名探偵を丸裸! シャーロック・ホームズ大事典

髙橋朔也

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ホームズの論文

番外編 その他の論文

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【仮病】
 ホームズは短編『瀕死の探偵』にて、仮病についての論文を書きたいと言っています。『瀕死の探偵』ではホームズは病であると偽っていて、ワトスンにはクーリー病だと伝えていました。
 クーリー病はスマトラから入ってきたもので、伝染力もあり、体は痙攣けいれんし、これにかかったら絶対に助からず、痛みをともなわずにひどく苦しんで死ぬようです。
 その時の仮病の方法については、ひたいにワセリンをり、散瞳さんどうさせるためにベラドンナを眼に滴下てきかし、頬骨ほおぼねに紅をつけ、蜜蝋みつろうのかさぶたをくちびるに付けるというものです。
 ただ、実吉達郎さんによるとベラドンナは毒物なので、間違っても点眼てんがんしないことです。ベラドンナはナス科の多年草で、猛毒もうどくのアルカロイドであるアトロピンを含みます。
 アルセーヌ・ルパンも瞳孔どうこう拡張かくちょうさせて変装をするためにアトロピンを点眼しています。
 額に塗ったワセリンは、現在なら薬局などで手に入ります。ワセリンは石油から採れる半固体状のろうで、通常は外傷に対する塗り薬として使われています。理科の実験とかでも、葉っぱの蒸散じょうさんを防ぐのに使った記憶があります。
 また、ホームズは時々半クラウン金貨のことや、牡蠣かき、その他関係ないことなどを口にして、幻覚状態の演技えんぎもしています。
 作者であるドイルは元々は医者だったため、正典にも病についての描写などがたびたび見られます。この仮病の方法についても、ドイルの得意分野です。


【タイプライターと犯罪の関係】
 ホームズは短編『花婿失踪事件』にて、タイプライターと犯罪の関係について論文を書きたいと言っています。『花婿失踪事件』では、事件解決の鍵をタイプライターが握っています。下に引用しましょう。

『「タイプライターは妙なものでしてね。打った文字には、人の書いた肉筆文字とおなじに、それぞれ個性のあるものですよ。器械がまったく新しければ別ですが、さもなければ、どの二つをとってみても、打った文字がまったくおなじというのは一つもありません。ある文字がほかのよりも磨滅まめつがひどいとか、片寄って磨滅しているとかするものです。そこであなたのこのお手紙ですが、どれを見てもeの字がすこしぼやけていますし、rは耳のところがすこし欠けています。特徴は全部で十六ありますが、この二つはとくにわかりやすいのです」
「事務所の通信はみんなこの器械で打つのですから、むろんすこしは損じてもいましょう」
 ウィンディバンクはその鋭い小さな眼で、じろりとホームズを見た。
「そこで、たいへんおもしろい問題があるのですがね、ウィンディバンクさん。いったい私は、タイプライターと犯罪の関係について、小論文をもう一つ書こうと思っているのですが、これはかねてからすこしばかり研究している題目なのです。で、ここに失踪したホズマー・エンゼルさんから来たという手紙が四通だけありますが、みんなタイプで打ったものです。ところが、どの一つを見ても、eがぼけ、rの耳が欠けているばかりでなく、その拡大鏡で見ていただけばわかりますが、さっき申した十六の特徴が、そっくり現れているのですよ」』

 ホームズはウィンディバンクのタイプライターで打たれた手紙とエンゼルのタイプライターで打たれた手紙の十六の特徴が一致していることから、二人は同一人物だと推理しました。
 また、タイプライターは媒介ばいかい法によって暗号に使用することも出来ます。タイプライターは記号と数字が同じキーに記されているので、記号で数字や文字を表すことが出来るのです。しかし、媒介しているものがタイプライターだとわかればすぐに解読されてしまいます。
 タイピストについても、『花婿失踪事件』には書かれています。依頼人の袖口そでぐちに二本の筋の跡がついていて、そこからホームズはタイプライターを使うときに袖口をテーブルに押しつけるからタイピストだと推理しています。
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