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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その伍参
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「さて」仁和は地面に腰を下ろす。「記憶移植による不死については話した通りなので、次は寿命のない永遠の命について語らせてもらいますか」
「不死の件はまだ続くのかよ。てっきり次は未来視のことを話し合うんだと思ってたぜ」
「未来視のことは政宗殿も大体察しているのではないですか?」
「まあな」
俺はぶっきらぼうにそう言い、仁和の横で胡坐を掻いた。
「そうでしょう、そうでしょう。実は永遠の命を語る過程で未来視を絡めて話す必要があるのです。つまり永遠の命について話し合えば、おのずと未来視についても話し合うことになります。なので早速、永遠の命について話させていただきます。
二十一世紀でも永遠の命は確認されていません。長寿と言われた人の寿命も、せいぜい百歳を少し上回る程度でした。ですがフランク・ティプラーはオメガ点なるものを主張しました。このオメガ点をわかりやすく要約するならば、魂を数式で表すことによってコンピューター内で永遠に生きていけるのだという理論のことです」
「とんだ曲論だな」
「私も最初はそう思いましたよ。ですがこのオメガ点は案外と的を射ています。それに魂を数式で表すのはまったくもって不可能というわけではありませんし」
「マジで?」
「魂などを司る素粒子よりも小さな物質が存在し、その物質によって魂が構成されているとするならば数式で表すのも可能です。つまり魂を物質と考えれば数式化も出来ます。コンピューター内で生き続けることも非現実の話しではありません」
俺はうなり声を上げる。「コンピューター内で生き続けることが可能だとして、肉体がなければ生命の魔女の不死の体についての説明にはなってないんじゃないか?」
「ええ、魂として現世に永遠にとどまることは出来ても肉体は腐ってしまうでしょうね」
「おい!」
「まあまあ、そう怒らないでください。まだ話しには続きがあるんです。オメガ点の話しに戻りますね。ティプラーは全能の知性によってオメガ点が最高点に到達すると言いました。全能の知性、と聞いて政宗殿は何か思い出しませんか?」
「ラプラスの悪魔か!」
「さすがです。政宗殿もそれなりに成長しましたね。念のためにラプラスの悪魔を説明しましょう。ラプラスの悪魔とはピエール=シモン・ラプラスが考え出した、世界に存在する全ての物質の位置と運動量を把握することが出来る知性のことです。そして世界に存在する全ての物質の位置と運動量を把握出来るならば、どの物質がどの位置からどこへ動くか知ることが出来るので、つまりはこの知性は未来を知ることが出来るものです。従ってこの知性は全能であり、オメガ点を最高点に到達させる鍵とも言えます」
「未来視の魔女がラプラスの悪魔の真似事で未来を視ているのならば、オメガ点は未来視の魔女によって進化する。結論から言うと、生命の魔女の不死身の力は未来視の魔女と深く関係しているはずだな」
「私はその結論に至るまでに数分しか要していませんが、政宗殿は随分と時間が掛かりましたね」
「そう言われると返す言葉もないぜ......」
これで未来視の魔女と生命の魔女が持つ特殊能力については何となくだけど理解出来た。残るは魅惑の魔女の持つ特殊能力である、人を魅了する力についてだけだな。フィクションの中でよく見る惚れ薬とかがあるならば話しは別だが、現実世界でそんな都合の良いものはない。
「んで、魅惑の魔女の特殊能力はどう説明するんだ?」
「最初は媚薬を使っているのではないかとも思いましたが、柏木殿から話しを聞く限りではその可能性は極めて低いでしょう。おそらくですが、魅惑の魔女は何らかのフェロモンを用いて人を魅了していると考えられます。虫や動物なども操れ、しかも毒物などの生成も可能なようなので、魅惑の魔女は薬品作りに長けた科学者だとわかりますね」
「人を魅了出来るフェロモンなんて存在するのか?」
「男女関係なく汗に含まれるアンドロステノンというフェロモンが存在します。このアンドロステノンの働きによって、関心のある相手の汗ならば良い匂いに感じられ、関心のない相手の汗ならば嫌な匂いと感じられます。まあ科学的な裏付けがあるわけではありませんが、人に好かれる程度ならばフェロモンでも可能です。魅惑の魔女はかなり優秀な科学的ということですよ。ぜひ話してみたいものですね」
内心わかってはいたが、世界を灰燼に帰すことが出来るほどの力を有する原初の魔女とて魔法を使えないとは夢がないな。異世界転生ではなく逆行転生なので文句は言えんが、俺が使っている神力みたいな能力が一般化している世界でも生活してみたいものだ。男としては憧れちゃうよね。
「では話し合いも終わりましたし、お寺へ戻りますかね」
「そうしよう。そろそろ九頭竜も食事を終えた頃合いだろうからちょうど良い」
「ですね」
