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親心

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「ありがとうございます、お義父様。断られたらどうしようかと思いましたわ」

「う、うむ」
オネェ口調のオスカーに戸惑う。

いつもの化粧をするでもなく、派手な服を着るでもなく、普通の衣装でこの口調はかなりの違和感だ。

見た目だけはイケメンだし。

「お兄様にも伝えないといけませんねぇ」
三人で夕食を取りつつ、メィリィは話した。

時間が遅くなったのと、メィリィの兄である次期ヘプバーン伯爵にも伝えるため、オスカーも夕食に誘われたのだ。

メィリィと長く一緒に居たいのもあり、オスカーは遠慮なくご馳走になる。

「そうね、遅くなるだろうからゆっくり待たせて貰うわ。今王城は忙しいだろうから」

「何かあったのですかぁ?」
オスカーの言葉にメィリィは首を傾げた。

「今度パルス国の国王が外交で来るらしい。輸入品や関税の見直し、新たな農作物についての話だとか。私はメィリィと話をするため早めに帰ってきたが」
ダラスはこれから仕事が増えることや帰りが遅くなるのを伝える。

「だからアタシも今日ここに来たのよ。早く決めとかないと暫く来れないかもしれないからね」
オスカーは食べながら器用に話す。

「パルス国の国王様の護衛をすることになったのよ、だから当分休みなし。悲しいわぁ」

「それって」
会えなくなるのかと寂しくなる。

「だから依頼よ」
オスカーがピッと人差し指を立てる。

「パルス国の国王様を歓迎するパーティがひと月後にあるわ。その時に合わせてアタシの騎士服とあなたのドレスを作って欲しいのよ。デザインを合わせたものがいいわね、アタシとあなたが婚約した証で、皆に見せたいのよ。
デザインだけでもいいの、それさえ貰えればこちらで作るから」

「婚約の証のドレスですかぁ……」

「何ならアタシの屋敷に来てもらってもいいのよ、そのほうが好都合だし」

「お待ちをオスカー殿、いくらなんでも婚約を決めたばかりで、そんな急には……」
慌ててダラスは止める。

「うちには空き部屋もあるし、デザイン確認でメィリィがいたら仕上がりも早いわ。何より一緒にいられたら嬉しいもの。共同経営の話もしたいしね」

「しかし、まだ早いのでは…」
それでも尚、娘が離れるのは気が引ける。

嫁いでいてもおかしくない年齢だし、早めに婚姻させようとは考えていた。

しかしこんな急に手を離れるとは、やはり寂しい。

「お父様ぁ、私ももういい年ですわ。このまま家にいたのではぁ、お兄様の婚姻にも響きますしぃ、環境を変えれば新たなデザインも生まれる気がしますのぉ」
娘のひとり立ち宣言に、思わずダラスは立ち上がる。

「こ、この家に、いたくないのか?」

「というよりはぁ、お父様前からおっしゃってましたよねぇ?幸せな結婚をしてもらいたいって、色んな釣書を持ってきましたしぃ、良いタイミングだと思いますけどぉ?」
メィリィに悪気はない。

常に父に言われていた事だ。

嫁ぐ事が幸せだと、いずれはこの家を出るのだと。

「ではアタシの屋敷にいらっしゃいね、準備しとくから」

「よろしくお願いしますぅ」
沈んだダラスと違い、メィリィはニコニコだ。

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