オネェ騎士はドレスがお好き

しろねこ。

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兄への報告

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「帰ってきて早々一体何ですか?」
メィリィの兄、イヴァンはくたびれて帰ってきたところ更にくたびれるような雰囲気を感じた。

「お兄様ぁお帰りなさい」

「イヴァン殿、お待ちしておりました」

「お帰り、イヴァン……」
三者三様の声と表情。


いつも通りおっとりしてる妹メィリィと、初めて会う知らないイケメン騎士、そして何故か気力が尽きてる父ダラス。

疲れてる中面倒くさいのは嫌だったが、客が来てるのだから挨拶せねばなるまい。

「父への客人でしょうか? 僕はイヴァン=ヘプバーンです」

「知ってるさ」
イケメン騎士は、ニヤニヤとしていた。

イヴァンは、見たことがあるようなないようなその人物に、首を傾げる。

「失礼ですが、どこかでお会いしたでしょうか?」

「イヴァン殿、気づかれないとは少し寂しいものですよ。俺です、オスカーです」
イヴァンは驚いた、自分の知る人物とはまるで違う。

特に髪と顔。

「あの、オスカー? 七変化のオスカーか」
「そうそう、変身大好きオスカーよ。今日は真面目なご挨拶に来たから黒髪よ、新鮮でしょ?いつも同じじゃつまらないし、今度お言葉通り七色に染めようかしら」
イヴァンは文官だが、オスカーとは年が近いため、知り合いとなった。

オスカーを避けたいイヴァンの先輩が、オスカーへの書類をイヴァンに押し付けるようになったので、自然と話す機会が増え、仲良くなった。

「今日は何だ、王太子妃様のドレスの件か? その件はメィリィが元気になってからな」
思い当たるものとして最近始まった交流について口に出す。

メィリィの名が売れ出し、イヴァンを通してドレスについて同僚から聞かれることも増えたからだ。

恋人や婚約者への贈答用にと。

オスカーがそもそもの始まりだから、てっきりそういう話しだと思ったのに。

「違うわよ、メィリィとの婚約の挨拶で来たの」

「婚約だと?!」
初耳である。

いや、ダラスがメィリィの結婚相手を探していたのは知っていた。

イヴァンの方でも知り合いに声を掛けたりしていた矢先だ。

いつの間にそんな事になったのかと、父を見る。

「メィリィが自ら選んだ……詳しくは二人に聞け」
ダラスは既に疲れているようだ。

ここに至るまで色々な話し合いをしたのだろう。

「お腹が空いたでしょう? 食事しながらお話しましょ、お義兄様」

「やめろ、お義兄様なんて呼ぶな」
オスカーのその言葉に嫌悪を包み隠さず吐き捨てる。

実際のオスカーの仕事ぶりはわからないが、人を食ったような話し方をするこの男との婚姻は、さすがに妹が騙されてるのではないかと心配になった。

ともあれ食事が出来るのは有り難い。

無作法ではあるが気心のしれたオスカーだ。

冷静さを保つためにもしっかり食事をしようと、好意に甘えることにした。







「はっ?」
話される内容に驚くが、食事の手は止めない。

「随分とまぁ、性急だなぁ」
婚約から出資から共同経営から同居まで、随分と駆け足な話だ。

「あらぁ性急にもなるわよ、会えなくなるの嫌だもの。あなただって婚約者とは常に会いたいでしょ?」

「それはまぁ、そうだが……」
政略結婚ではあるものの、イヴァンは相手を嫌いじゃない。

「妹のひとり立ちが心配で、なかなか進められなかったのでしょ? アタシがメィリィちゃんの事責任持って幸せにするから、しっかり結婚の話を進めなさい」

「だが……任せる相手がお前とは」
まだ納得していない表情だ。

「オスカー様は良い人ですよぉ」

「メィリィにとって良くても、周りから見たら違うんだぞ?」
周囲の評判、オスカーの人となり。

王城ではまず言動で破天荒と見做されている。

どういった経緯であの冷徹で無表情な王太子に取り入ったかと言われるくらい、温度差が違うのだ。

そもそも普通の貴族ならこのような言動はしない。

メィリィも後ろ指を指されないか、心配になってしまう。

「でもぉ、エリック殿下が婚約の証人になってくれるそうですよぉ?」

「王太子殿下が?!」
驚きの事実だ。

いくら王太子の護衛騎士だからといって、オスカーのために王太子がこんな事まで手を出すのか。

「そうなの。エリック様はアタシの恋を、応援してくれてるのよ。兄のあなたも素直に応援しなさいな」

「えぇ~……」
イヴァンは釈然としない。

「大丈夫ですよぉ、二人で頑張りますわぁ。それとファラン様のドレスですけどど、良ければ私がデザインしますとお伝え下さいぃ、もちろんもう決めてらしたら、無理にとは言いませんのでぇ」
ファランはイヴァンの婚約者だ。

同じ文官として一緒の職場で働いている。

「ありがとう、伝えておくよ。彼女はそう云うのに疎いから、きっと喜んでくれるさ」
ファランは女性ながら文官になるため、勉学に励んできたと話していた。

それ故常々ファッションに自信がないと言っていたので、提案は喜んで受け入れてくれそうだ。

「ぜひお願いしますぅ。その時はぁ誠心誠意頑張りますよぉ」

「じゃあ花婿衣装はアタシが考えるわ、お義兄様」

「お義兄様はやめろ!」
賑やかな会話をしながら、ヘプバーン家の夜は更けていった。


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