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私は食後のお茶を飲みながら、微笑んだ。
「それで?
私が前世の記憶を持っていると、信じていただけましたでしょうか?」
今日のヘンリックの訪問は、それを確かめるのが目的だった。
正直なところ、『新しいジャンルの小説』と『目新しくて美味しい料理』だけで、そんな突拍子もないことを信じてもらえるとは思っていない。
ここで大切なのは、本当に前世の記憶があるかということではなく、私がどういう人物であるかということを理解してもらうことなのだ。
少なくとも、それはある程度成功しているとはずだ。
「信じたい、と思っていますよ。
かなり説得力がありましたからね。
そうでなくても、きみがとても優秀であることはよくわかりました。
契約結婚する相手として申し分ないということもね」
私の意図はしっかりと伝わっているようで、ヘンリックも微笑みを返してくれた。
「次にお会いする時は、契約結婚をするにあたってのお互いの条件をすり合わせる、ということでいかがでしょう」
「ええ、そういたしましょう!」
契約結婚に前向きになってくれているヘンリックに、私はやや前のめり気味になりながら応えた。
彼が私の本を読んでみたいというので、特に有名なものを三冊ほど進呈することにした。
「今日はお招きいただきありがとうございました。
驚くことばかりでしたが、久しぶりに楽しい時間を過ごすことができました」
「こちらこそ、楽しかったですわ。
またご招待いたしますわね」
「是非お願いします」
別れ際に、ヘンリックは優雅な仕草で私の手の甲にキスをした。
そして、チラリと私の背後に控えるエルヴィンとマリアンネに目を向けた。
「クラリッサ嬢は、いい使用人を持っていますね。
二人とも、私をずっと警戒しています。
特に彼のほうは、いざとなったら私を殺すのも躊躇わないくらいの心構えでいるようです」
騎士であるヘンリックには、エルヴィンの押し殺した殺気も感じ取れるのだろう。
というか、マリアンネまでそんなに警戒していたのか。
「申し訳ありません、後で叱っておきますわ」
「いえいえ、むしろ褒めてあげてください。
主人を守ろうとするのは、使用人として当然のことです」
どうやら、エルヴィンとマリアンネも高評価を得ているようだ。
二人が褒められるのは、私も嬉しい。
「契約結婚などということ以前に、場合によってはきみを我が家で保護しようと思っていたのですが、彼が傍にいるならその必要もなさそうですね」
「まぁ、そこまで考えていてくださったのですか」
「私は騎士ですからね。
か弱い女性が害されるのを見過ごすことはできません」
柔らかく微笑むヘンリックだが、そのエメラルドの瞳には熱も情念も劣情も宿っていない。
下心も何もなく、私を助けようとしてくれていたのだ。
やっぱり、彼は純粋にいい人であるようだ。
去って行く馬車を見送りながら、ヘンリックに出会うきっかけをくれた弟に、私は生まれて初めて感謝した。
「それで? どう思った?」
私室に戻ってから、私はエルヴィンとマリアンネに尋ねた。
「思ったより素敵な方でしたわね。
お姉様の隣に立っても、あの方なら見劣りしないでしょう」
相変わらずマリアンネの私に対する贔屓目は果てしない。
「腕が立つ騎士というのは本当のようだ。
ただし、俺よりは弱い」
エルヴィンはというと、マリアンネより現実的ではあるが、その視点はどうなのかと思う。
「お兄様より強い人なんて、この国にはいないと思いますわよ」
「そんな人じゃないとダメだというなら、他の大陸にでも行くしかないわね」
私とマリアンネに、エルヴィンはそうではないと首を横に振った。
「あの男なら、誰かがお嬢を社会的に害しようとしたら守ってくれるだろう。
それだけの地位も力もある。
だが俺よりは弱いから、俺ならお嬢をあの男から物理的に守ることができる」
過保護なエルヴィンに、マリアンネも大きく頷いた。
「立場もあって、ある程度強くて、でもお兄様よりは弱い。
そういう意味でも、お姉様の契約結婚相手にはちょうどいいと思いますわ」
私は二人を交互に見た。
「じゃあ、ヘンリック様は合格ってことでいいのね?」
「及第点ですわね。
私はアリだと思いますわ」
「お嬢はしたいことをすればいい。
いざとなったら、俺がお嬢とマリーを連れて逃げればいいんだからな」
エルヴィンもこんなことを言っているが、ダメだと思うなら断固反対するはずなので、つまりはマリアンネと同じ及第点をヘンリックにつけたということだ。
この二人が反対するなら、私はヘンリックとの契約結婚を諦めるつもりだった。
それくらい、私は二人のことを信頼し、大切に思っている。
「では、契約結婚の条件を決めなくてはね。
二人とも、遠慮なく意見を出してちょうだい」
私たちはお茶を飲みながら、真剣に議論を続けた。
「それで?
