1 / 2
君の笑顔と温かさ
しおりを挟む
「木の根っこから落ちたらワニに食べられちゃうから」
そう言って私に手を差し伸べてくれる、君の笑顔は眩しくて、可愛くて。握った手は温かかった。
「美結。次どこ行く?」
「え?」
パフェを食べながら、美咲が私に話しかけてきてることは分かっていたけど、何を言っているのか聞いてなかった。
「最近、美結ずっとそんな感じだよね」
美咲とは保育園の時からの幼馴染で親友的な存在。
「もしかして!! 好きな人出来たとか?」
「そんなじゃないって!」
私が慌てた素振りを見せたもんだから美咲は当然のように好きな人が出来たていで話を進めてくる。
「叶くんとか? 最近よく話してる所見るからねぇ。あ、もしかして沙月くん? 美結のタイプっぽいもんね」
「だから違うって!」
苺を口いっぱいに入れた美咲が私の方をぽかんと眺めている。
私はため息をついて生クリームをスプーンいっぱいにすくって口に運ぶ。生クリームの甘さと苺の甘酸っぱさが調和されてすごく美味しい。
「でもさ、美結が最近何かを考えるようにぼーっとしてんのは、確かよ?」
それは確かにそうだ。
ここ最近になっても彼の事を無性に考えてしまう。2度と会うことがないかもしれない彼の事を考えてもどうこうなる話ではないのに。
でも、美咲なら彼の事を少しでも理解できると思う。彼が私の目の前からいなくなったのは小学校にあがってから。保育園の時は美咲とはあまり一緒にいなかったけど、彼の事はたぶん知っていると思う。
「ねぇ、海星くんの事、覚えてる?」
「ん? あー、あの可愛い子?」
「うん。海星くんの苗字って何なんだろね」
「んー。覚えてないなぁ。保育園の時のアルバム持ってないから確認することも出来ないし」
「んーー」
「なに? 美結もしかして、海星くんの事好きなの?」
幼なじみに言われた言葉は、何故かずっと私の心の中でこだまし続けた。何回も耳元で美咲の声が聞こえてくる。
家に帰ってから私はおもむろに押し入れを開けていた。
その中の収納ボックスをガタガタと取り出して『ある物』を一心不乱に探し続けた。
「あれ、帰ってたの?」
電気のついていない部屋に入ってきたのは母だった。
「何探してんの?」
「ねえ、卒園アルバムないの?」
母は考える素振りを見せて手を打った。
「卒園アルバムは要らないと思って買わなかったのよぉ。高かったしね」
その言葉を聞いて全てのやる気を失った。
どこにいるかも分からない。名前はわかるのに苗字は分からない。彼の今を知りたいのに何一つとして情報がないなんて。
「なんで、それが必要なの?」
「海星くんの事、覚えてる?」
「あー、あの子、大阪に行ったみたいよね」
「え?」
母がそんな事をあっさり言うものだから、呆気にとられてしまった。
「卒園と同時のタイミングでお父さんのいた大阪に引っ越したみたいよ?」
「え、ちなみにさ、苗字とかは? 覚えてないの?」
「それは覚えてないけど…」
「なんだぁ」
「そんな事より、勉強しなさいよ? 今の学力でいけるからって余裕を持っておかないと落ちちゃうかもしれないでしょ?」
「わかってますぅ」
嫌味げにそう言って出して物を整頓しながら収納ボックスに片付けていく。保育園の時の写真は何枚か残っている。それでも彼が写っている写真は2・3枚しかないのだ。
私は商業科の高校に入学するつもりだ。行きたいとかそういう訳じゃない。世間体的に高校に行っていないとカッコの悪いこの時代に行きたくなくても行かなければならないのなら、姉の進路について行くだけだ。姉の通う高校に行っておけば何となく安心することができる。
商業科の学校には学科が3つに別れている。商業科、会計情報科、情報処理科。この3つだ。ちなみに私は会計科に行くつもりだ。ここだったら何かと都合がいい。まず、姉が進んだ学科だからわからない時は教えて貰える。2つ目、3つの学科のうちで1番人数が少ない。商業科は4クラスもあるのに1クラスに生徒数が40人。に対して、会計科は2クラスで1クラスに25人程度。ちなみに情報処理科は2クラスでクラスに30人ちょっといるらしい。元からあんまり友達とか作りたいと思っていなかったので、静かな会計科が私にはピッタリだ。そして、3つ目。男子がほとんどいない事。ここが1番私が惹かれた理由でもある。姉のクラスにも男子が10人もいないらしい。女子高でもないのに、ほとんど女子高みたいな感じだという。私はそれを聞いて入学を決めた。私は本当に最低な人間なのかもしれない。
そう言って私に手を差し伸べてくれる、君の笑顔は眩しくて、可愛くて。握った手は温かかった。
「美結。次どこ行く?」
「え?」
