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家族との絆
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エリックの騒動も落ち着いてきて、再びアドガルムは静けさを取り戻していった。
宰相のカイルはエリックには手厳しいものの、エリックも負けじと言い返すので、周りも慣れてきている。
リオンも自分の領地経営をしつつ、時々エリックの手伝いをしに顔を出しにきた。
朗らかな性格で人気のあるリオンだが、王太子代理にはもう推薦されない。
次代の王太子はアイオスだと決定しているからだ。
その補佐をするためフィオナもリアムも更に勉学を頑張る、レナンのお腹に新たな弟もいるため、より一層張り切っているのだ。
「名前も決まってるし、次も男の子だ。楽しみだな」
優しい眼差しをしたエリックがレナンを見つめ、慈しむようにそっと抱きしめる。
大きくなり始めたお腹をさすりながら、レナンはエリックを見上げた。
「子ども達も皆受け入れてくれるかしら」
少しだけ不安そうなレナンの頬にキスをする。
「大丈夫、皆楽しみに待っている」
特にリアムなど自分に弟ができるなんてと、一番喜び、張り切っていた。
「俺が絶対に守ります!」
今からレナンの負担を減らそうと子育てについて周りに聞いたり、本を読んだり玩具を買ったりと、楽しみにしているのだ。
とろんとレナンの瞼が下がってきていた、妊娠してから頻繁に眠気が襲ってくるようだ。
「お休み、レナン。起きたらいつでも呼んでくれ。すぐに来るからな」
ベッドまで一緒に行き、手を繋ぐ。
「いつもありがとね、お休みなさい」
抗えない眠気にレナンは目を瞑る。
寝付くまで手を握ってあげた後、静かに部屋を出た。
外で待つキュアにレナンの事を任せて、ニコラと共にある場所へ向かう。
「ログが経過を報告しに来ました」
「わかった、すぐに行く」
エリックは応接室へと向かう。
「待たせたなログ、報告を聞きに来た」
「いや、殆ど待ってないから大丈夫だけど。早く報告させてくれ」
ログと呼ばれた男はソワソワとしていて、落ち着きがない。
「大丈夫。俺の言う事を聞いてくれれば命の保証はする。大事なビジネスパートナーだからな」
「まさかそんな言葉聞くとは思ってなかったよ。いや、ただの少年じゃないと思ったけど、まさか王太子とは……」
ログはかつてエリックを売買した人買いだ。
ログという名も偽名の一つだが、仕事さえしてくれれば名前などどうでもいい。
「言われた通り、あんたの母親だった女はしっかり弔い直したし、彼女を虐げた親族たちもまぁまぁハードなところに売り払った。詳細はこちらに」
ログからの報告書を受け取り、目を通す。
「良かろう。結果としては不満はない。あとは子爵達のところのその後については、どうなった?」
かつてエリックを買った男について尋ねる。
「いや、知らなかったんだが、どうも子爵は獄中で無惨に殺されたらしい。死因は失血死らしいが、数十か所も刃物で刺され、でも致命傷は避けられていたから長く苦しんだだろうって」
「そうか」
エリックの後ろに控えるニコラは何も答えない。
「それで屋敷にいた者たちはどうなった。あの男娼達は?」
「別な就職先が見つかったものも中にはいたけど……あの子たちは残念ながら無理そうだったな」
ログの言葉の歯切れが悪い。
あまりいい就職策が見つからなかったようだ。
「ここで雇う気はないが、ログのところで鍛えてはどうだ?」
ログは露骨に顔を顰めた。
「少しだけ世話になったよしみだ。情報屋として働けるようログが鍛えてくれ、当分の金は工面するから」
「いやいや、そんな無理を言わないでくれよ」
「ログのような情報屋がもっと欲しい。市井の事をもっと知りたいからな、なぁステファン」
呼んだ名は別の名だ。
「二コラは忙しいのでな。調べ物をしてもらえる情報屋がいっぱいだと俺が助かる。人買いの仕事でお前は顔も広いし、情報も早くて新鮮だ。俺を助けようとした情もあるし、このまま人買いとしていつか首を斬るには惜しい人材だと思っているんだ。なぁ、ゲイリー」
ログは返事も出来ず、表情を引きつらせている。
「いい給料は渡すから、何とか引き受けてはくれまいか?なぁ、ジェフよ」
「もう勘弁してください。わかりましたから」
ログの数々の偽名を出され、ログは頭を抱えていた。
「どんな情報網だ。そこの従者さんはどうやってこんな短期間で調べた?」
唸るような声を出されたが、二コラは特に答えなかった。
その代わりにログに書類を渡す。
「何だこれ?」
「雇用契約書だよ、納得したらサインしてくれ。質問があれば遠慮なく話せ」
ログはその書類の厚さにげんなりとしてしまった。
「多すぎでしょ?」
「お前は俺に忠誠を誓う者ではないからな、細かいとこまで書かせてもらった。何かあったら困るのでな」
にこりともせず、見るように促され、ログは渋々と書類を見始めた。
「レナンが起きたら俺はいかねばならぬ、早くしろ」
そんな注文さえつけてくる始末だ。
