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解説
【設定・資料集】(本編未読者閲覧厳禁)
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◆クララ・アメストリス・ハシュヤーラ
主人公 。
アリアが作り出したもう一人の自分であり、その人格は分裂後の生活で形成された為、ある意味で此方の方が偽物であったと言える。
物語の開始時点で中身は6歳児なので、16歳にしては幼いのは当然だった。
また、背が低いのは玩具修理者を召喚した姿で作られてしまった為、成長していなかったのが原因。
聖女として無能であるという境遇ゆえに、自分自身を無価値だと思い込み、自分の生きる意味を無意識に欲していた。
復讐の為に同行者達を最初は駒としか考えていなかったが、旅をするうちに感情が変化していった。
自分の正体を明かされ復讐する意味を見失うが、獣に彼女が欲していた言葉を告げられ、その時、彼に対して恋心を抱き、また自分自身のしてしまったことに決着をつける為行動を始める。
その後、彼が自分に妹の幻影を見ているが故に助けているのだと気が付き、一人の女性として見てもらう為に非常に迂遠な計画を立てた。
彼女の恋心は終盤で獣に想いを告げ、それを理解された時点で目的を達成していた。残念ながらそれ以上のことを考えられなかったが故に、その後の自己犠牲についてはまるで問題視していなかった。
本編終了後は、女神との融合と蘇生によって、20歳前後の女性の姿になったが、それ以降変化していない。
物語が始まる300年前から、本編終了までの間、女神に捧げられた全ての生贄の分、癒しの力を使い切るまで死ぬ事が出来ない為、獣と果てしなく長い間生き続ける事になる。
◇アリア・ダリア・ワルダガウナ
玩具修理者によって作り変えられた祖母とクララの残骸。
出来上がったのはクララとアリアの2名だったが発見された当時、アリアは殆ど人間の形をしていなかった故に、黒い森に捨てられ、その後かろうじてまともな人間の姿を手に入れ、アリアは自分が生き返らせたはずの"聖女"に会いにいく。
(この時、謁見しようとしたアリアのことをクララは見ているがそれが誰なのかは分かっていない)
しかし謁見は叶わず最後の瞬間に見たのは、聖女候補となった"誰か"だった。
自分が本来いるべき場所をとられている事に激怒した彼女は、自分を「アリア」と名付け、自分自身の名を愛する者にけして呼ばせないという《制約》を掛けたことを境に、幾つもの《制約》で自己を強化するようになった。
彼女の制約は多岐に渡り、
《愛する者から名前を呼ばれてはならない》
《決闘を申し込まれた場合は断ってはならない》
《聞かれたことに対して嘘をつけない》
《人の屍しか口にすることができない》
《武器を握ってはならない》
など、様々だが日常生活に関してすら制約が存在していた為、決まった行動以外をとると制約が破れるという不安定な状態だった。
本人はあくまで正気で、尚且つただの小娘でしかなく、想定外の事態になれば心を乱し、愛した者が死ねば涙を流すような、弱いただの人間でしか無い。
力で全て解決出来ていたが故に、彼女に意見できる者もなく、ひたすらに増長を重ねていた。
故に、女神さえ殺せば何もかも思い通りに出来るという子供じみた思想を拭うことが出来なかった。
結局、彼女は留守番中に割ってしまった壺を何とか誤魔化そうとしている子供と変わらなかった。
クララとの決闘に敗れ、精神世界の泥の中に沈んだ……のだが。
◆獣
蒼銀の獣。守護者。かつて、王族であったが捨てられ兄妹で漂流していた。成長した彼は身分と国を取り戻す。
しかし兄妹で王国の土地に際して仲違いし、軍が分離、妹が自軍の将に殺されてしまう。
その後。王として君臨していたが妹の配下だった元老院の男によって暗殺に見せかけ、投獄される。
クララにかつての妹の重ね、贖罪として殺されるつもりだった。しかし、クララによって旅の同行を命じられた為に死の代わりに同行する事で贖罪をしようとする。
従者、保護者として振る舞うが徐々にクララに愛情を持つようになる。
権能の行使や巨狼に変化すると代償に徐々に視力を失っていくが、狼の変異のお陰でそれほど影響は無かった。酒宴の街でメモの内容を見ていなかったのではなく、見えなかった。
本編の終盤では殆ど見えていない。
