悪役令嬢は自分磨きに忙しい!

こゆき

文字の大きさ
7 / 19

6

しおりを挟む
ジーク=リオ=ダイア。
ツキオト世界のメイン攻略対象の1人であり、悪役令嬢ユリアの正当婚約者でもある。
透き通るような金の髪と、七色の煌めきを持つ王家の瞳。ルディア学園の生徒会長も務める文武両道な才色兼備。
……こうして並べてみると、腹が立つくらいの高スペックね、この人。

まあ、乙女ゲームが『イケメンのメンタル介護』と揶揄られる事もある通り、例の如くこの世界の攻略対象どももそりゃあ過去にアレこれ問題や孤独を抱えているわけでして。

そして、ジークもその例から外れる事なく、トラウマ持ちの1人である。



「けれど、このわたくしを目の当たりに育った貴方が、あの方に惹かれるとは思っておりませんでしたわ」
「なっ、惹かれてなどいない!……言っておくが、俺は彼女と一番最初に踊った相手であり、彼女がその後に多数の男と踊るとは思ってもなかったんだぞ」
「あら、けれどわたくしというものがおりながら、彼女をお誘いしたのでしょう?」
「……社交辞令で言ったのが、まさか頷かれるとは思わないだろう……」

休憩を、と通されたテラスで紅茶を嗜なみながら、ダイア様、もといジーク様の言い訳を聞き流す。
はああ、と特大のため息と共に眉間を揉んでいる事から、まあ事実なのでしょうね。
それに、淑女に恥をかかせないよう、殿方が『断られるのを前提に』ダンスにお誘いするのはよくある事だ。女性もそれを承知で丁重に誘いを断ることで、己の貞淑さをアピールする。
夜会の定型美、とも言える光景だ。

けれど、それで慈悲を与えるほどわたくしは優しくなくてよ。
なにせわたくし、悪役令嬢ですもの。

つーんとそっぽを向いているわたくしに、流石に決まりが悪くなったのだろう。
バツの悪いような顔で目を逸らすジーク様は、顔だけみれば相変わらずとても美しい。その女性に強く言えないギャップもよろしくてよ。可愛らしいわ。

「…………………………悪かった」
「聞こえませんわ」
「……………………………………ああ、分かった!今度お前が欲しがっていた東国の書物を持ってくる!それで許せ!」
「あら、許せ?」
「…………許してください」
「ええ、許します」

にっこり笑ってようやく目を合わせれば、ジーク様の肩がガックリと落ちる。
あらやだ、アレク。その引いた目はやめてちょうだいな。元々はジーク様が悪いのだから。

ジーク様との付き合いは長い。それこそアレクよりも、だ。
公爵家である我がラピス家と、王家であるダイア家の繋がりは濃く長い。年の近い男女が産まれたとなれば、婚約を結ぶのも最早当然の流れだった。
故に、幼い頃からお互いの家を行き来していたわたくし達は、所謂旧知の仲というわけだ。

それこそ、誰もいない所ではこのような軽口を叩きあえる程には。

……あら、仲が悪いと思いまして?
いやねえ、わたくしがそんな馬鹿な真似をするはずないじゃない。

素直じゃなくて、照れ屋で、性根が真っ直ぐで。正義感が強いせいで、色々な葛藤を抱えてしまうジーク様。
昔から変わらない可愛らしい幼なじみに、くすくすと笑みが零れた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

婚約破棄の、その後は

冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。 身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが… 全九話。 「小説家になろう」にも掲載しています。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

悪役令嬢は断罪回避に尽くします

夜桜 舞
恋愛
異世界中世風な乙女ゲームの世界に悪役令嬢「スティラ・レミラクシャ」として転生してしまった私。スティラはゲームだとハッピーエンドだろうがバッドエンドだろうが関係なく、断罪されて雑に死ぬ未来にある……。 「そんな未来、認めてたまるもんか!!」 死ぬ未来? そんなもん関係ない。ゲームのスティラは、わざわざヒロインを目の敵にして、いじめ倒したから断罪されたんだ。であれば、私はヒロインに関わらずに過ごせばいい!! と意気込んだものは良いが、あっちから私に関わってくると考え……。 私は、断罪後も自分の力で生きれるくらい強くなればいいという結論にいたり、早速行動に移した私は、色々な波乱もありながらも、ゲームの舞台である学園入学時には、魔法の腕前も剣の腕前も大人顔負けの技能を手に入れた。まぁ、ゲームのスティラの結末である断罪を回避するのが一番良いのだが……。※小説家になろう様にも投稿しております

処理中です...