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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その漆弐
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エリアスや剣崎というごく一部の例外を除き、魔女教信徒はそれぞれ性格に難がある。0番のようにエヴァを創造主と呼んで崇める狂信者や、カルミラのように感情がない者、セレナのような合理主義者。
となると、魔女教とまともに戦っても無駄になる可能性が高い。何たって魔女教信徒は卑怯であり、もしここで俺達が勝ったとしても、奴らは勝つまで何度も挑んで来るだろう。
ならばこの戦闘に勝った上で魔女教の本部へ殴り込めば良い。そうしよう。というか殴り込みたい。うざいから魔女教解体してやるよ!
俺が覚悟を決めている内にカルミラはジョーに敗れて意識を刈り取られていた。器用な奴め、さすが異世界の剣聖だ。
あと残るは245番とセレナの二人と、高みの見物をしている三人の魔女。
久々に神力を使って周囲の水を掻き集めて刀に纏わせ、超高圧水流と化させる。前世でノズルから超高圧の水流を出して、硬いものを切断するという機械があった。つまり水を超高圧水流にすれば硬いものが斬れるようになる。
それを応用して超高圧水流の刃となった刀を掴み、245番に向き直る。そして地面を蹴って近づこうとした時、剣崎に止められてしまった。
「エリアスの旦那を殺った仇の相手を自分に任せてくれないか?」
「本気か? 245番は対人戦闘で驚異的な存在だぞ。指弾にも油断出来んぞ」
「承知の上だ」
「秘策があるんだな?」
「ああ。通じるかはわからないが、奴に復讐がしたいんだ」
剣崎は怒っていた。誰が見ても怒っている。だが頭でちゃんと冷静に考えているし、245番の強さを理解した上で勝てる手があるようだ。剣崎はやけくそになっているわけではない。
「許可する。仇を取ってこい!」
目に涙を浮かべた剣崎は一度だけうなづき、懐から小型の銃を取り出す。剣崎はその銃を245番に向けた。
「おい剣崎、その銃はどうやって着火させるんだ!?」
その銃は火縄銃ではなかった。黒色で無地のL字形で、直角の部分に引き金が付いている。凹凸もほとんどなく、非常にシンプルな造りであり、そんなものから銃弾が発射出来るわけがない。第一、引き金を引いても火薬に着火させるような仕掛けが見受けられなかった。
「見ていろ、直にわかる」剣崎は引き金を引いた。「燃えろっ!」
銃からは水のような透明な液体が発射され、245番の衣服を濡らす。水鉄砲だったから、あのような簡単な造りだったようだ。
呆けていると245番の服の濡れた部分が発火し、みるみるうちに火だるまと化した。剣崎はそれでも容赦せず、245番に向かって何度も引き金を引く。
苦しむ245番を見ていた三人の魔女とセレナは、245番が炭となるまで動かずにただ眺めていた。
「これは惜しい人材を失った。私の最高傑作が死んでしまったよ」
エヴァは悲しそうな声でそう言ったが、口元は笑っていた。
「おいエヴァ、さすがにまずくないか?」
「なぜだ、セシリア?」
セシリアにはまだ人間の心があったのかな?
「皆まで言わせるな。245番と0番を失ったんだぞ。また新しく実験体を増やすために時間が掛かるだろうが」
あ、245番が死んで悲しいとかじゃなくて、実験体の補充が大変だってこと!? マジで言ってんの、こいつら?