本編終了後は鎧で身を隠しつつ、クララと旅を続けている。彼の変異がどのようになったのかは、読者の想像に託す。
◆アトラ(アドゥラ)
元人間。毛玉の孫娘。かつて毛玉が王であった頃、彼女の言葉を信用する者が居なかった為に反逆を防ぐ事が出来ず、毛玉と共に《混沌の奈落》へ逃げ延びた。
その後、獣の王と取引して命を繋ぎ、その際に祖父に望まぬ命を与えてしまったことを知った彼女は、いつの日か獣の王を出し抜いて地上へ戻り、そして祖父の命をきちんと終わらせることを画策していた。
その折にアリアが現れ、脱出の為に権能などについて教えて協力をした上、クララを誘導する役となる。
この時点から祖父を飲み込んでいる獣の王を殺す為に、女神を使う事を考えていた。
ある意味ずっと糸を引いていた黒幕に近い存在。
助言者にしてアリアのスパイ。本人は隙さえあればクララが堕落するように仕向ける──予定だったが、結局クララに絆され、自身が欲していた言葉、信用を与えられた彼女はアリアではなくクララの味方となる。
その後自分の望み通りに物事を運ばせ、祖父を解放し、クララを助けた。
クララが戦利品に価値を付けなかったので、殆ど彼女の手に渡ることはなかった。
もし、クララが彼女を真の意味で同盟者に出来ていなければ、物語は不幸な結末を迎える事になっていただろう。
本編終了後は帝国で学園を作り、歴史を教えている。尚、祖父のようにこの世を去るつもりは全くない。
◆毛玉(ツァト)
遥か昔に、アルバ帝国の元のなる国家を建てた王だったが、反逆され孫娘と共に《混沌の奈落》へ逃げ延びるも、孫娘が交わした獣の王との取引によって望まぬ生を得てしまう。
長い時間によって意識が混濁し、孫娘のことを忘れてしまったが、保護すべき相手だという認識だけは残っていた。
自分自身の正体を忘れており、特に女神の復活に寄与する点がなかった為に、アリアには目をつけられる事がなかった。
クララとの制約については、本編では描写が省略されているが、それ以前の会話から"しょくざい"という言葉の意味を取り違えたクララによって、美味しいものを食べさせるのはどうか、という提案をする会話があった。(あまりにも下らないので本編では描写出来なかった)
本体の獣の王は元ネタとも言えるツァトグゥアそのものではあるが、弱体化しているので、この作品においては、同じく完全でない女神と同等か、やや上回る程度の力を持つ。
もしアトラが始末していなければ好き勝手に動き回っていたので、女神を止めたとしても、世界は終わっていた。
もし、彼にやる気があったら、あっさり世界は終わっていただろう。まあ、ないから怠惰なのだが。
◆レオンハルト
クララの元婚約者。神聖アルバ帝国最後の皇帝。
魔術の才能も、剣の才能も、殆どなく、また王の才能もそれほどではなかった。しかし、選挙王政は実質滅んでいたが故に、世襲的に王になる事が決められていた。
見た目だけなら美青年だったが、本人はそれを全く誇りにはしていない。
クララが分裂する前も後も、自分と似た境遇の彼女のことを愛していた。つまり、アリアもクララも愛していた訳だが、アリアはその事には気が付かなかったが故に、自身の決定的な敗北の要因を作ってしまう。
アリアが最初にクララを追放する際、投獄するだけで済むように交渉し、後々解放するつもりだったが、彼の予想を上回る手をアリアは打ち、結果としてクララに壮絶な苦しみを与え、憎まれることになる。
自らの行為を悔やみ、彼女の生存を前提とする制約を自らに課して待ち続けるも、皮肉な事にそのクララの手によって暗殺されてしまう。
しかし、アリアの言葉から学んだ彼は死霊魔術を僅かながら会得しており、完全に死ぬその間際に僅かな時間、自身を操ってアリアの制約を破壊し、意趣返しを達成する。
彼の権能は炎の神性と融合して手にした物だったが、これは彼に魔術の才能が全くなく、またアリアの知る召喚呪文が不完全な為に、融合する他なかったのが原因だった。
他方ではレオンハルトを長生きさせる為にアリアが行ったことでもあったのだが、それが仇となって毒殺される事になった。
彼は自らの、獅子の心臓という名前には到底似つかわしくない臆病者ではあったが、自らの罪に立ち向かう勇者でもあった。
ただ、その事を知る者はクララ以外誰もいない。その後の歴史では暗君として扱われる。
◆ロドグネ・ダリア・ワルダガウナ
主人公の祖母。先代聖女
《今後血族に生まれた女児を殺し捧げる》