私が前世の記憶を持っていると、信じていただけましたでしょうか?」
今日のヘンリックの訪問は、それを確かめるのが目的だった。
正直なところ、『新しいジャンルの小説』と『目新しくて美味しい料理』だけで、そんな突拍子もないことを信じてもらえるとは思っていない。
ここで大切なのは、本当に前世の記憶があるかということではなく、私がどういう人物であるかということを理解してもらうことなのだ。
少なくとも、それはある程度成功しているとはずだ。
「信じたい、と思っていますよ。
かなり説得力がありましたからね。
そうでなくても、きみがとても優秀であることはよくわかりました。
契約結婚する相手として申し分ないということもね」
私の意図はしっかりと伝わっているようで、ヘンリックも微笑みを返してくれた。
「次にお会いする時は、契約結婚をするにあたってのお互いの条件をすり合わせる、ということでいかがでしょう」
「ええ、そういたしましょう!」
契約結婚に前向きになってくれているヘンリックに、私はやや前のめり気味になりながら応えた。
彼が私の本を読んでみたいというので、特に有名なものを三冊ほど進呈することにした。
「今日はお招きいただきありがとうございました。
驚くことばかりでしたが、久しぶりに楽しい時間を過ごすことができました」
「こちらこそ、楽しかったですわ。
またご招待いたしますわね」
「是非お願いします」
別れ際に、ヘンリックは優雅な仕草で私の手の甲にキスをした。
そして、チラリと私の背後に控えるエルヴィンとマリアンネに目を向けた。
「クラリッサ嬢は、いい使用人を持っていますね。
二人とも、私をずっと警戒しています。
特に彼のほうは、いざとなったら私を殺すのも躊躇わないくらいの心構えでいるようです」
騎士であるヘンリックには、エルヴィンの押し殺した殺気も感じ取れるのだろう。
というか、マリアンネまでそんなに警戒していたのか。
「申し訳ありません、後で叱っておきますわ」
「いえいえ、むしろ褒めてあげてください。
主人を守ろうとするのは、使用人として当然のことです」
どうやら、エルヴィンとマリアンネも高評価を得ているようだ。
二人が褒められるのは、私も嬉しい。
「契約結婚などということ以前に、場合によってはきみを我が家で保護しようと思っていたのですが、彼が傍にいるならその必要もなさそうですね」
「まぁ、そこまで考えていてくださったのですか」
「私は騎士ですからね。
か弱い女性が害されるのを見過ごすことはできません」
柔らかく微笑むヘンリックだが、そのエメラルドの瞳には熱も情念も劣情も宿っていない。
下心も何もなく、私を助けようとしてくれていたのだ。
やっぱり、彼は純粋にいい人であるようだ。
去って行く馬車を見送りながら、ヘンリックに出会うきっかけをくれた弟に、私は生まれて初めて感謝した。
「それで? どう思った?」
私室に戻ってから、私はエルヴィンとマリアンネに尋ねた。
「思ったより素敵な方でしたわね。
お姉様の隣に立っても、あの方なら見劣りしないでしょう」
相変わらずマリアンネの私に対する贔屓目は果てしない。
「腕が立つ騎士というのは本当のようだ。
ただし、俺よりは弱い」
エルヴィンはというと、マリアンネより現実的ではあるが、その視点はどうなのかと思う。
「お兄様より強い人なんて、この国にはいないと思いますわよ」
「そんな人じゃないとダメだというなら、他の大陸にでも行くしかないわね」
私とマリアンネに、エルヴィンはそうではないと首を横に振った。
「あの男なら、誰かがお嬢を社会的に害しようとしたら守ってくれるだろう。
それだけの地位も力もある。
だが俺よりは弱いから、俺ならお嬢をあの男から物理的に守ることができる」
過保護なエルヴィンに、マリアンネも大きく頷いた。
「立場もあって、ある程度強くて、でもお兄様よりは弱い。
そういう意味でも、お姉様の契約結婚相手にはちょうどいいと思いますわ」
私は二人を交互に見た。
「じゃあ、ヘンリック様は合格ってことでいいのね?」
「及第点ですわね。
私はアリだと思いますわ」
「お嬢はしたいことをすればいい。
いざとなったら、俺がお嬢とマリーを連れて逃げればいいんだからな」
エルヴィンもこんなことを言っているが、ダメだと思うなら断固反対するはずなので、つまりはマリアンネと同じ及第点をヘンリックにつけたということだ。
この二人が反対するなら、私はヘンリックとの契約結婚を諦めるつもりだった。
それくらい、私は二人のことを信頼し、大切に思っている。
「では、契約結婚の条件を決めなくてはね。
二人とも、遠慮なく意見を出してちょうだい」
私たちはお茶を飲みながら、真剣に議論を続けた。
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