「まあそうだね。実験体の中でかなり強かった二人は死んだ。けどその程度で死ぬような奴に用はないよ。何より245番と同じ実験を別の実験体に施せば良い。そうだろ?」
「捕虜の補充が面倒だと言っているんだ。エヴァは捕虜の体をいじくるだけだが、その捕虜を用意しているのは我だぞ?」
「セシリアだけでなくイザベルだって捕虜を連れてきているじゃないか。短気は損気、という言葉がこの国にはあるらしいよ」
「そういうことではないのだが。......それで、剣崎が持っていた銃についてはどう弁明する?」
「ああ、あの銃は私が作った試作品だね。黄リンと二硫化炭素の溶液を発射する銃だ。黄リンを使っているから空気に触れただけで発火する。だからその溶液を空気に触れさせずに銃に内蔵させるのに苦労した。ちょっと前に紛失してしまったが、まさか盗まれているとは驚きだ」
「何の弁明にもなっていないぞ!」
あいつらは仲間が死んでも眉一つ動かしていない。本当に狂ってるな。
っと、それよりも、今のうちに剣崎に聞いておかないと。
「なあ剣崎、その銃はさっきエヴァが言っていた試作品ってので合ってるのか?」
「ああ、合っている。俺にはエリアスの旦那のような特殊な力のようなものを持っていないので、護身用に盗み出したものだ。引き金を引けば溶液が飛び、その溶液が発火する『紅蓮』と名付けられた試作品の銃らしい。射程距離は三十メートルほどだと聞いている」
怒っているが、それを表には出さないように配慮して歯を食いしばる剣崎。戦いが終わったらいくらでも怒れ、そしていくらでも泣け。エリアスの墓は立派なものにしてやるよ。
「紅蓮はあと何発撃てる?」
「十数回くらいだと思うが、くわしいことはわからない」
「わかった。剣崎はそれを使って援護を頼む。俺達はあの四人に先制攻撃を仕掛けてみるぜ!」
剣崎はうなずき、俺とジョーが突っ込む。ホームズとクロークも遅れてそれに加わり、食い止めるためにセレナとエヴァが迎え撃つ。
俺はニヤリと笑い、セレナとエヴァから視界を奪った。目は感覚器であり、光を受けて景色を見ている。くわしい原理を仁和に聞いたことがあるが、光が角膜に屈折するとか、瞳孔を通過するとか意味がわからないことを言った。
小難しいのを理解するのは人一倍頭を使うので、簡単にまとめると目に光が届く前に反射させられれば前が見えなくなる。俺は神力によって光を折り曲げ、彼女らの視界を奪ったのである。
今も寺の奴らがこの戦いをこっそりと見ているので、透明化して攻撃をすると変な噂が広がってしまう。なので見た目に変化がないように神力を使うにはどうしたら良いか考え、視界を奪うことにした。
ちなみに超高圧水流の刃を刀に纏わせているが、これは目を凝らしてみなければあまり目立たない。なので遠慮せずに使い、視界が奪われて混乱しているエヴァを真っ二つに斬り捨てる。
ジョーもセレナを斬ろうとするが、彼女は視界が奪われても混乱していない。それどころか目が見えているように反応し、見事にジョーの攻撃を防いだ。......本当に厄介な女だな。
となると、魔女教とまともに戦っても無駄になる可能性が高い。何たって魔女教信徒は卑怯であり、もしここで俺達が勝ったとしても、奴らは勝つまで何度も挑んで来るだろう。
ならばこの戦闘に勝った上で魔女教の本部へ殴り込めば良い。そうしよう。というか殴り込みたい。うざいから魔女教解体してやるよ!
俺が覚悟を決めている内にカルミラはジョーに敗れて意識を刈り取られていた。器用な奴め、さすが異世界の剣聖だ。
あと残るは245番とセレナの二人と、高みの見物をしている三人の魔女。
久々に神力を使って周囲の水を掻き集めて刀に纏わせ、超高圧水流と化させる。前世でノズルから超高圧の水流を出して、硬いものを切断するという機械があった。つまり水を超高圧水流にすれば硬いものが斬れるようになる。
それを応用して超高圧水流の刃となった刀を掴み、245番に向き直る。そして地面を蹴って近づこうとした時、剣崎に止められてしまった。
「エリアスの旦那を殺った仇の相手を自分に任せてくれないか?」
「本気か? 245番は対人戦闘で驚異的な存在だぞ。指弾にも油断出来んぞ」
「承知の上だ」
「秘策があるんだな?」
「ああ。通じるかはわからないが、奴に復讐がしたいんだ」
剣崎は怒っていた。誰が見ても怒っている。だが頭でちゃんと冷静に考えているし、245番の強さを理解した上で勝てる手があるようだ。剣崎はやけくそになっているわけではない。
「許可する。仇を取ってこい!」
目に涙を浮かべた剣崎は一度だけうなづき、懐から小型の銃を取り出す。剣崎はその銃を245番に向けた。
「おい剣崎、その銃はどうやって着火させるんだ!?」
その銃は火縄銃ではなかった。黒色で無地のL字形で、直角の部分に引き金が付いている。凹凸もほとんどなく、非常にシンプルな造りであり、そんなものから銃弾が発射出来るわけがない。第一、引き金を引いても火薬に着火させるような仕掛けが見受けられなかった。
「見ていろ、直にわかる」剣崎は引き金を引いた。「燃えろっ!」
銃からは水のような透明な液体が発射され、245番の衣服を濡らす。水鉄砲だったから、あのような簡単な造りだったようだ。
呆けていると245番の服の濡れた部分が発火し、みるみるうちに火だるまと化した。剣崎はそれでも容赦せず、245番に向かって何度も引き金を引く。
苦しむ245番を見ていた三人の魔女とセレナは、245番が炭となるまで動かずにただ眺めていた。
「これは惜しい人材を失った。私の最高傑作が死んでしまったよ」
エヴァは悲しそうな声でそう言ったが、口元は笑っていた。
「おいエヴァ、さすがにまずくないか?」
「なぜだ、セシリア?」
セシリアにはまだ人間の心があったのかな?