という《契約》の代償に奇跡のような回復魔術を望まず手に入れた。
当初は与えられた役割に翻弄される小娘であったが、長い時間をかけて老獪な聖女へと変貌し、結果的に数百年越しの復讐を果たし、神聖アルバ帝国を滅ぼした者と言える。
玩具修理者によって、分割されたクララ達と共に生き続けていた。
何度かクララの精神の表層に別人格として現れかけていたが、結局最後まで明確に現れることはなかった。
アリアやクララの壮絶な復讐心の大元は彼女の物であり、またアリアが人心の誘導を容易に行えたのも彼女の知識の名残である。
◆アルサメナ・ウタヌス・ハシュヤーラ
クララの弟。実は彼もクララと同じように人間では無いが、それを自覚する事も、異常性を発揮する事もなく、アリアの手によって殺された。
◆ダリウス・ウタヌス・ハシュヤーラ
クララの兄。家族思いだったが、それ故にクララとアリアの肉の塊に分裂した姿を発見した際、激昂してアリアを黒い森に捨てた。
その所為でアリアには一番最初に殺された上に、クララを決闘で痛めつける為の道具として死後も利用される。
◆玩具修理者
(自分の)子どもの為に、あらゆるものを治す存在。創造神を名乗る何か。役目を終えるとすぐ帰るが、呼んだまま放置すると後ろをついてまわる。一時期アリアの後ろにいたのはそれが理由。本人は娘に無視されてオロオロしながらお願いを待っていた状態。
世界の全ての情報を記した"書板"というものの化身であるが、彼とは別に神が存在する。あくまで彼は書かれたものに過ぎない。
元ネタは言うまでもなく、玩具修理者。
この話のモチーフとなった作品でもある。
◆アルラウネ
黒い森で力を取り戻すべく子供を殺していた《獣の王》それがその地の伝承と結びつき、アルラウネと呼ばれていただけで、本来は別の名前を持つ。
玩具修理者に仕える神性。
◆酔っ払いの詩人
酒宴の街にいた唯の酔っ払い……ではなく、愉悦と吟遊詩人たちの神であり、この世界では獣の王と呼ばれる者の一つ。酒宴の街に人が集まり宴を繰り返していたのは彼の権能。
【用語】
◼︎聖女
神聖アルバ帝国が"作り出した"象徴。現実で言う本来の聖人とは意味合いが異なる。
◼︎化粧料(けしょうりょう)
帝国が子爵以上の身分を持つ婦女子に与える財産或いは財産権。
◼︎神判(しんぱん)
神の意志を持って罪の有無を確かめる手法。手足を縛って水に沈める水審などがある。
◼︎贖宥状(しょくゆうじょう)
金銭と引き換えに得られる免罪の証。免罪符とも。史実では教皇権を巡った争いの際、資金の調達源として乱雑に発行された。
◼︎教会
帝国の周辺国に住む殆どの人々が信仰している主上教を司る団体。どの宗教に当たるのかは明言を避けさせていただく。
◼︎神聖アルバ帝国
神聖でもなければ、アルバでもなく、帝国ですらないと称される国家。広大な領土、植民地を持ち、複数の王国を擁する。聖女の力を利用した不死の軍の力により、国内の王国や外敵を抑えている。モデルは神聖ローマ帝国だが、内情は真逆の中央集権国家。
◾︎獣の国
モデルは13世期フランス王国、だがあまり風景や風習の描写をしなかったので特筆することはない。
作者として言える事は国王が雄鶏頭の獣だったのは雄鶏がフランスの象徴であるから、というくらいか。その理由は各個人で調べられたし。
◼︎聖伐軍
アリアの組織した軍隊。作中でも語ったが、この時代のヨーロッパにおける軍隊というものは貴族の保有する私兵、その個々の集団でしかなく、現代の人間が想像するような職業軍人で構成された軍隊では無い。無論この軍も同様である。
◾︎獣軍
毛玉の本体とアトラが知識を総動員して作った軍隊。こちらは舞台である13世期より遥か後の15世期に現れる筈だった、組織的な軍隊である。
彼らが主に使う武器である"笛"は15世紀、フス戦争当たりからヨーロッパで使われるようになるハンドカノンであり、この物語の年代では出現し得なかったものだが、別の世界の知識を持つ神性である毛玉の本体とアトラによって、"今後の歴史をそれほど変えずに、かつ劇的に勝利をもたらし得る武器"として作り出された。
◼︎異端審問
史実では正統な信仰に反する教えを持つ疑いを受けた者を裁判する為に設けられた制度であるが、この作品では獣を一方的に罰する為の措置に名前を付けただけのもの。
◼︎獣
人が女神の力によって変異した者。変異によって殆どは重篤な障害が生じて死に至るが、適応できた場合人間を遥かに凌駕する身体能力を得る。
