目覚めたら死んでから10年経っていた、まずは国に帰ろう

しろねこ。

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国王との対面

けたたましい音を立て、窓とバルコニーを破壊する。

それを確認し、氷の矢を消した。

少年は力いっぱい自分の頬を殴りつけると、血の味が口内に広がった。

暫くそこで倒れていると、誰かが駆けつけてくる。

「大丈夫か?!」
「賊が、あちらへ……」
力を抜いた手で茂みの方を指差す。

昼間の掃除の際、人が通ったように細工していた。

少年はそこで気を失った演技をする。









「大丈夫か!」
子爵がわざわざ少年のところに来た。

腫れ上がった頰を見て、子爵は激怒した。

「このような傷を負うとは……賊はまだ見つからんのか!!」
部屋は荒らされ、大事な書類が盗まれた。

子爵は気が気でない。

「申し訳ありません、足取りは追っているのですが」
国の憲兵などには相談出来ない、盗まれたのは自分の進退を決める重要書類だ。

「金は出す、何としても捕まえろ」
ギリリと歯ぎしりをした。

少年の手引きを疑い、念の為身体検査をしたが、何も持っていなかった。

下男である少年は音を聞きつけ、駆けつけただけだと話していたが、賊を見たのは少年だけだ。

「特徴は、どのような者だった?」

「皆様にも伝えたのですが、黒髪黒目の背の高い男でした。魔法が使えるようで、男の周りには凄い風が吹いてましたね」

「風魔法の使い手か……厄介だな」
風魔法は空を飛べたり、超スピードでの移動が可能となる魔法だ。

「お前はゆっくりと休め。早くその顔を治すのだぞ」
子爵は少年の金の髪に触れる。

少年は鳥肌が体中に現れるのを感じていた。









腫れが落ち着いてきた頃、ようやく人買いが来た。

「お久、元気そう……じゃないね。顔大丈夫か?」
まだ少しだけ頬に青みと黄色みが残っている。

「触ると痛いですが、大丈夫です。賊にやられまして」
フフッと、笑うと少年は人買いにそっと書類を渡す。

「来るのが遅いですよ、もう少しで傷が治ってしまうところだった」

「治ると困るかい? 綺麗な顔なんだから早く治った方がいいだろ」
すぐさま人買いは書類を仕舞う。

「俺の貞操の危機です。急いで下さいね」
手籠にされてはたまらない。

「了解。なるべく急ぐけど、頑張るんだよ」

「それともう一つお願いしなのですが、もしこの書類を有効活用される方が、伯爵位以上の方ならば、国王陛下に伝言を頼みたいのです」

「国王陛下に伝言?!」
人買いはぎょっとしていた。

「……がいる、と。その一言で結構です」
少年は生前の自分の名を伝えた。

国王がそれで気づいてくれればいい。

あまり深い内情を人買い達には言えないから、この一言だけで伝わればラッキーだ。

会話はそれで終わった。

人買いはゆっくりと屋敷に向かう、と思ったら足を止めた。

「君、今どこからこれ出した?」
懐の書類を指差す。

「どこからって、普通に上着の中からですが」

「いや、収納魔法使ったでしょうが。君平民なのに、魔法使えるの?」
収納魔法は生活魔法の一つで、魔法が使えるものは大抵習う。

お金を出せば習えるくらい当たり前のものだが、平民である少年が通常使えるわけがない。

「気の所為です。仕事があるので失礼します」
有無を言わさず少年は掃除に戻った。









今日は子爵の休みの日。

浮かれる子爵と反対に、少年はどんよりしていた。

遂に今朝、声が掛かった。

(間に合わなかったら、屋敷を氷漬けにして、逃げよう)
人買いの到着をひたすら待った。

ようやく憲兵が来てくれた、人身売買の事実確認をしに。

詳しく話を聞くために子爵が連れて行かれる。

残された使用人達は唖然とするばかりだ。

ここから出ていった者は、名目として別な働き口を与えると子爵から説明されていたが、まさか売られていたとは思わないだろう。

野次馬に混じり、人買いが見える。

憲兵達の目を掻い潜り少年は外へと出た。

「間に合ったね、貞操は無事?」

「お陰様で。ただこれから事情聴取です、しばらくはここで軟禁状態ですよ」

「そうか、頑張ってね。俺とは暫く会えなくなるけど、元気でね」

「ありがとうございました。ちなみに言伝はどうなりました?」

「一応伝えたらしいけど、どうなるかはわからないなぁ」

「良いです。伝わってなければ別な手を考えるだけです。では、またどこかで」

「あっ、その前に」
人買いから皮袋を差し出される。

少年はとりあえず受け取るが、ずっしりと重い。

「こちらは?」

「君の身請け金だよ、いつか渡そうと思ってた。これから必要になるだろうし、魔法でしまっときな」
少年は服の中に入れる素振りをしながら、収納魔法を展開して仕舞う。

「ありがとうございます」

「縁があればまたどこかで」
あっという間に行ってしまったので、少年もすぐ屋敷へと戻る。

皆が順番に話を聞かれていた。

しばらく待っていたが、少年は最後のようだ。

すっかり夜も更け、ようやく呼ばれる。








「本当に、お前か?」
驚いているは紫混じりの黒髪と紫眼を持った青年だ。

「すぐ来るとは思わなかった。老けたなルアネド……」
少年の前にいたのはこの国の王だ。


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