「皆まで言わせるな。245番と0番を失ったんだぞ。また新しく実験体を増やすために時間が掛かるだろうが」
あ、245番が死んで悲しいとかじゃなくて、実験体の補充が大変だってこと!? マジで言ってんの、こいつら?
「まあそうだね。実験体の中でかなり強かった二人は死んだ。けどその程度で死ぬような奴に用はないよ。何より245番と同じ実験を別の実験体に施せば良い。そうだろ?」
「捕虜の補充が面倒だと言っているんだ。エヴァは捕虜の体をいじくるだけだが、その捕虜を用意しているのは我だぞ?」
「セシリアだけでなくイザベルだって捕虜を連れてきているじゃないか。短気は損気、という言葉がこの国にはあるらしいよ」
「そういうことではないのだが。......それで、剣崎が持っていた銃についてはどう弁明する?」
「ああ、あの銃は私が作った試作品だね。黄リンと二硫化炭素の溶液を発射する銃だ。黄リンを使っているから空気に触れただけで発火する。だからその溶液を空気に触れさせずに銃に内蔵させるのに苦労した。ちょっと前に紛失してしまったが、まさか盗まれているとは驚きだ」
「何の弁明にもなっていないぞ!」
あいつらは仲間が死んでも眉一つ動かしていない。本当に狂ってるな。
っと、それよりも、今のうちに剣崎に聞いておかないと。
「なあ剣崎、その銃はさっきエヴァが言っていた試作品ってので合ってるのか?」
「ああ、合っている。俺にはエリアスの旦那のような特殊な力のようなものを持っていないので、護身用に盗み出したものだ。引き金を引けば溶液が飛び、その溶液が発火する『紅蓮』と名付けられた試作品の銃らしい。射程距離は三十メートルほどだと聞いている」
怒っているが、それを表には出さないように配慮して歯を食いしばる剣崎。戦いが終わったらいくらでも怒れ、そしていくらでも泣け。エリアスの墓は立派なものにしてやるよ。
「紅蓮はあと何発撃てる?」
「十数回くらいだと思うが、くわしいことはわからない」
「わかった。剣崎はそれを使って援護を頼む。俺達はあの四人に先制攻撃を仕掛けてみるぜ!」
剣崎はうなずき、俺とジョーが突っ込む。ホームズとクロークも遅れてそれに加わり、食い止めるためにセレナとエヴァが迎え撃つ。
俺はニヤリと笑い、セレナとエヴァから視界を奪った。目は感覚器であり、光を受けて景色を見ている。くわしい原理を仁和に聞いたことがあるが、光が角膜に屈折するとか、瞳孔を通過するとか意味がわからないことを言った。
小難しいのを理解するのは人一倍頭を使うので、簡単にまとめると目に光が届く前に反射させられれば前が見えなくなる。俺は神力によって光を折り曲げ、彼女らの視界を奪ったのである。
今も寺の奴らがこの戦いをこっそりと見ているので、透明化して攻撃をすると変な噂が広がってしまう。なので見た目に変化がないように神力を使うにはどうしたら良いか考え、視界を奪うことにした。
ちなみに超高圧水流の刃を刀に纏わせているが、これは目を凝らしてみなければあまり目立たない。なので遠慮せずに使い、視界が奪われて混乱しているエヴァを真っ二つに斬り捨てる。
ジョーもセレナを斬ろうとするが、彼女は視界が奪われても混乱していない。それどころか目が見えているように反応し、見事にジョーの攻撃を防いだ。......本当に厄介な女だな。
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