これは女神が"善意で"新しい世界に適応できるように"作り直し"ているため。
見た目が"整っている"獣は殆どいない。整っていればいる程、より多くの変異を抱えている為にそれ相応の能力を持つ。
本編終了後では、死に至ることが減った為にそれ以前よりかは増えることになった。
◼︎変異
女神の力の影響下にあるものが発症する体の変化。どのような変化が起こるのかは、本人の資質や能力、願望などの影響を受けるので個々人で異なる。
◾︎獣の王
獣とは似て非なる存在。人々がかつて神と呼び崇拝した異形。異星から飛来した生物や別の次元から現れた、この世ならざる者の存在を総称して呼ぶ。
人間の信仰心によって存在が変容する。
それ故に、この作品においては人々の主上教への信仰によって存在を歪められ、獣、そして罪の象徴とされ、能力を部分的にしか行使できなくなっている。
クトゥルフ神話に登場する神性や旧支配者が人々にとって都合良く、悪として定義され、その通りの姿に変えられたもの。
【地理】
◾︎西の修道院
モデルはマウルブロン修道院だが、黒い森に飲み込まれている。
本物のマウルブロン修道院はドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州にある。マウルブロンの町外れにあり、町とは城壁で隔絶されている。かつて修道士はその中で自給自足の生活をしていた。
作品でも同じように質素な生活をしていたが、アリアによって滅ぼされる。
建てられたロドグネの墓はアリアが作ったもので、クララが訪ねた際に風に飛ばされていった花は彼女がいくつも供えた花の最後の一輪。
◾︎黒い森
読んで字の如く。シュヴァルツヴァルトそのもの。密集して生えるトウヒの木によって、黒く見える為にそう呼ばれた。
フランスとの国境に広がっている為、その地域は政治的影響が強く、他の諸邦とは異なった慣習、伝統を持っていた。
作中でもその背景は継承され、西の修道院が位置する町は隣国である獣の国の影響を受けている。
修道士達による伐採や開墾によって開かれた土地。アリアが西の修道院周辺を滅ぼしてから、木々が再生したのはただの時間の流れのみならず、隠蔽工作の一環。そして他人を自分が自分であった場所から遠ざける為。
◾︎帝都
位置的には現在のテューリンゲン州アイゼナハ。同都市のヴァルトブルク城はアリアとレオンハルトがいた城のモデルである。
◾︎酒宴の街(ユルツブルグ)
何かに惹かれて人々が自然と集まり、永遠に宴を繰り返す街。
その正体は変異した者達が帝都で処刑される前に最後の晩餐をする為の街。
アリアは人々が集まり勝手に宴を繰り返していたのを利用していたに過ぎず、それが何故起きているのかまでは理解していなかった。
モチーフはヴュルツブルク。名前も殆どそのまま。ドイツがモチーフにも関わらず、この街で登場した酒がビールではなく葡萄酒なのは、この地の特産品である為。川を挟んで両岸に街が広がっているのも作中と同じ。
他にも名所があった街ではあるが、作中には登場させる余白が足りなかった。
◾︎銀山の街
モチーフはフライブルク・イム・ブライスガウ。銀山と大聖堂が登場する。史実ではツェーリンゲン家の公爵が納めていたが跡取りなく途絶し、甥である伯爵が統治を引き継ぎ、フライブルク伯を自称する。
作中ではこの歴史に則り、途絶した公爵家の隙をついて甥をでっち上げ、クララの祖母のロドグネがこの街の利権を裏から支配していた。
◾︎《混沌の奈落》
作中では黒い森の地下に広がる光の指さない地下世界の概念的存在。クトゥルフ神話におけるン・カイに相当する……が、これ自体が獣の王でもある。下の階層へ降りれば登ることが出来ず、出るには下へ進み続け、混沌の奈落に出る事を許されなければならない。
その為出る事は困難で、看守もまた囚人である。
作中で獣の王が投獄されたていた理由は、主上教による他宗教への弾圧、支配の概念が具現化した結果。
アリアはクララの元へ来るたびに、繰り返し最下層まで降りていたが、灰色の泥に塗れた竜を毎回炎の権能で(他人の力で)焼いていた為に、クララのように大いなる者に出会う事が無かった。
主人公 。
アリアが作り出したもう一人の自分であり、その人格は分裂後の生活で形成された為、ある意味で此方の方が偽物であったと言える。
