぜん》と立ち尽くすことしかできなかった。


【『2』ターン目・《プレイヤー側》】


「蓮に『誘導魔法』をかけろ!」
「松尾さん、俺を見殺しにしないでくれ……」
「……」

 そんな彼女を見つめている俺は、不安が顔に浮かび上がってきた。鮫島や松尾に虐められてきた記憶が蘇ったのだ。
 あいつら虐めっ子の言う事は信じられない……と。
 震えている松尾の姿を凝視した後は、縋(すが)る事をやめた。
 時間の無駄だって分かったからな。俺は目の前のコマンドに目を向けた。


 恐らく彼女は、最終的に俺へ誘導魔法をかけるだろう。
 そうすれば虐めっ子二人の無事は確定するから。
 だから俺は、自分の事を守る方法を考えなくちゃならない。
 覚悟を決めた俺の瞳(ひとみ)は、まっすぐにコマンドを見つめていた。


―――――――――――――――――――――――
    選択時間:25秒
→ ●戦う
  ●逃げる
―――――――――――――――――――――――


 時間がない。早く決めなくちゃ。
 俺は震える体を抑えながら『戦う』を選択した。でも、自分のコマンドを見て驚いたよ。


 ――戦えないんだから。


―――――――――――――――――――――――
   選択時間:20秒
→ ●物理攻撃  ※攻撃値が0の為、不可
  ●呪怨じゅおん  ※MPが0の為、不可
  ●身を守る
  ●アイテム
―――――――――――――――――――――――



 『戦う』を選択した後にも選択肢がある。全ての選択肢が興味深いがそんな事はどうでもいい。
 奴隷の俺が選択できるコマンドは一つしかないんだから、『身を守る』というコマンドしかない。
 それ以外に選択肢が無かった。


 現実を目の当たりにすると、自分の置かれた立ち位置というモノが分かってくる。
 俺は最弱なのか。戦う事が出来ないのか、ってさ。
 結局『身を守る』というコマンドを選択したよ。
 どのような効果なのかは分からない……でも、俺にはこれしかないんだ。


 こんなもので、化け物の攻撃を防げるとは思えないけどな。
 すると機械音が再び響き出した。


〈選択が終わりましたので、プレイヤーのターンを開始いたします〉
〈プレイヤー『鮫島』が『戦う』を選択致しましたので、『呪猫(カース・キティ)』に対する攻撃を始めます〉


 機械音の言葉で、今がプレイヤー側のターンなんだと気付かされた。
 自然と肩の力も抜ける。
 そういえば、今回は俺達のターンなんだ。化け物の攻撃は心配しなくてもいいのか。
 束の間の休息を得られる、と俺の心は少し落ち着いた。
 ピンと張った緊張をほぐす余裕ができたのだ。
 しかし、ここで目を離してはいけない。


 このパーティーの中で最強の攻撃力を誇っている『王(キング)』の力を見なければならないからだ。
 もし有効なダメージを与えられなければ、俺達は終わり。
 鮫島の攻撃力が俺達の運命を左右する。
 横を見てみると、俺だけじゃなく松尾も鮫島の動きに注視していた。
 そして、俺達の希望を背負った鮫島は、ゆっくりと化け物に近づいていく。


〈『鮫島』の攻撃『王の法典《キング・ロー》』が実行されます〉


 鮫島は化け物の前に立つと、両手を上にあげて攻撃の為に詠唱を始めた。


「我は王……万物(ばんぶつ)を統(す)べる者なり……よって我(わ)が意思に従え……」


 大きくはないが力強い声だ。
 その詠唱の後、地響きのような、自然が悲鳴をあげているような、そんな音が鳴り響いた。
 恐らくこれが鮫島の魔法の効果なのだろう。


【ガガガガガガ……】



 物凄い音をたてながら、鮫島の前の地面が次々と裂(さ)けていく。


【ガガガ………】


 とうとう化け物がいる地面にも裂け目が出来始め、そこに化け物は飲み込まれてしまった。
 化け物の鳴き声が、地面に吸い込まれていく。徐々に俺達から離れていくのが分かった。


『アァァヴヴァァ……………』


 化け物の声が完全に聞こえなくなると、俺は思ったんだ。
 なんだよ、これで戦闘は終了じゃないかって。
 俺は嬉しさのあまり松尾に話しかけてしまった。


「松尾さん!」
「えぇ! 助かったのね私達!!」


 彼女も、生き返ったかのように活き活きと応えてくれた。
 その姿は虐めっ子と虐められっ子の会話には見えない。
 単なる友人みたいだった。
 その後も俺達は会話を続けた。喜びを抑える事が出来なかったからな。


「鮫島君凄いですね。あんなに強いだなんて」
「本当にね……私も死ぬかと思ったわ。戦闘が終了したら、すぐにダンジョンを脱出しましょう」


「そうですね! あ……でも一応ダメージ計算が残ってますよ」
「そうだったわね!!」

  
 しかし、俺たちの心が安らいだのは束の間だった。不気味な機械音が続けてダメージを報告してきたからだ。
 一体どれくらいのダメージなんだろうか……10万のダメージかな?なんて考えていると、現実を知らせる音声が入った。


〈ジジッ……〉
〈『呪猫(カース・キティ)』に100のダメージ〉


 機械音が告げる100のダメージ。それはほぼ無傷である事を意味する。
 俺達の希望は絶たれたのだ――。


 一度希望をちらつかされてから絶望に落とされると余計に精神にくる。
 松尾は崩れ落ち、壊れた人形のように同じ言葉を何度も発し続けている。


「嘘でしょ……嘘でしょ……嘘でしょ…」
「大丈夫ですか松尾さん!」


 彼女を心配する俺だが正直そんな余裕は無い。
 異常な心拍数を感じながらも、冷静になろうと必死に頭を働かせた。
 しかし、こちらが勝つビジョンをどうやっても描けないのだ。


 顔を下に向ける鮫島、力なくその場に崩れ落ちた松尾、混乱する俺。
 そんな俺達をあざ笑うかのように、『呪猫(カース・キティ)』の鳴き声が地面から漏れ出していた。


『ァァァアヴヴゥ』
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