フリーター冒険記 〜無職転生者は、堕ちたギルドで最強を目指す〜

01女神の囁き

「目覚めなさい……」
「ん……」

　男の視界が暗闇に包まれてからすぐだった。彼の頭の中に、清らかな女性の声が響きだしたのだ。

「私は女神アテナ……あなたは死にました」
「え……」

　突然聞こえた女性の声に、男は重たい瞼をあげた、驚いたような表情ではなく何かを悟ったような顔で。

「俺は死んだのか」
「はい。死にました」
「随分と淡々としてるな」
「何か問題でもあるのでしょうか？　私の仕事はこれなのです」
「ははは。特に問題ないさ」
「そうですか。では、こちらをご覧ください」

　女神はそういうと、手に持った紙を男に見せてきた。
　NEWWORLD……異世界転生と真上に書かれた紙を。

「あなたは、これから異世界に転生して魔王を討伐してもらいます」
「え？……何いってるんだ？」
「だから魔王を討伐するのですよ、あなたの転生先はエレクトロというゲーム世界です」
「急に何言ってるんだよ。死んだら天国か地獄に行くんじゃないか？　やっとゆっくり眠れると……」

　男は声を荒げながら混乱しているようだ。しかし、その男の反応を見て女神は笑っている。

「死んだら地獄も天国もありませんよ、ただ、魂が異世界を循環しているだけです。では……お元気で」

　男の訴えも虚しく、彼の視界は再び暗闇に包まれた。