物語の開始時点で中身は6歳児なので、16歳にしては幼いのは当然だった。
また、背が低いのは玩具修理者を召喚した姿で作られてしまった為、成長していなかったのが原因。
聖女として無能であるという境遇ゆえに、自分自身を無価値だと思い込み、自分の生きる意味を無意識に欲していた。
復讐の為に同行者達を最初は駒としか考えていなかったが、旅をするうちに感情が変化していった。
自分の正体を明かされ復讐する意味を見失うが、獣に彼女が欲していた言葉を告げられ、その時、彼に対して恋心を抱き、また自分自身のしてしまったことに決着をつける為行動を始める。
その後、彼が自分に妹の幻影を見ているが故に助けているのだと気が付き、一人の女性として見てもらう為に非常に迂遠な計画を立てた。
彼女の恋心は終盤で獣に想いを告げ、それを理解された時点で目的を達成していた。残念ながらそれ以上のことを考えられなかったが故に、その後の自己犠牲についてはまるで問題視していなかった。
本編終了後は、女神との融合と蘇生によって、20歳前後の女性の姿になったが、それ以降変化していない。
物語が始まる300年前から、本編終了までの間、女神に捧げられた全ての生贄の分、癒しの力を使い切るまで死ぬ事が出来ない為、獣と果てしなく長い間生き続ける事になる。
◇アリア・ダリア・ワルダガウナ
玩具修理者によって作り変えられた祖母とクララの残骸。
出来上がったのはクララとアリアの2名だったが発見された当時、アリアは殆ど人間の形をしていなかった故に、黒い森に捨てられ、その後かろうじてまともな人間の姿を手に入れ、アリアは自分が生き返らせたはずの"聖女"に会いにいく。
(この時、謁見しようとしたアリアのことをクララは見ているがそれが誰なのかは分かっていない)
しかし謁見は叶わず最後の瞬間に見たのは、聖女候補となった"誰か"だった。
自分が本来いるべき場所をとられている事に激怒した彼女は、自分を「アリア」と名付け、自分自身の名を愛する者にけして呼ばせないという《制約》を掛けたことを境に、幾つもの《制約》で自己を強化するようになった。
彼女の制約は多岐に渡り、
《愛する者から名前を呼ばれてはならない》
《決闘を申し込まれた場合は断ってはならない》
《聞かれたことに対して嘘をつけない》
《人の屍しか口にすることができない》
《武器を握ってはならない》
など、様々だが日常生活に関してすら制約が存在していた為、決まった行動以外をとると制約が破れるという不安定な状態だった。
本人はあくまで正気で、尚且つただの小娘でしかなく、想定外の事態になれば心を乱し、愛した者が死ねば涙を流すような、弱いただの人間でしか無い。
力で全て解決出来ていたが故に、彼女に意見できる者もなく、ひたすらに増長を重ねていた。
故に、女神さえ殺せば何もかも思い通りに出来るという子供じみた思想を拭うことが出来なかった。
結局、彼女は留守番中に割ってしまった壺を何とか誤魔化そうとしている子供と変わらなかった。
クララとの決闘に敗れ、精神世界の泥の中に沈んだ……のだが。
◆獣
蒼銀の獣。守護者。かつて、王族であったが捨てられ兄妹で漂流していた。成長した彼は身分と国を取り戻す。
しかし兄妹で王国の土地に際して仲違いし、軍が分離、妹が自軍の将に殺されてしまう。
その後。王として君臨していたが妹の配下だった元老院の男によって暗殺に見せかけ、投獄される。
クララにかつての妹の重ね、贖罪として殺されるつもりだった。しかし、クララによって旅の同行を命じられた為に死の代わりに同行する事で贖罪をしようとする。
従者、保護者として振る舞うが徐々にクララに愛情を持つようになる。
権能の行使や巨狼に変化すると代償に徐々に視力を失っていくが、狼の変異のお陰でそれほど影響は無かった。酒宴の街でメモの内容を見ていなかったのではなく、見えなかった。
本編の終盤では殆ど見えていない。
本編終了後は鎧で身を隠しつつ、クララと旅を続けている。彼の変異がどのようになったのかは、読者の想像に託す。
◆アトラ(アドゥラ)
元人間。毛玉の孫娘。かつて毛玉が王であった頃、彼女の言葉を信用する者が居なかった為に反逆を防ぐ事が出来ず、毛玉と共に《混沌の奈落》へ逃げ延びた。
その後、獣の王と取引して命を繋ぎ、その際に祖父に望まぬ命を与えてしまったことを知った彼女は、いつの日か獣の王を出し抜いて地上へ戻り、そして祖父の命をきちんと終わらせることを画策していた。
