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病院の扉は、運と根性が幾重にも重なり、ゆっくりと、開く③
しおりを挟む《2022年4月25日 王子、小2、7歳》
《病院までの道のり 道半ば編》
市の施設での、2回のカウンセリング後、大宇宙に放り出された王子とママリは、少しの間、フワフワと空中をさまよっていました。
「チャタ君に合う、療育のクラスはない。」
と、言われた以上、療育のクラスに入ることは、できないのでしょう。
そして、
「発達障害ではない。」
と、断言された以上、病院に行くのも、おかしいのでしょう。
じゃあ、
「発達障害等に理解のある、私塾か、何かに、連れて行ったらいいのだろうか?」
ママリは、悩みました。
『今、王子に必要なものは、いったい、なんなのか?』
分かりませんでした。
ママリには、分からなかったんです。
でも、分からなかったからこそ、分かりました。
ママリに必要なのは、『知識』でした。
たった2回、たった2時間、のカウンセリングで、未知の情報が、↑↑でるわ、でるわ↑↑。
笑えるくらい、ママリは、無知だったのです。
数星の王子のサポートが、無知な人間侍女長ママリに、勤まるとは、到底、思えませんでした。
ママリは、決めました。
『行こう、病院に♬』
だって、何をどう考えても、専門家に診てもらい、高度な知識を分けてもらった方が、いいはずです。
冒険…。
時には、攻略サイトの活用が、有効なはずです☆★
因みに、この時、数人にこの話しをしましたが、反応は、だいたい、こんな感じでした。
「チャタ君は、大丈夫だよ。ママリが、心配しすぎ。」
これは、根拠のない、励ましですね。
地味に、効きます。
ジワジワと、ママリを追いつめる、対応ですね。
王子は、発達障害がありそうな子、には、一見、見えません。
実際、外では、子供相手だと、目が合わない、会話が苦手等がありましたが、大人相手だと、目は合わないけど、慣れればかなり話していました。
それにまだ、5歳の年中児だったため、王子の行動は、許容範囲内でした。
王子レベルの子共は、幼稚園に、他にもいました。
そのうち、できるようになるよ。
というのが、ママリを含めた、まわりの人間達の、見解だったのです。
でも、そうではないことに、気がついたママリは、いや、気づかされたママリは、この、「普通の人間の感覚」から、抜け出す必要がありました。
ママリは、意外と、あっさり、抜けました。
この少し前に、幼稚園で、王子が叩かれてるの、叩かれてないの騒動が勃発して、ママリは、幼稚園信者の他のママ達と、距離を、置き始めていました。
ママリは、そのまま、幼稚園では、透明人間になりました。
他には、こんな感じもありました。
「え?病院?病院に連れて行くの?しかも、精神科?」
精神科への偏見は、かなり、根強く、根付いています。
ママリに、一言、いや、二言、言わせてください。
いや、叫ばせてください。
『精神科は、この世の終わりでは、ありませんよぉぉぉ。』
『発達障害の子も、幸せに、なれますよぉぉ。』
《市の施設への電話》
病院に、王子を連れて行くことを決めたママリは、早速、王子が、カウンセリングを受けた、市の施設の担当者に、電話をしました。
病院で、もっと具体的な検査を、王子に受けさせたい、とママリが相談すると、この方の反応は、
「え??」
でしたね。
「病院に行く必要は、ないと、言われたんですよね??」
「障害者認定が、希望ですか??」
と、聞かれました。
この頃は、なぜ、突然、「障害者認定」が出てきたのか、分かりませんでした。
これは、認定がおりると、税の補助や、施設での優遇等が、あるからなんですね。
この時は、
「チャタをサポートするために、もっと、知識が欲しい。」
と、ママリは、粘りました。
そして、病院 (精神科) への紹介状は、医師に書いてもらう必要があるので、市の施設に来る小児科医への面談の予約を、取り付けたのです。
《小児科医の診断》(市の施設)
この日の担当医師は、近くにある大病院の、ベテラン小児科医でした。
王子は、市の担当者と、おもちゃで遊んでいて、医師は、ママリから話しを聞き、王子には、一切、声をかけませんでした。
ママリは、王子が、人間の表情が分からないこと、対人関係が苦手なこと、でも数字が好きで、3歳で時計を読んだこと等を、話しました。
それに対して、言われたのが、おおよそ、こんな感じです。
「数字は、大したことではない。天才っていうのは、そんなもんじゃない。数字をやらせるよりも、もっと、社交性を育てるような、育児をしなさい。」
ママリ、言葉を、失いました。
メッタ刺しです。
メッタメタの、メッタメタ。
血の、海です。
この医師は、王子が、人間の表情が分からないのは、家族が顔を合わせていないからで、話さないのは、母親が言葉を教えていないからだと、判断したのです。
大した才能もない王子に、数字をむりやりやらせているから、社交性が育たないのだと、考えたんですね。
ショックでした。
ショックでしたね…。
ママリを全否定して、『王子の足かせは、ママリだ』と、大病院の、大ベテラン小児科医が、断言したのです。
王子が、城壁を越えられないのは、母親が、ママリだからだと。
ママリが、あまりの衝撃で固まっていると、医師は延々1時間、天才っていうのはこういうもんだ、あの子は全然違うでしょ、もっと現実を見て育児をしなさい、と、ママリに促してきました。
そして最後に、「病院に行く必要はないけど、それでも行くのか?」と、聞かれました。
「先生達は、忙しいんだよ。」等、言われたのを、はっきりと、覚えています。
ママリは、心を無にして、
『連れて行く。』
と、答えました。
すると、こんなようなことを、言われました。
「仕方がないから、紹介状は書くけど、発達障害とかではないから、そうは書かない。お母さんが、すごく心配性だから、って書いておくよ。」
もう、なんでもいいよ。
ママリは精魂尽き果てて、王子と手をつないで、とぼとぼと帰ったのを、覚えています。
要するに、
この医師も、カウンセラーも、市の担当者も、王子が、人間の表情が読めず、社交が苦手なのは、発達障害の傾向もあるけど、それ以前に、ママリが、数字ばかりをやらせていて、まともな育児をしていないからだ、と考えていたのですね。
だから、発達障害ではないし、病院にも行かなくていい、ママリが変わって、王子と向き合って話せば、表情も分かるようになるし、一般常識等も理解して、生きていける、と、遠回しに、言っていたのです。
おそらく。
なるほど。
なるほど、そうですか。
またしても、ママリは、悩みました。
この時、多分、ママリは、人生で一番、悩んだと思います。
全て、ママリが、悪いのか?
