異世界の南国リゾートでバカンスを楽しむつもりがいつの間にかハードモードに?でもモフモフたち力を借りて乗り切ります!

めっちゃ犬

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第1章 旅立ち

アヒルンゴでゴー!

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そのアヒル?は馬くらいの背丈があった。それが3頭、馬車っぽい乗り物の前に並んでいる。白い羽毛に覆われた体と、黄色いくちばしと水かきのついた足が2本。サイズ以外はアヒルそのものの見た目だ。困惑する私にルリが説明してくれる。

「これはアヒルンゴと言って、ティーダル諸島の人たちがよく移動手段に使っている生き物です」

アヒルンゴは馬のように背に乗ることもできるし、乗り物を引かせることもできる。そのような乗り物をアヒルンゴワゴンと言うらしい。私たちはこれから、このアヒルンゴワゴンに乗って旅をするのだ。

「そしてこのアヒルンゴが隊長です」

ルリがアヒルンゴの1頭を指して紹介する。隊長は誇らしげに胸を張り「クワックワッ!」と鳴いた。3頭のうちこの子だけ、頭頂部の羽毛がクルンとカールして跳ねていた。なんだか寝ぐせみたいだけど、たぶんクセ毛なのだろう。

「隊長がいるんだ?」

「はい。アヒルンゴには必ずリーダーがいて、その個体が先頭を走ります。リーダーの優秀さでワゴンの乗り心地が格段に違うのです!」

「へえ」

「今回は選りすぐりのアヒルンゴですからご安心を」

「う、うん」

見た目がのん気なアヒルさんなのであまりピンとこないが、ルリが言うならきっと優秀なんだろう。

「さあ乗ってください」

彼女はワゴンのドアを開けると階段を引き出した。走るときには折りたたんで収納できるステップらしい。ルリの手を借りて乗り込むと、なかは思ったより広々として、席が向かい合わせになっていてそれぞれに2人ずつ、あわせて4人は余裕で乗れそうだ。

しばらく待ったあと、ルリが乗り込んできて向かいの席に座った。アヒルンゴワゴンが静かに動き出す。

「あれ?御者とかはいらないの?」

「アヒルンゴはとても頭が良いので、行き先さえ最初に指示すれば、あとは何もしなくてもそこまで運んでくれるのです」

「すごいね!」

私は心から感心して言った。窓の外には生い茂った木々が見える。きっと斜面の森に入ったのだろう。森のなかの道だから多分舗装とかはされていないと思うけど、ガタガタ揺れることもなく快適だ。快適だけど、ちょっと気になることがある。

前方の小窓からアヒルンゴたちの様子を確認できるようなので、腰を浮かせて覗いてみた。頭頂部を跳ねらかした隊長を先頭に、三角に隊列を組んでワゴンを引いている。

3頭ともプリプリのお尻を振りながら、森の細い道をよちよちと進んでいた。

可愛い。すごく可愛いけど。

「ねえ、ずいぶんとゆっくりじゃない?」

私はルリに尋ねた。お尻フリフリは可愛いが、アヒルンゴたちの歩みは遅い。かなり遅い。これで今日中にティーダル島につくのだろうか?それとも今日はこの島でキャンプでもするのかな?

「今は森の斜面の狭い道を進んでいますから、彼らもゆっくり気をつけながら進んでいるのです。安全な道に出ればスピードをあげますので大丈夫です」

ルリによれば、ここは無人島であまり人が入らないので、道はあるもののあまり整備されていない。倒木が道をふさいでいることもあるのだそうだ。だから事故を起こさないようにゆっくり進んでいるのだという。

「アヒルンゴたちは道の状況を自分たちで判断して安全な走行をします。街なかの道でアヒルンゴワゴンが多いときは、ぶつからないようにお互いに譲りあったりして進むのです」

「アヒルンゴって本当に頭が良いのね!」

それじゃあ自動運転と安全装置がついているようなものじゃないか。すごいぞアヒルンゴ。

「はい、私たちのアヒルンゴ隊長は特に優秀なので心配ありません」

私は納得してうなずいた。そうやって小一時間も進むと、ワゴンは斜面を下りきって小さな浜辺についた。窓から顔を出して見れば、海上のはるか先にティーダル島が見える。

「あれ?そう言えばどうやって海を渡るの?」

島から出るには船が必要だろう。アヒルンゴたちは止まる様子もなく、まっすぐに海に向かって進んでいるみたいだけど、大丈夫なのだろうか?

「もちろん、このまま行きます」

「へ?」

そのとき、ザブン!という音がしてワゴンがゆらゆらと揺れた。まさかと思って外を見ると、ワゴンは波のうえに浮かんでいる。

「アヒルンゴワゴンは水陸両用です。だからこそ離島が多いティーダル諸島で広く利用されているのです」

「そうなんだ」

ビックリしつつ、また小窓からアヒルンゴたちを観察した。3頭はアヒルみたいに海面にプカプカと浮かび、波間を泳いでいる。水の下ではきっと、水かきのついたあの黄色い足をせわしなく動かしているにちがいない。

「クワックワッ!!」

「「クワーッ!」」

先頭の隊長がひと声鳴くと、あとの2頭も答えるように鳴く。「進め!」「おー!」みたいな感じだ。するとワゴンのスピードがググンとあがった。そんなに頑張って大丈夫なのかなと思ったけど、3頭の様子を見る限り楽しそうだ。もしかしたら歩くより泳ぐほうが得意なのかもしれない。

スピードがあがると揺れが少なくなってワゴンが安定してきた。これなら小さな船に乗るよりも快適かもしれない。私はルリに向き直って聞く。

「ティーダル島までどのくらいかかるの?」

「おそらく3時間はかかると思います。なのでその間にここを快適なお部屋に改装しましょう」

改装?ワゴンのなかを?海の上で?

ルリの言うことが謎すぎてクエスチョンマークしか頭に浮かばない。

「あの」

どういうことかと尋ねようとしたら例の虹色の光につつまれ、私たちはまた白い部屋に移動していた。今度はただ真っ白なだけで、スクリーンも椅子もない。

「え?なんでここに戻ってきたの?」

「いえ、私たちが移動したのではなく、ワゴンのなかに時空の裂け目にある部屋を持ってきたのです」

「そんなことできるの!?」

細かいことは分からないが、時空の裂け目への入り口をワゴンの入り口とつなげたらしい。ワゴンのなかに入れば時空の裂け目につくられた部屋に自動的に入る。この部屋は広さは無限だし、内装や家具なども好きなようにつくれるそうだ。ワゴンのなかであっても空間が違うから、揺れも感じないで済む。

「好きなように部屋をカスタマイズできるってことね」

ルリはうなずく。なんとお風呂や水洗トイレもつくれるらしい。浜でキャンプするようなことになってもトイレの心配をしなくていいし、お風呂にだって入れるのだ。郷に入れば郷に従えというけれど、やっぱり衛生面は気になるので嬉しい。

「旅のあいだ沙世さまが快適に過ごせるようにしたいのですが、どのようなお部屋がお好みでしょう?」

ルリの問いに私は勢いよく答えた。

「高級リゾートホテルのスイートルームみたいな部屋がいい!」

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