ちょっと怖い体験談。

こゆき

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02 黒い影

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 私は、グループホームで6年仕事をしてきた。
 そのため、何回か不思議な体験をしたことがある。
 
 ……と言っても、そんなに大した事はない。
 某恐怖番組のような体験談はないので悪しからず。
 
 
 
 とある入居者さんがいた。
 認知症が酷く、体格の良いおじいちゃん。
 グループホームは家事も仕事という特性のため、目に見えて女性職員が多い。
 そのため、その入居者さん……Sさんには、とても困っていた。
 
 なんてったって、暴力を振るわれる方だったから。
 
 介護あるあるだけど、よくあるからってそれが好ましい訳がない。
 お年寄りとはいえ、理性の欠いた男性の全力の暴力というのはなかなかの脅威だ。
 どうしたものか、と職員同士で頭を悩ませていた。
 
 そんな時の、夜勤明け。
 午前4時くらいのこと。
 
 一通りのオムツ交換と、トイレ掃除が終わって、リビングルームで記録を書いていた時。
 早起きの入居者さん達は動き始める頃合だったから、電気を全部つけていた。
 そろそろ、春になる頃合だったと思う。
 
 ふと、横から気配を感じた。
 
 いつの間にか、Sさんが起きてきているのかと思った。
 気配を感じた場所が、よくSさんが立っている所だったから。
 
 そして、そっちを見て。
 
「!!!」
 
 
 そこに立っていたのは、真っ黒な人影だった。
 
  
 真っ黒な人影が、こちらに手を伸ばしている。
 
 ……一瞬しか見えなかった。
 直ぐに怖くて目を逸らしたから。
 ほんの一緒だったけど、確かにその時は『そこに黒い影がいる』と、そう思った。
 
 思いっきり飛び退いて、もう一度そこを見て、けれど何も居たりしなかった。
 物凄い心臓がバクバクとしていて、部屋の隅に落ちる暗がりが何だか不気味に思えて。
 急いで、普段付けないような間接照明も付けまくった。
 
 そして、怖いのはこの後。
 
 
 Sさんが、私がちょうど黒い影を見た数日後に、亡くなったのだ。
 
 
 さすがに思い違いだと思いたい。
 今思うと、黒い影なんて見なかったのかもしれない。
 夜勤で疲れて、幻覚を見たのかもしれない。
 
 けど、その時の私は、確実に『黒い影』を見たと思ったのだ。
 
 亡くなったのも偶然だろう。
 ──そう思いこむことにした。
 
 不確かで、誰にも言ったこともなかった体験。
 私が介護士をしていてハッキリと『何か』を見たことは、これが最初で最後だ。
 
 あれから、私が黒い影を見ることはない。
 
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