その折にアリアが現れ、脱出の為に権能などについて教えて協力をした上、クララを誘導する役となる。
この時点から祖父を飲み込んでいる獣の王を殺す為に、女神を使う事を考えていた。
ある意味ずっと糸を引いていた黒幕に近い存在。
助言者にしてアリアのスパイ。本人は隙さえあればクララが堕落するように仕向ける──予定だったが、結局クララに絆され、自身が欲していた言葉、信用を与えられた彼女はアリアではなくクララの味方となる。
その後自分の望み通りに物事を運ばせ、祖父を解放し、クララを助けた。
クララが戦利品に価値を付けなかったので、殆ど彼女の手に渡ることはなかった。
もし、クララが彼女を真の意味で同盟者に出来ていなければ、物語は不幸な結末を迎える事になっていただろう。
本編終了後は帝国で学園を作り、歴史を教えている。尚、祖父のようにこの世を去るつもりは全くない。
◆毛玉(ツァト)
遥か昔に、アルバ帝国の元のなる国家を建てた王だったが、反逆され孫娘と共に《混沌の奈落》へ逃げ延びるも、孫娘が交わした獣の王との取引によって望まぬ生を得てしまう。
長い時間によって意識が混濁し、孫娘のことを忘れてしまったが、保護すべき相手だという認識だけは残っていた。
自分自身の正体を忘れており、特に女神の復活に寄与する点がなかった為に、アリアには目をつけられる事がなかった。
クララとの制約については、本編では描写が省略されているが、それ以前の会話から"しょくざい"という言葉の意味を取り違えたクララによって、美味しいものを食べさせるのはどうか、という提案をする会話があった。(あまりにも下らないので本編では描写出来なかった)
本体の獣の王は元ネタとも言えるツァトグゥアそのものではあるが、弱体化しているので、この作品においては、同じく完全でない女神と同等か、やや上回る程度の力を持つ。
もしアトラが始末していなければ好き勝手に動き回っていたので、女神を止めたとしても、世界は終わっていた。
もし、彼にやる気があったら、あっさり世界は終わっていただろう。まあ、ないから怠惰なのだが。
◆レオンハルト
クララの元婚約者。神聖アルバ帝国最後の皇帝。
魔術の才能も、剣の才能も、殆どなく、また王の才能もそれほどではなかった。しかし、選挙王政は実質滅んでいたが故に、世襲的に王になる事が決められていた。
見た目だけなら美青年だったが、本人はそれを全く誇りにはしていない。
クララが分裂する前も後も、自分と似た境遇の彼女のことを愛していた。つまり、アリアもクララも愛していた訳だが、アリアはその事には気が付かなかったが故に、自身の決定的な敗北の要因を作ってしまう。
アリアが最初にクララを追放する際、投獄するだけで済むように交渉し、後々解放するつもりだったが、彼の予想を上回る手をアリアは打ち、結果としてクララに壮絶な苦しみを与え、憎まれることになる。
自らの行為を悔やみ、彼女の生存を前提とする制約を自らに課して待ち続けるも、皮肉な事にそのクララの手によって暗殺されてしまう。
しかし、アリアの言葉から学んだ彼は死霊魔術を僅かながら会得しており、完全に死ぬその間際に僅かな時間、自身を操ってアリアの制約を破壊し、意趣返しを達成する。
彼の権能は炎の神性と融合して手にした物だったが、これは彼に魔術の才能が全くなく、またアリアの知る召喚呪文が不完全な為に、融合する他なかったのが原因だった。
他方ではレオンハルトを長生きさせる為にアリアが行ったことでもあったのだが、それが仇となって毒殺される事になった。
彼は自らの、獅子の心臓という名前には到底似つかわしくない臆病者ではあったが、自らの罪に立ち向かう勇者でもあった。
ただ、その事を知る者はクララ以外誰もいない。その後の歴史では暗君として扱われる。
◆ロドグネ・ダリア・ワルダガウナ
主人公の祖母。先代聖女
《今後血族に生まれた女児を殺し捧げる》
という《契約》の代償に奇跡のような回復魔術を望まず手に入れた。
当初は与えられた役割に翻弄される小娘であったが、長い時間をかけて老獪な聖女へと変貌し、結果的に数百年越しの復讐を果たし、神聖アルバ帝国を滅ぼした者と言える。
玩具修理者によって、分割されたクララ達と共に生き続けていた。
何度かクララの精神の表層に別人格として現れかけていたが、結局最後まで明確に現れることはなかった。
アリアやクララの壮絶な復讐心の大元は彼女の物であり、またアリアが人心の誘導を容易に行えたのも彼女の知識の名残である。