パフェを食べながら、美咲が私に話しかけてきてることは分かっていたけど、何を言っているのか聞いてなかった。
「最近、美結ずっとそんな感じだよね」
美咲とは保育園の時からの幼馴染で親友的な存在。
「もしかして!! 好きな人出来たとか?」
「そんなじゃないって!」
私が慌てた素振りを見せたもんだから美咲は当然のように好きな人が出来たていで話を進めてくる。
「叶くんとか? 最近よく話してる所見るからねぇ。あ、もしかして沙月くん? 美結のタイプっぽいもんね」
「だから違うって!」
苺を口いっぱいに入れた美咲が私の方をぽかんと眺めている。
私はため息をついて生クリームをスプーンいっぱいにすくって口に運ぶ。生クリームの甘さと苺の甘酸っぱさが調和されてすごく美味しい。
「でもさ、美結が最近何かを考えるようにぼーっとしてんのは、確かよ?」
それは確かにそうだ。
ここ最近になっても彼の事を無性に考えてしまう。2度と会うことがないかもしれない彼の事を考えてもどうこうなる話ではないのに。
でも、美咲なら彼の事を少しでも理解できると思う。彼が私の目の前からいなくなったのは小学校にあがってから。保育園の時は美咲とはあまり一緒にいなかったけど、彼の事はたぶん知っていると思う。
「ねぇ、海星くんの事、覚えてる?」
「ん? あー、あの可愛い子?」
「うん。海星くんの苗字って何なんだろね」
「んー。覚えてないなぁ。保育園の時のアルバム持ってないから確認することも出来ないし」
「んーー」
「なに? 美結もしかして、海星くんの事好きなの?」
幼なじみに言われた言葉は、何故かずっと私の心の中でこだまし続けた。何回も耳元で美咲の声が聞こえてくる。
家に帰ってから私はおもむろに押し入れを開けていた。
その中の収納ボックスをガタガタと取り出して『ある物』を一心不乱に探し続けた。
「あれ、帰ってたの?」
電気のついていない部屋に入ってきたのは母だった。
「何探してんの?」
「ねえ、卒園アルバムないの?」
母は考える素振りを見せて手を打った。
「卒園アルバムは要らないと思って買わなかったのよぉ。高かったしね」
その言葉を聞いて全てのやる気を失った。
どこにいるかも分からない。名前はわかるのに苗字は分からない。彼の今を知りたいのに何一つとして情報がないなんて。
「なんで、それが必要なの?」
「海星くんの事、覚えてる?」
「あー、あの子、大阪に行ったみたいよね」
「え?」
母がそんな事をあっさり言うものだから、呆気にとられてしまった。
「卒園と同時のタイミングでお父さんのいた大阪に引っ越したみたいよ?」
「え、ちなみにさ、苗字とかは? 覚えてないの?」
「それは覚えてないけど…」
「なんだぁ」
「そんな事より、勉強しなさいよ? 今の学力でいけるからって余裕を持っておかないと落ちちゃうかもしれないでしょ?」
「わかってますぅ」
嫌味げにそう言って出して物を整頓しながら収納ボックスに片付けていく。保育園の時の写真は何枚か残っている。それでも彼が写っている写真は2・3枚しかないのだ。
私は商業科の高校に入学するつもりだ。行きたいとかそういう訳じゃない。世間体的に高校に行っていないとカッコの悪いこの時代に行きたくなくても行かなければならないのなら、姉の進路について行くだけだ。姉の通う高校に行っておけば何となく安心することができる。
商業科の学校には学科が3つに別れている。商業科、会計情報科、情報処理科。この3つだ。ちなみに私は会計科に行くつもりだ。ここだったら何かと都合がいい。まず、姉が進んだ学科だからわからない時は教えて貰える。2つ目、3つの学科のうちで1番人数が少ない。商業科は4クラスもあるのに1クラスに生徒数が40人。に対して、会計科は2クラスで1クラスに25人程度。ちなみに情報処理科は2クラスでクラスに30人ちょっといるらしい。元からあんまり友達とか作りたいと思っていなかったので、静かな会計科が私にはピッタリだ。そして、3つ目。男子がほとんどいない事。ここが1番私が惹かれた理由でもある。姉のクラスにも男子が10人もいないらしい。女子高でもないのに、ほとんど女子高みたいな感じだという。私はそれを聞いて入学を決めた。私は本当に最低な人間なのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
おしどり夫婦の茶番
Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。
おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。
一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる