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12 女性奴隷は元王族
しおりを挟む誰もがこの傲慢な女性奴隷を引き取りたくないと思っている。
そんな中で、彼女は口を開けた。
「さっきから聞いていれば……。妾は貴族! セイレーン家の生き残りなのですよ」
「ん? セイレーン家?」
初めに反応したのはフォーレンだった。
彼女はすぐにセイレーン家と名乗る女性の方に目を向けると、驚いたように言葉を続ける。
「あのセイレーン家か?」
「いかにも。妾は貴族の末裔だ」
「そうか……」
「フォーレンさんどういう事ですか?」
ゴールドは全く2人の会話を理解できない。
もし、本当に貴族ならなんでこんな所にいるのか?
しかめた表情で、セイレーンを見つめた。その疑惑の目に気づいたのか指をさして怒っているようだ。
「なんなのよ! あなた、本当にセイレーン家の事を知らないの?」
「ははは。無知な者で」
「ゴールドよ。セイレーン家とはかつての王族だ」
「元王族?」
「そうだ。セイレーン家は王族から降ろされて、没落した名家だ。100年前にな」
「え、そんなに昔の……」
「だがれっきとした王族の血を引いている。まさか、セイレーン家の末裔がいるとはな」
フォーレンは驚いた表情をセイレーンを見つめ、こう続けた。
「名前はなんというんだ?」
「妾は、セイレーン……ローリエ・セイレーンだ!」
大きく叫ぶその表情は、奴隷とは思えない程堂々としていた。高級な椅子に足を組んで座り、ワイングラスをゆっくりと回す。
王族とも奴隷とも言えない姿。
高飛車な王女様、という表現が適切だろう。それを見たゴールドは思った。
(奴隷なのに元王族って……めんどくせぇ~)
すぐにフォーレンの元へと近づき耳打ちする。
「どうしますフォーレンさん。引き取るとめちゃめちゃめんどくさそうですよ」
「まぁ、めんどくさいだろうな」
フォーレンは腕を組んで困ったような顔をした。
まさに、その通りだ。引き受けても元王族の奴隷は様々な注文をつけるだろう。
どちらが奴隷でどちらが主人か、分からなくなりそうだ。
しかし、奴隷を捨ててしまってはどんな買主が現れるか分からないのだ。
バッカスとの交渉もある為、余計な負担は増やしたくないところだが……。
ゴールドが恐る恐るローリエの方を見ると今にも泣きそうな顔でこちらを見つめていた。
「私を、捨てる気なの?」
今回は先程までのような威圧的な態度とは違う。
まるで小動物のような可愛い表情だ。流石のゴールドもこれには敵わない。
「いや、買うよ。その代わりあまり無理な事言わないでくださいね」
「ゴールド。お前……」
ゴールドが渋々答えた後に、フォーレンが肩を叩いた。
「女性奴隷を少年錬金術師が買うなんて街に知れたら、変な噂になるぞ」
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