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第二部
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「……まさか」
「けど、他に説明がつかないんだ。僕はレイモンドが仕込んだ毒を少し吸ったはずなのに何ともなかったし、魔法の威力が倍増どころじゃなく増えてる。何しろ君の『乙女の祝福』と手刺繍のハンカチをもらったんだから……だから、君のおかげだと僕は確信してる」
アレクはそう言いながらカミーユの頬にキスしてきた。
「役に立てていたのなら……それでいいけれど……」
「うん。あの後レイモンドとイアンに治癒魔法かけさせてもらったんだけど、二人ともバッチリ元気になったからね。普通の治癒魔法は傷を塞ぐくらいしかできないのに。第二妃が初めて僕に頭を下げてくれたよ」
アレクの帰りが遅かったのは、手続きだけではなく決闘で負けた二人の治療までしていたらしい。ことにレイモンドは目に毒が入って危険な状態だったのに助かったらしい。
「……二人とも大丈夫だったんだ。それはよかった」
過去の決闘では死者も出ていたと聞いていたので、カミーユはほっとした。アレクがたとえ重要な真剣勝負だとしても相手を殺さずに済んだ。
だって相手は血の繋がった人たちなのだから。身内で殺し合いなんて……。
カミーユは叔父に家族を殺された。そんなことをアレクにしてほしくなかった。
「ありがとう。カミーユ。君がいてくれたから……頑張れたんだ」
「……わたしこそ、アレク。無事に戻ってきてくれてありがとう」
カミーユはアレクの背中に手を回した。
「まあ、これからの方が大変なんだけどね。僕は王太子になれるとは思ってなかったから。君も大変だよ? 君の王妃教育の日程も決められてしまったし。……冒険者稼業もしばらくお休みかなあ……」
バルバラが運んできたお茶と焼き菓子を口にしながらアレクはぼやいていた。決闘の後で忙しすぎて何も食べていなかったらしい。
「王妃……?」
「そういうことになるね。鳥の亜人が次期国王というのも、その王妃が人族というのも前代未聞だ。まあ、僕なんてダイモスの歴史上最弱の国王になると今から言われてるだろうね。今から歴史に名前が残りそうで笑っちゃうけど」
アレクの隣に座ってお茶を飲んでいたカミーユはいきなり現実に引き戻された。
決闘のことで頭がいっぱいだったけれど、勝ち残ったということはアレクが王太子、つまりは次期国王に決定したということだ。そして、その妃になるからにはカミーユは将来の王妃という扱いになる。
わたしのような外の世界をほとんど知らない人間に務まるのだろうか。というより、性別を公表しないままでいいのだろうか。世継ぎの問題とか出てこないのだろうか。
「わたしなどが王妃でいいのだろうか?」
アレクの手が横から伸びてきて、カミーユの手を握った。
「うん。僕は君以外と結婚する気ないからね。それに将来的にはグラントリーを僕の養子にして、次の王太子に指名するから世継ぎなんて関係ないし。……近いうちに宣旨が出るだろうけど、王太子就任式の前に王都で結婚式を挙げることになる。王太子妃も同時に戴冠するために」
アレクは緑色の瞳をカミーユに向ける。真剣な顔つきをして言葉を続けた。
「おそらく一連の行事にはシーニュからの特使か王族が出席するだろう。ドミニク三世が君に何か仕掛けてくるかもしれない」
……確かに。
国を挙げての行事ならカミーユの祖国からも接触があるだろう。叔父からすれば憎んでいた兄の子が隣国の王妃になるのは複雑だろう。
それにわたしの出自のこともある。わたしは一体何者なのか知りたいとは思う。そのために叔父と事を構えないと……。
「……大丈夫だよ。二人なら何とかなるから。僕は最弱の王太子だろうけど、君は最強の王太子妃だからね?」
そう言ってアレクはカミーユに微笑みかけてくれた。
二人でなら……。
ああ、ほんとうにわたしに祝福の力があるのなら、アレクがいつまでも最弱だなどと言われないようにいくらでもその力を使うのに。