◆アルサメナ・ウタヌス・ハシュヤーラ
クララの弟。実は彼もクララと同じように人間では無いが、それを自覚する事も、異常性を発揮する事もなく、アリアの手によって殺された。
◆ダリウス・ウタヌス・ハシュヤーラ
クララの兄。家族思いだったが、それ故にクララとアリアの肉の塊に分裂した姿を発見した際、激昂してアリアを黒い森に捨てた。
その所為でアリアには一番最初に殺された上に、クララを決闘で痛めつける為の道具として死後も利用される。
◆玩具修理者
(自分の)子どもの為に、あらゆるものを治す存在。創造神を名乗る何か。役目を終えるとすぐ帰るが、呼んだまま放置すると後ろをついてまわる。一時期アリアの後ろにいたのはそれが理由。本人は娘に無視されてオロオロしながらお願いを待っていた状態。
世界の全ての情報を記した"書板"というものの化身であるが、彼とは別に神が存在する。あくまで彼は書かれたものに過ぎない。
元ネタは言うまでもなく、玩具修理者。
この話のモチーフとなった作品でもある。
◆アルラウネ
黒い森で力を取り戻すべく子供を殺していた《獣の王》それがその地の伝承と結びつき、アルラウネと呼ばれていただけで、本来は別の名前を持つ。
玩具修理者に仕える神性。
◆酔っ払いの詩人
酒宴の街にいた唯の酔っ払い……ではなく、愉悦と吟遊詩人たちの神であり、この世界では獣の王と呼ばれる者の一つ。酒宴の街に人が集まり宴を繰り返していたのは彼の権能。
【用語】
◼︎聖女
神聖アルバ帝国が"作り出した"象徴。現実で言う本来の聖人とは意味合いが異なる。
◼︎化粧料(けしょうりょう)
帝国が子爵以上の身分を持つ婦女子に与える財産或いは財産権。
◼︎神判(しんぱん)
神の意志を持って罪の有無を確かめる手法。手足を縛って水に沈める水審などがある。
◼︎贖宥状(しょくゆうじょう)
金銭と引き換えに得られる免罪の証。免罪符とも。史実では教皇権を巡った争いの際、資金の調達源として乱雑に発行された。
◼︎教会
帝国の周辺国に住む殆どの人々が信仰している主上教を司る団体。どの宗教に当たるのかは明言を避けさせていただく。
◼︎神聖アルバ帝国
神聖でもなければ、アルバでもなく、帝国ですらないと称される国家。広大な領土、植民地を持ち、複数の王国を擁する。聖女の力を利用した不死の軍の力により、国内の王国や外敵を抑えている。モデルは神聖ローマ帝国だが、内情は真逆の中央集権国家。
◾︎獣の国
モデルは13世期フランス王国、だがあまり風景や風習の描写をしなかったので特筆することはない。
作者として言える事は国王が雄鶏頭の獣だったのは雄鶏がフランスの象徴であるから、というくらいか。その理由は各個人で調べられたし。
◼︎聖伐軍
アリアの組織した軍隊。作中でも語ったが、この時代のヨーロッパにおける軍隊というものは貴族の保有する私兵、その個々の集団でしかなく、現代の人間が想像するような職業軍人で構成された軍隊では無い。無論この軍も同様である。
◾︎獣軍
毛玉の本体とアトラが知識を総動員して作った軍隊。こちらは舞台である13世期より遥か後の15世期に現れる筈だった、組織的な軍隊である。
彼らが主に使う武器である"笛"は15世紀、フス戦争当たりからヨーロッパで使われるようになるハンドカノンであり、この物語の年代では出現し得なかったものだが、別の世界の知識を持つ神性である毛玉の本体とアトラによって、"今後の歴史をそれほど変えずに、かつ劇的に勝利をもたらし得る武器"として作り出された。
◼︎異端審問
史実では正統な信仰に反する教えを持つ疑いを受けた者を裁判する為に設けられた制度であるが、この作品では獣を一方的に罰する為の措置に名前を付けただけのもの。
◼︎獣
人が女神の力によって変異した者。変異によって殆どは重篤な障害が生じて死に至るが、適応できた場合人間を遥かに凌駕する身体能力を得る。
これは女神が"善意で"新しい世界に適応できるように"作り直し"ているため。
見た目が"整っている"獣は殆どいない。整っていればいる程、より多くの変異を抱えている為にそれ相応の能力を持つ。
本編終了後では、死に至ることが減った為にそれ以前よりかは増えることになった。
◼︎変異
女神の力の影響下にあるものが発症する体の変化。どのような変化が起こるのかは、本人の資質や能力、願望などの影響を受けるので個々人で異なる。
