数十センチの勇気

こつぶ

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今度は私が…

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「じゃあ、逆に問題。
 何で市村さんが俺をずっと見てるって気づいたでしょうか。」
「えっと…それは…。」
「やっぱ見てたんだ。」
「だって、神山くんがそんな言い方するから…。」
「へへ。で、答えは?」


「…わかんない。」


私がそう答えるとすぐに神山くんの顔が私の耳元に近づいてきた。









「俺もメイのことずっと見てたからだよ。」
「…!」


そうイタズラにささやいた彼はくるっと向きを変えてさっき来た廊下を引き返した。



「っちょ!!」
「この答えの意味が分かって、もし答えが正解だったらいいこと教えてあげる。」
「何それ!っちょっと!」
「でも、まずは俺を捕まえてからだけどね♪」


そう言い残すとさっそうと走り出す神山くん。
それにつられるように自分も自然と足が前に出た。



とても遠い存在だと思っていた神山くん。
今の私にもうちょっとだけ勇気があったら…。


少しの期待とさっき名前を呼んでくれた嬉しさで顔をほころばせながら、
彼の背中に追いつくまであと数十センチ。

それまでに私の勇気もきっと湧くだろう。



彼を捕まえられたらもういう事は決めていた。








【私も、ずっと前からあなただけを見てました】







【おわり】
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