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第4章 神殿を目指して森を行く
アヒルンゴ隊長は決心する
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ボクはずっとアヒルンゴとして暮らしてきた。来る日も来る日もワゴンを引く生活に、これまで疑問を持ったことはない。
飼い主のおじさんは優しい人で、ボクたちアヒルンゴをすごく大切にしてくれたよ。ご飯も良いものをたくさん食べたし、毛艶が良くなるようにとブラッシングしてくれたりもしたんだ。
おじさんはボクをブラッシングするたびに言った。
「この頭のクセ毛は何なんだろうなぁ」
レンタルアヒルンゴワゴン屋を営むおじさんは、これまでアヒルンゴをたくさん見てきたけど、ボクみたいに頭頂部を跳ねらかしたヤツは一度も見たことがないんだって。
ボクが小さいとき、本当は貴族のお屋敷に売られるはずだったんだけど、見た目が変だからって断られたそうだ。それでおじさんが安くボクを買ったんだって。
「俺は見た目なんか気にしないぜ!お前はとびきり頭が良いからな」
おじさんはいつもそう言って優しく撫でてくれた。
そんな風にアヒルンゴとして幸せに暮らしていたんだけど、ある日ボクは大事な任務をまかされることになったんだ。女神さまの大切なお仕事のお手伝いだ。
もちろんそんな説明を受けたわけじゃない。だけどルリさんと沙世さんの会話を聞いて、ふたりを北の神殿まで運ぶという重要な役割を任されたことに気づいた。
ボクは人間の話していることが全部分かる。
初めはほかの仲間もそうだと思ってたんだけど違うんだ。アヒルンゴはとても頭が良い動物だけど、普通はボクほど完璧に言葉を理解できないし、女神さまのことも知らない。
もしかしたらこの任務のためにボクは、女神さまに特別な力を授けられたのかもしれない。そう思って、張り切ってこの任務に臨んだよ。
そしてあの城下町の宿に着いたとき、ボクは気づいたんだ。「ここはボクの家だ」って。
宿の外観やレストランの入り口のようす、周囲に並ぶ店や行き交う人々の喧騒。何もかもが懐かしく感じられた。
そして、ボクのお父さんとお母さんがいた。
ふたりとも歳を取ったし、お母さんは髪を高く結い上げていてボクの記憶とは少し違ったけど、はっきり分かった。ボクのクセ毛はお父さんゆずりなんだってことにも気づいた。懐かしくて嬉しくて、ボクはエサをあげに来たお母さんに抱きついたよ。
だけど、いくら訴えてもお母さんはボクが息子だって気づいてくれなかったんだ。
きっとボクがアヒルンゴだからだ。ふたりは人間だし、その息子のボクも人間のはずだ。なのにどうしてボクはアヒルンゴなんだろう?
どうしてこうなったのか何度も思い出そうとしたけど、頭にモヤがかかったみたいになって思い出すことができない。
だからボクは考えた。この任務を立派に果たして、女神さまに人間にしてもらえるようにお願いしよう。そして家に帰ってお父さんとお母さんと暮らそう。
「必ず帰ってくるから、もう少し待っていてね」
ボクは両親に何度もそう言って、あの宿を発った。
北の神殿まではほんの数日の距離だし、ボクは張り切っていたんだよ。なのに今朝、思いもよらなかった事が起きたんだ。ルリさんがいなくなってしまって、沙世さんはとても不安そうにしている。
ボクは決心した。
必ず沙世さんを神殿に送り届けて、家に帰してあげよう。そしてボクも家に帰るんだ。
人間の息子として。
飼い主のおじさんは優しい人で、ボクたちアヒルンゴをすごく大切にしてくれたよ。ご飯も良いものをたくさん食べたし、毛艶が良くなるようにとブラッシングしてくれたりもしたんだ。
おじさんはボクをブラッシングするたびに言った。
「この頭のクセ毛は何なんだろうなぁ」
レンタルアヒルンゴワゴン屋を営むおじさんは、これまでアヒルンゴをたくさん見てきたけど、ボクみたいに頭頂部を跳ねらかしたヤツは一度も見たことがないんだって。
ボクが小さいとき、本当は貴族のお屋敷に売られるはずだったんだけど、見た目が変だからって断られたそうだ。それでおじさんが安くボクを買ったんだって。
「俺は見た目なんか気にしないぜ!お前はとびきり頭が良いからな」
おじさんはいつもそう言って優しく撫でてくれた。
そんな風にアヒルンゴとして幸せに暮らしていたんだけど、ある日ボクは大事な任務をまかされることになったんだ。女神さまの大切なお仕事のお手伝いだ。
もちろんそんな説明を受けたわけじゃない。だけどルリさんと沙世さんの会話を聞いて、ふたりを北の神殿まで運ぶという重要な役割を任されたことに気づいた。
ボクは人間の話していることが全部分かる。
初めはほかの仲間もそうだと思ってたんだけど違うんだ。アヒルンゴはとても頭が良い動物だけど、普通はボクほど完璧に言葉を理解できないし、女神さまのことも知らない。
もしかしたらこの任務のためにボクは、女神さまに特別な力を授けられたのかもしれない。そう思って、張り切ってこの任務に臨んだよ。
そしてあの城下町の宿に着いたとき、ボクは気づいたんだ。「ここはボクの家だ」って。
宿の外観やレストランの入り口のようす、周囲に並ぶ店や行き交う人々の喧騒。何もかもが懐かしく感じられた。
そして、ボクのお父さんとお母さんがいた。
ふたりとも歳を取ったし、お母さんは髪を高く結い上げていてボクの記憶とは少し違ったけど、はっきり分かった。ボクのクセ毛はお父さんゆずりなんだってことにも気づいた。懐かしくて嬉しくて、ボクはエサをあげに来たお母さんに抱きついたよ。
だけど、いくら訴えてもお母さんはボクが息子だって気づいてくれなかったんだ。
きっとボクがアヒルンゴだからだ。ふたりは人間だし、その息子のボクも人間のはずだ。なのにどうしてボクはアヒルンゴなんだろう?
どうしてこうなったのか何度も思い出そうとしたけど、頭にモヤがかかったみたいになって思い出すことができない。
だからボクは考えた。この任務を立派に果たして、女神さまに人間にしてもらえるようにお願いしよう。そして家に帰ってお父さんとお母さんと暮らそう。
「必ず帰ってくるから、もう少し待っていてね」
ボクは両親に何度もそう言って、あの宿を発った。
北の神殿まではほんの数日の距離だし、ボクは張り切っていたんだよ。なのに今朝、思いもよらなかった事が起きたんだ。ルリさんがいなくなってしまって、沙世さんはとても不安そうにしている。
ボクは決心した。
必ず沙世さんを神殿に送り届けて、家に帰してあげよう。そしてボクも家に帰るんだ。
人間の息子として。
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