◾︎獣の王
獣とは似て非なる存在。人々がかつて神と呼び崇拝した異形。異星から飛来した生物や別の次元から現れた、この世ならざる者の存在を総称して呼ぶ。
人間の信仰心によって存在が変容する。
それ故に、この作品においては人々の主上教への信仰によって存在を歪められ、獣、そして罪の象徴とされ、能力を部分的にしか行使できなくなっている。
クトゥルフ神話に登場する神性や旧支配者が人々にとって都合良く、悪として定義され、その通りの姿に変えられたもの。
【地理】
◾︎西の修道院
モデルはマウルブロン修道院だが、黒い森に飲み込まれている。
本物のマウルブロン修道院はドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州にある。マウルブロンの町外れにあり、町とは城壁で隔絶されている。かつて修道士はその中で自給自足の生活をしていた。
作品でも同じように質素な生活をしていたが、アリアによって滅ぼされる。
建てられたロドグネの墓はアリアが作ったもので、クララが訪ねた際に風に飛ばされていった花は彼女がいくつも供えた花の最後の一輪。
◾︎黒い森
読んで字の如く。シュヴァルツヴァルトそのもの。密集して生えるトウヒの木によって、黒く見える為にそう呼ばれた。
フランスとの国境に広がっている為、その地域は政治的影響が強く、他の諸邦とは異なった慣習、伝統を持っていた。
作中でもその背景は継承され、西の修道院が位置する町は隣国である獣の国の影響を受けている。
修道士達による伐採や開墾によって開かれた土地。アリアが西の修道院周辺を滅ぼしてから、木々が再生したのはただの時間の流れのみならず、隠蔽工作の一環。そして他人を自分が自分であった場所から遠ざける為。
◾︎帝都
位置的には現在のテューリンゲン州アイゼナハ。同都市のヴァルトブルク城はアリアとレオンハルトがいた城のモデルである。
◾︎酒宴の街(ユルツブルグ)
何かに惹かれて人々が自然と集まり、永遠に宴を繰り返す街。
その正体は変異した者達が帝都で処刑される前に最後の晩餐をする為の街。
アリアは人々が集まり勝手に宴を繰り返していたのを利用していたに過ぎず、それが何故起きているのかまでは理解していなかった。
モチーフはヴュルツブルク。名前も殆どそのまま。ドイツがモチーフにも関わらず、この街で登場した酒がビールではなく葡萄酒なのは、この地の特産品である為。川を挟んで両岸に街が広がっているのも作中と同じ。
他にも名所があった街ではあるが、作中には登場させる余白が足りなかった。
◾︎銀山の街
モチーフはフライブルク・イム・ブライスガウ。銀山と大聖堂が登場する。史実ではツェーリンゲン家の公爵が納めていたが跡取りなく途絶し、甥である伯爵が統治を引き継ぎ、フライブルク伯を自称する。
作中ではこの歴史に則り、途絶した公爵家の隙をついて甥をでっち上げ、クララの祖母のロドグネがこの街の利権を裏から支配していた。
◾︎《混沌の奈落》
作中では黒い森の地下に広がる光の指さない地下世界の概念的存在。クトゥルフ神話におけるン・カイに相当する……が、これ自体が獣の王でもある。下の階層へ降りれば登ることが出来ず、出るには下へ進み続け、混沌の奈落に出る事を許されなければならない。
その為出る事は困難で、看守もまた囚人である。
作中で獣の王が投獄されたていた理由は、主上教による他宗教への弾圧、支配の概念が具現化した結果。
アリアはクララの元へ来るたびに、繰り返し最下層まで降りていたが、灰色の泥に塗れた竜を毎回炎の権能で(他人の力で)焼いていた為に、クララのように大いなる者に出会う事が無かった。
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思わず一気読みしてしまいました。よくある断罪系なのか思いきや、シリアスな展開で考えさせられるストーリーでした。クトゥルフ神話には明るくないのですが十分楽しめました!欲を言えば、クララの祖母の現役時代の話が見たかったです……ありがとうございました!
感想ありがとうございます!
長いのに最後まで読んでいただいて、楽しんで貰えて嬉しいです!
他にも書いておいた方がいい掘り下げ内容はあったんだと思いますが、これ以上書くと話が長くなり過ぎると思って切ってしまいました、今後の作品に活かしたいと思います、ありがとうございました!