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最悪のタイミング

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次の日の朝。

十時ごろにチェックアウトを済ませた私たち。
朝帰りなんていつぶりなんだろうかというくらい久しぶりの出来事に
内心ドキドキしていた。ホテルから出ると眩しい朝の光に一瞬目がくらむ。


「うわ~。もうめちゃくちゃに朝だね(笑)
 夜にしか見てなかったから新鮮に思える(笑)」
「確かに、そうかも。小野さん朝みるとよりイケメンに見える(笑)」
「大人をからかうんじゃない~。」
「だって本当だもん。」


一晩一緒に過ごしたからか、すっかり小野さんとは打ち解けていた。
二人で並んで駅までの道を歩いていると
向こうから歩いてくる男性に私は一瞬で目を奪われ、
その場に立ち尽くしてしまった。


「…?杏奈ちゃんどしたの?」
「あ…いや…。」


向こうから歩いてきた男性は、私の名前に反応したのか
こちらを見るとチラッと一瞬小野さんを見て立ち止まった。


「…あれ?杏奈?」

「…結月。」

「久しぶりだね。彼氏できたの?」
「あ…いや、あの…。」


私が目を合わせられずにたじろいでいると
隣にいた小野さんが空気を読んだのか、助け舟を出してくれた。


「そうだけど、それが何か?君、杏奈ちゃんの知り合い?」
「あ、いや。何でもないっす。失礼しました。」

「あ…。」


そう言ってそそくさとその場を後にした結月。
何もこんなタイミングで再会しなくても…と
自分の運のなさに嫌気がさす。

別に小野さんが悪い訳ではないのに、モヤモヤしてしまう。
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