(とんでもない男と関わってしまったな)
ほんの数か月前のやり取りを後悔しつつ、ログは急ぎ書類に目を通していった。
宰相のカイルはエリックには手厳しいものの、エリックも負けじと言い返すので、周りも慣れてきている。
リオンも自分の領地経営をしつつ、時々エリックの手伝いをしに顔を出しにきた。
朗らかな性格で人気のあるリオンだが、王太子代理にはもう推薦されない。
次代の王太子はアイオスだと決定しているからだ。
その補佐をするためフィオナもリアムも更に勉学を頑張る、レナンのお腹に新たな弟もいるため、より一層張り切っているのだ。
「名前も決まってるし、次も男の子だ。楽しみだな」
優しい眼差しをしたエリックがレナンを見つめ、慈しむようにそっと抱きしめる。
大きくなり始めたお腹をさすりながら、レナンはエリックを見上げた。
「子ども達も皆受け入れてくれるかしら」
少しだけ不安そうなレナンの頬にキスをする。
「大丈夫、皆楽しみに待っている」
特にリアムなど自分に弟ができるなんてと、一番喜び、張り切っていた。
「俺が絶対に守ります!」
今からレナンの負担を減らそうと子育てについて周りに聞いたり、本を読んだり玩具を買ったりと、楽しみにしているのだ。
とろんとレナンの瞼が下がってきていた、妊娠してから頻繁に眠気が襲ってくるようだ。
「お休み、レナン。起きたらいつでも呼んでくれ。すぐに来るからな」
ベッドまで一緒に行き、手を繋ぐ。
「いつもありがとね、お休みなさい」
抗えない眠気にレナンは目を瞑る。
寝付くまで手を握ってあげた後、静かに部屋を出た。
外で待つキュアにレナンの事を任せて、ニコラと共にある場所へ向かう。
「ログが経過を報告しに来ました」
「わかった、すぐに行く」
エリックは応接室へと向かう。
「待たせたなログ、報告を聞きに来た」
「いや、殆ど待ってないから大丈夫だけど。早く報告させてくれ」
ログと呼ばれた男はソワソワとしていて、落ち着きがない。
「大丈夫。俺の言う事を聞いてくれれば命の保証はする。大事なビジネスパートナーだからな」
「まさかそんな言葉聞くとは思ってなかったよ。いや、ただの少年じゃないと思ったけど、まさか王太子とは……」
ログはかつてエリックを売買した人買いだ。
ログという名も偽名の一つだが、仕事さえしてくれれば名前などどうでもいい。
「言われた通り、あんたの母親だった女はしっかり弔い直したし、彼女を虐げた親族たちもまぁまぁハードなところに売り払った。詳細はこちらに」
ログからの報告書を受け取り、目を通す。
「良かろう。結果としては不満はない。あとは子爵達のところのその後については、どうなった?」
かつてエリックを買った男について尋ねる。
「いや、知らなかったんだが、どうも子爵は獄中で無惨に殺されたらしい。死因は失血死らしいが、数十か所も刃物で刺され、でも致命傷は避けられていたから長く苦しんだだろうって」
「そうか」
エリックの後ろに控えるニコラは何も答えない。
「それで屋敷にいた者たちはどうなった。あの男娼達は?」
「別な就職先が見つかったものも中にはいたけど……あの子たちは残念ながら無理そうだったな」
ログの言葉の歯切れが悪い。
あまりいい就職策が見つからなかったようだ。
「ここで雇う気はないが、ログのところで鍛えてはどうだ?」
ログは露骨に顔を顰めた。
「少しだけ世話になったよしみだ。情報屋として働けるようログが鍛えてくれ、当分の金は工面するから」
「いやいや、そんな無理を言わないでくれよ」
「ログのような情報屋がもっと欲しい。市井の事をもっと知りたいからな、なぁステファン」
呼んだ名は別の名だ。
「二コラは忙しいのでな。調べ物をしてもらえる情報屋がいっぱいだと俺が助かる。人買いの仕事でお前は顔も広いし、情報も早くて新鮮だ。俺を助けようとした情もあるし、このまま人買いとしていつか首を斬るには惜しい人材だと思っているんだ。なぁ、ゲイリー」
ログは返事も出来ず、表情を引きつらせている。
「いい給料は渡すから、何とか引き受けてはくれまいか?なぁ、ジェフよ」
「もう勘弁してください。わかりましたから」
ログの数々の偽名を出され、ログは頭を抱えていた。
「どんな情報網だ。そこの従者さんはどうやってこんな短期間で調べた?」
唸るような声を出されたが、二コラは特に答えなかった。
その代わりにログに書類を渡す。
「何だこれ?」
「雇用契約書だよ、納得したらサインしてくれ。質問があれば遠慮なく話せ」
ログはその書類の厚さにげんなりとしてしまった。
「多すぎでしょ?」
「お前は俺に忠誠を誓う者ではないからな、細かいとこまで書かせてもらった。何かあったら困るのでな」
にこりともせず、見るように促され、ログは渋々と書類を見始めた。
「レナンが起きたら俺はいかねばならぬ、早くしろ」
そんな注文さえつけてくる始末だ。
(とんでもない男と関わってしまったな)
ほんの数か月前のやり取りを後悔しつつ、ログは急ぎ書類に目を通していった。
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