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11 可愛い奴隷商人
しおりを挟むゴールドとフォーレンは目の前にいる謎の女性奴隷を見て、2人して目を見合わせていた。
「ふん。貴様らは妾の新たな主人であろう。さぁ、早く妾の肩でも揉め」
ワイングラスをこちらに傾けて、ニヤリとした表情でその女性はこちらに語りかける。
(本当にこいつは奴隷か?)
確かに、来ている服は汚く薄い布一枚だが、容姿は端麗で銀色の髪は見事と言う他ない。
「本当に奴隷なのか?」
「おい。ゴールド待て! 罠かもしれんぞ」
フォーレンの忠告も聞かずにゴールドは、女性に近づいた。
もし罠だとしても、この女性がバッカスについての情報を持っているかもしれないからだ。
「ほら。肩を揉んでやるから、バッカスについて教えてくれ」
ゴールドがそう言って肩に手を近づけると、その女は大声をあげて拒絶する。
「ち、ちちちち違うわ! 私が命じたのはあの女によ! お、おおおお男は私に触らないで」
ひどく動揺した様子でゴールドを見つめる女性。何かトラウマがあった、と言うよりも単純に男性に対して免疫がないらしい。
いや、免疫がないって。ゴールドはまだ成人ですらないんだけどな。
頬を赤く染めているその女性を見て、ゴールドは呆れた目をしている。
(この女性はなんなんだ?)
ゴールドの思考が停止していると、垂れ幕付近から大きな声が聞こえた。
「先程の男よ。3000万Gを私に払いなさい」
どこかで聞いたことのある声が垂れ幕側から聞こえた。
まるで感情が無いような、この冷淡な口調。
バッカスだ。
してやったり、というような表情でニヤリとしながら語りかける。
「その奴隷には気をつけなさいよ。注文が多いから……」
バッカスがそう言うと、奴隷の女性が声を発した。
「あらバッカスさん。いいのかしら? 私を手放しても」
「もういいわよ! あなた私に欲しい物だけ買わせて。私のお願いは聞いてくれなかったじゃない!」
バッカスが少し興奮した口調で言葉を返した。
その会話を見るゴールドとファーレンは呆れている。
「なぁフォーレンさん」
「なんだゴールド」
「もう母親はバッカスさんに任せて貰っていいんじゃないですか?」
「正直、バッカスについて悪い噂は聞かないし、もし母親を連れていかれたとしても、女児と面会もさせてもらえるだろうな。しかし」
「女の子との約束ですもんね……」
ゴールドはまだ泣いている女児を見つめた後に、バッカスと奴隷女性との会話に割り込んだ。
「すみませんバッカスさん! 中身間違えていないですかね?」
「いや何を言う、正真正銘の96番だぞ」
(やっぱり、そうくるか)
この世界には、カメラなどの情報を残す機器が存在しない。
96番の奴隷がどのような顔、姿をしていたのかなど
証明することなど出来ないのだ。
証拠が無い。
この一点だけで、奴隷商会側の判断が押し通されてしまう。
「で、どうするのだ? 正直金はいらないからその女は引き取って貰いたいのだが」
「え?」
「ほんとにその女は金がかかるのよ」
バッカスが拳を握りしめて床を見つめ出した。
その様子を見てゴールドとフォーレンはこう思った事だろう。
この女、引き取りたくない――。
と。
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