そんな俺達の様子をこっそりと遠くから伺っている者がいるとは考えもしなかった。会話の内容は聞かれなかったが、その不埒者はあろうことか単騎で俺に突っ込んできた。
一寸先は闇、とはよく言ったものだ。さすが先達である。人生のことをよくわかっていらっしゃるな。
「不死の件はまだ続くのかよ。てっきり次は未来視のことを話し合うんだと思ってたぜ」
「未来視のことは政宗殿も大体察しているのではないですか?」
「まあな」
俺はぶっきらぼうにそう言い、仁和の横で胡坐を掻いた。
「そうでしょう、そうでしょう。実は永遠の命を語る過程で未来視を絡めて話す必要があるのです。つまり永遠の命について話し合えば、おのずと未来視についても話し合うことになります。なので早速、永遠の命について話させていただきます。
二十一世紀でも永遠の命は確認されていません。長寿と言われた人の寿命も、せいぜい百歳を少し上回る程度でした。ですがフランク・ティプラーはオメガ点なるものを主張しました。このオメガ点をわかりやすく要約するならば、魂を数式で表すことによってコンピューター内で永遠に生きていけるのだという理論のことです」
「とんだ曲論だな」
「私も最初はそう思いましたよ。ですがこのオメガ点は案外と的を射ています。それに魂を数式で表すのはまったくもって不可能というわけではありませんし」
「マジで?」
「魂などを司る素粒子よりも小さな物質が存在し、その物質によって魂が構成されているとするならば数式で表すのも可能です。つまり魂を物質と考えれば数式化も出来ます。コンピューター内で生き続けることも非現実の話しではありません」
俺はうなり声を上げる。「コンピューター内で生き続けることが可能だとして、肉体がなければ生命の魔女の不死の体についての説明にはなってないんじゃないか?」
「ええ、魂として現世に永遠にとどまることは出来ても肉体は腐ってしまうでしょうね」
「おい!」
「まあまあ、そう怒らないでください。まだ話しには続きがあるんです。オメガ点の話しに戻りますね。ティプラーは全能の知性によってオメガ点が最高点に到達すると言いました。全能の知性、と聞いて政宗殿は何か思い出しませんか?」
「ラプラスの悪魔か!」
「さすがです。政宗殿もそれなりに成長しましたね。念のためにラプラスの悪魔を説明しましょう。ラプラスの悪魔とはピエール=シモン・ラプラスが考え出した、世界に存在する全ての物質の位置と運動量を把握することが出来る知性のことです。そして世界に存在する全ての物質の位置と運動量を把握出来るならば、どの物質がどの位置からどこへ動くか知ることが出来るので、つまりはこの知性は未来を知ることが出来るものです。従ってこの知性は全能であり、オメガ点を最高点に到達させる鍵とも言えます」
「未来視の魔女がラプラスの悪魔の真似事で未来を視ているのならば、オメガ点は未来視の魔女によって進化する。結論から言うと、生命の魔女の不死身の力は未来視の魔女と深く関係しているはずだな」
「私はその結論に至るまでに数分しか要していませんが、政宗殿は随分と時間が掛かりましたね」
「そう言われると返す言葉もないぜ......」
これで未来視の魔女と生命の魔女が持つ特殊能力については何となくだけど理解出来た。残るは魅惑の魔女の持つ特殊能力である、人を魅了する力についてだけだな。フィクションの中でよく見る惚れ薬とかがあるならば話しは別だが、現実世界でそんな都合の良いものはない。
「んで、魅惑の魔女の特殊能力はどう説明するんだ?」
「最初は媚薬を使っているのではないかとも思いましたが、柏木殿から話しを聞く限りではその可能性は極めて低いでしょう。おそらくですが、魅惑の魔女は何らかのフェロモンを用いて人を魅了していると考えられます。虫や動物なども操れ、しかも毒物などの生成も可能なようなので、魅惑の魔女は薬品作りに長けた科学者だとわかりますね」
「人を魅了出来るフェロモンなんて存在するのか?」
「男女関係なく汗に含まれるアンドロステノンというフェロモンが存在します。このアンドロステノンの働きによって、関心のある相手の汗ならば良い匂いに感じられ、関心のない相手の汗ならば嫌な匂いと感じられます。まあ科学的な裏付けがあるわけではありませんが、人に好かれる程度ならばフェロモンでも可能です。魅惑の魔女はかなり優秀な科学的ということですよ。ぜひ話してみたいものですね」
内心わかってはいたが、世界を灰燼に帰すことが出来るほどの力を有する原初の魔女とて魔法を使えないとは夢がないな。異世界転生ではなく逆行転生なので文句は言えんが、俺が使っている神力みたいな能力が一般化している世界でも生活してみたいものだ。男としては憧れちゃうよね。
「では話し合いも終わりましたし、お寺へ戻りますかね」
「そうしよう。そろそろ九頭竜も食事を終えた頃合いだろうからちょうど良い」
「ですね」
そんな俺達の様子をこっそりと遠くから伺っている者がいるとは考えもしなかった。会話の内容は聞かれなかったが、その不埒者はあろうことか単騎で俺に突っ込んできた。
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