そう思いながらカミーユはアレクに頷きで答えた。
「けど、他に説明がつかないんだ。僕はレイモンドが仕込んだ毒を少し吸ったはずなのに何ともなかったし、魔法の威力が倍増どころじゃなく増えてる。何しろ君の『乙女の祝福』と手刺繍のハンカチをもらったんだから……だから、君のおかげだと僕は確信してる」
アレクはそう言いながらカミーユの頬にキスしてきた。
「役に立てていたのなら……それでいいけれど……」
「うん。あの後レイモンドとイアンに治癒魔法かけさせてもらったんだけど、二人ともバッチリ元気になったからね。普通の治癒魔法は傷を塞ぐくらいしかできないのに。第二妃が初めて僕に頭を下げてくれたよ」
アレクの帰りが遅かったのは、手続きだけではなく決闘で負けた二人の治療までしていたらしい。ことにレイモンドは目に毒が入って危険な状態だったのに助かったらしい。
「……二人とも大丈夫だったんだ。それはよかった」
過去の決闘では死者も出ていたと聞いていたので、カミーユはほっとした。アレクがたとえ重要な真剣勝負だとしても相手を殺さずに済んだ。
だって相手は血の繋がった人たちなのだから。身内で殺し合いなんて……。
カミーユは叔父に家族を殺された。そんなことをアレクにしてほしくなかった。
「ありがとう。カミーユ。君がいてくれたから……頑張れたんだ」
「……わたしこそ、アレク。無事に戻ってきてくれてありがとう」
カミーユはアレクの背中に手を回した。
「まあ、これからの方が大変なんだけどね。僕は王太子になれるとは思ってなかったから。君も大変だよ? 君の王妃教育の日程も決められてしまったし。……冒険者稼業もしばらくお休みかなあ……」
バルバラが運んできたお茶と焼き菓子を口にしながらアレクはぼやいていた。決闘の後で忙しすぎて何も食べていなかったらしい。
「王妃……?」
「そういうことになるね。鳥の亜人が次期国王というのも、その王妃が人族というのも前代未聞だ。まあ、僕なんてダイモスの歴史上最弱の国王になると今から言われてるだろうね。今から歴史に名前が残りそうで笑っちゃうけど」
アレクの隣に座ってお茶を飲んでいたカミーユはいきなり現実に引き戻された。
決闘のことで頭がいっぱいだったけれど、勝ち残ったということはアレクが王太子、つまりは次期国王に決定したということだ。そして、その妃になるからにはカミーユは将来の王妃という扱いになる。
わたしのような外の世界をほとんど知らない人間に務まるのだろうか。というより、性別を公表しないままでいいのだろうか。世継ぎの問題とか出てこないのだろうか。
「わたしなどが王妃でいいのだろうか?」
アレクの手が横から伸びてきて、カミーユの手を握った。
「うん。僕は君以外と結婚する気ないからね。それに将来的にはグラントリーを僕の養子にして、次の王太子に指名するから世継ぎなんて関係ないし。……近いうちに宣旨が出るだろうけど、王太子就任式の前に王都で結婚式を挙げることになる。王太子妃も同時に戴冠するために」
アレクは緑色の瞳をカミーユに向ける。真剣な顔つきをして言葉を続けた。
「おそらく一連の行事にはシーニュからの特使か王族が出席するだろう。ドミニク三世が君に何か仕掛けてくるかもしれない」
……確かに。
国を挙げての行事ならカミーユの祖国からも接触があるだろう。叔父からすれば憎んでいた兄の子が隣国の王妃になるのは複雑だろう。
それにわたしの出自のこともある。わたしは一体何者なのか知りたいとは思う。そのために叔父と事を構えないと……。
「……大丈夫だよ。二人なら何とかなるから。僕は最弱の王太子だろうけど、君は最強の王太子妃だからね?」
そう言ってアレクはカミーユに微笑みかけてくれた。
二人でなら……。
ああ、ほんとうにわたしに祝福の力があるのなら、アレクがいつまでも最弱だなどと言われないようにいくらでもその力を使うのに。
そう思いながらカミーユはアレクに頷きで答えた。
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