王子は、表情が豊かでよく笑い、ママリの顔を見て、機嫌をうかがうことができる、王子でした。
理解力があり、質疑応答も、しっかりしていました。
ママリの知っている王子は、表情が分からない、話せない、分かっていない、そんなことは、1ミリも、ありませんでした。
他の人間になんと言われようと、ママリの今までの育児は、否定されるような内容ではなかったと、思いました。
ママリと王子は、向き合って、笑いあってきたのです。
でも、同時に、肯定されるような内容でもなかったのだと、気づきました。
もっと、頑張らなくては。
大混乱のブラックホールの中で、でも、やっぱり、ママリは、王子と話しもしなかった小児科医の言葉に、納得がいきませんでした。
カウンセラーの見解が、王子に本当に当てはまるのか、確信が、持てませんでした。
確かに、王子は、天才ではありません。
一瞬で物事を理解する力も、何千ケタも暗記する力も、ありません。
東大に入る力も、世界的なハッカーになれる力も、おそらく、ありません。
王子は、ただ、数字と共に生きている。
そんな子です。
王子にとって、全てが数字なわけではありません。
本も大好きだし、学校も楽しんでいます。
友達も数人います。
外遊びも大好きで、英会話も好きです。
でも、ほとんどの場合で、視点が、独特です。
例えば、英会話のレッスン (講師はママリ) で、クリスマスカードを描くと、みんなが家族とカラフルな絵を描いている中、王子だけ、絵を鉛筆で描いた後に、「ママ ◎才」等の、謎の補足を、書いたりします。
いや、ママリの年齢、ここで暴露しなくていいだろ。
と、つっこみつつも、まあ、王子らしくて良いなと、思うわけです。
他の子達に、個性がないわけではありません。
みんな、それぞれ、他の方法で、色々と、出ています。
もしかしたら、カウンセラーの言う通り、この王子の書込みは、他の人間からすると脈絡がなく、理解ができないので、場合によっては、消すように、指導されるのかもしれません。
でも、本当に、そもそも、消さなければいけないような、特徴なのでしょうか?
なんにせよ、算数好きな子が、「算数の問題を、解くのが好き。」と言うのと、王子は、違います。
その子達にとって、算数は、やるか、やらないか、選べるものです。
でも、王子にとって数字は、『自然と愛でちゃう』、かわいい子供のような存在です。
これが、発達障害のこだわりなのか、IQが高いからの数字好きなのかは、分かりません。
とにかく、王子に、ママリが、むりやり、数字をやらせているなんて、ありえませんでした。
またまた、ブラックホールへと引きづりこまれたママリですが、大事なことが、見えてきました。
ママリが、王子のことで、混乱しているなら、
『多分、王子も、やっぱり、困っているのでは?』
そう、思いました。
もう、よく分からないけど、王子が困っていて、ママリに、差しのべる手がないなら、他の人間の手を、借りるしかない。
やっぱり、病院に、行こう!
もし、病院に行って、「なんで来たんだ?」と言われたら、謝って、帰ればいいや。
ママリは、そう、思いました。
《今回のガッツ 一覧》
ガッツ 1
ママリが、王子を病院に連れて行くことを決めた(2回) → 「病院に行く」という選択肢が発生したこの時に、行っていなければ、多分、その後、病院に辿り着くまで、あと何年かかかったと思われる
ガッツ 2
ママリが、周りの意見を、ほぼ無視した → 周りの意見を聞いていたら、病院には、辿りつけなかった
ガッツ 3
ママリが、市の担当を説得した → 市の担当の意見を聞いていたら、病院には、辿りつけなかった
ガッツ 4
ママリが、小児科医に屈しなかった → 小児科医の意見を聞いていたら、病院には、辿りつけなかった
《ギフテッド? 発達障害のこだわり? プチ情報》
その傾向がある子に、やらせるは、表現方法として、間違っています。
そういう子は、勝手に、やってるんだよ、ずっと。
何時間でも、ブツブツ言いながら、数年分のカレンダーを並べて眺めて萌えて、写真を600枚数えて、延々と、数字書いてんの。
こんなん、親がやらせてるわけあるか、ボケ。
失礼。
王子家では、王子に、数字をやらせてはいませんが、王子が、数字で何かをやっていれば、応援しています。
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