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ジーク=リオ=ダイア。
ツキオト世界のメイン攻略対象の1人であり、悪役令嬢ユリアの正当婚約者でもある。
透き通るような金の髪と、七色の煌めきを持つ王家の瞳。ルディア学園の生徒会長も務める文武両道な才色兼備。
……こうして並べてみると、腹が立つくらいの高スペックね、この人。
まあ、乙女ゲームが『イケメンのメンタル介護』と揶揄られる事もある通り、例の如くこの世界の攻略対象どももそりゃあ過去にアレこれ問題や孤独を抱えているわけでして。
そして、ジークもその例から外れる事なく、トラウマ持ちの1人である。
「けれど、このわたくしを目の当たりに育った貴方が、あの方に惹かれるとは思っておりませんでしたわ」
「なっ、惹かれてなどいない!……言っておくが、俺は彼女と一番最初に踊った相手であり、彼女がその後に多数の男と踊るとは思ってもなかったんだぞ」
「あら、けれどわたくしというものがおりながら、彼女をお誘いしたのでしょう?」
「……社交辞令で言ったのが、まさか頷かれるとは思わないだろう……」
休憩を、と通されたテラスで紅茶を嗜なみながら、ダイア様、もといジーク様の言い訳を聞き流す。
はああ、と特大のため息と共に眉間を揉んでいる事から、まあ事実なのでしょうね。
それに、淑女に恥をかかせないよう、殿方が『断られるのを前提に』ダンスにお誘いするのはよくある事だ。女性もそれを承知で丁重に誘いを断ることで、己の貞淑さをアピールする。
夜会の定型美、とも言える光景だ。
けれど、それで慈悲を与えるほどわたくしは優しくなくてよ。
なにせわたくし、悪役令嬢ですもの。
つーんとそっぽを向いているわたくしに、流石に決まりが悪くなったのだろう。
バツの悪いような顔で目を逸らすジーク様は、顔だけみれば相変わらずとても美しい。その女性に強く言えないギャップもよろしくてよ。可愛らしいわ。
「…………………………悪かった」
「聞こえませんわ」
「……………………………………ああ、分かった!今度お前が欲しがっていた東国の書物を持ってくる!それで許せ!」
「あら、許せ?」
「…………許してください」
「ええ、許します」
にっこり笑ってようやく目を合わせれば、ジーク様の肩がガックリと落ちる。
あらやだ、アレク。その引いた目はやめてちょうだいな。元々はジーク様が悪いのだから。
ジーク様との付き合いは長い。それこそアレクよりも、だ。
公爵家である我がラピス家と、王家であるダイア家の繋がりは濃く長い。年の近い男女が産まれたとなれば、婚約を結ぶのも最早当然の流れだった。
故に、幼い頃からお互いの家を行き来していたわたくし達は、所謂旧知の仲というわけだ。
それこそ、誰もいない所ではこのような軽口を叩きあえる程には。
……あら、仲が悪いと思いまして?
いやねえ、わたくしがそんな馬鹿な真似をするはずないじゃない。
素直じゃなくて、照れ屋で、性根が真っ直ぐで。正義感が強いせいで、色々な葛藤を抱えてしまうジーク様。
昔から変わらない可愛らしい幼なじみに、くすくすと笑みが零れた。
ツキオト世界のメイン攻略対象の1人であり、悪役令嬢ユリアの正当婚約者でもある。
透き通るような金の髪と、七色の煌めきを持つ王家の瞳。ルディア学園の生徒会長も務める文武両道な才色兼備。
……こうして並べてみると、腹が立つくらいの高スペックね、この人。
まあ、乙女ゲームが『イケメンのメンタル介護』と揶揄られる事もある通り、例の如くこの世界の攻略対象どももそりゃあ過去にアレこれ問題や孤独を抱えているわけでして。
そして、ジークもその例から外れる事なく、トラウマ持ちの1人である。
「けれど、このわたくしを目の当たりに育った貴方が、あの方に惹かれるとは思っておりませんでしたわ」
「なっ、惹かれてなどいない!……言っておくが、俺は彼女と一番最初に踊った相手であり、彼女がその後に多数の男と踊るとは思ってもなかったんだぞ」
「あら、けれどわたくしというものがおりながら、彼女をお誘いしたのでしょう?」
「……社交辞令で言ったのが、まさか頷かれるとは思わないだろう……」
休憩を、と通されたテラスで紅茶を嗜なみながら、ダイア様、もといジーク様の言い訳を聞き流す。
はああ、と特大のため息と共に眉間を揉んでいる事から、まあ事実なのでしょうね。
それに、淑女に恥をかかせないよう、殿方が『断られるのを前提に』ダンスにお誘いするのはよくある事だ。女性もそれを承知で丁重に誘いを断ることで、己の貞淑さをアピールする。
夜会の定型美、とも言える光景だ。
けれど、それで慈悲を与えるほどわたくしは優しくなくてよ。
なにせわたくし、悪役令嬢ですもの。
つーんとそっぽを向いているわたくしに、流石に決まりが悪くなったのだろう。
バツの悪いような顔で目を逸らすジーク様は、顔だけみれば相変わらずとても美しい。その女性に強く言えないギャップもよろしくてよ。可愛らしいわ。
「…………………………悪かった」
「聞こえませんわ」
「……………………………………ああ、分かった!今度お前が欲しがっていた東国の書物を持ってくる!それで許せ!」
「あら、許せ?」
「…………許してください」
「ええ、許します」
にっこり笑ってようやく目を合わせれば、ジーク様の肩がガックリと落ちる。
あらやだ、アレク。その引いた目はやめてちょうだいな。元々はジーク様が悪いのだから。
ジーク様との付き合いは長い。それこそアレクよりも、だ。
公爵家である我がラピス家と、王家であるダイア家の繋がりは濃く長い。年の近い男女が産まれたとなれば、婚約を結ぶのも最早当然の流れだった。
故に、幼い頃からお互いの家を行き来していたわたくし達は、所謂旧知の仲というわけだ。
それこそ、誰もいない所ではこのような軽口を叩きあえる程には。
……あら、仲が悪いと思いまして?
いやねえ、わたくしがそんな馬鹿な真似をするはずないじゃない。
素直じゃなくて、照れ屋で、性根が真っ直ぐで。正義感が強いせいで、色々な葛藤を抱えてしまうジーク様。
昔から変わらない可愛らしい幼なじみに、くすくすと笑みが零れた。
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