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貴族
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「私を知っていたのですか?」
もう8年も経つし、まさか王子であるティタンが自分を覚えているとは思わなかった。
「知ってるさ、小さい頃に話をしたからな。その宝石のようなキレイなオッドアイも絹糸のような金髪も覚えている。
そしてあの頃の君は騎士に憧れていた」
(私が、騎士に?)
自分すら覚えていない思い出にうーんと唸っていると、ティタンが苦笑いしている。
「悪しき竜を倒し、姫を救う騎士の冒険譚を熱く語ってくれた。その様子を見て俺も騎士を目指してみようと思ったのだ」
「あっ!」
思い出した。
あの頃とてもハマっていた本があった。
よくあるおとぎ話の一つだ。
その挿絵が好きで、いつか私もお姫様抱っこしてくれるような強い人と結婚したいと思ったほどだ。
「でもそのお話をしたのは、とても華奢な子で…」
話しながら思い出していくと確かに紫の髪の子と話したが。
「あの頃俺は体が弱く病がちであった、兄上にも心配をかけていた。少しずつ身体を鍛え、薬草学を学び食生活も変えてなんとか人並みになってきた」
今を見れば人並みかとは何なのかと思うが…それはともかく、ミューズの言動がその後ティタンの人生に大きく影響したようだ。
「申し訳ありません、子供の頃の私は何も考えず発言しておりました。ティタン様の人生観に影響を及ぼしてしまうなんて」
王族相手に何という話をしていたんだろうと今更ながら真っ青になってしまう。
「いいんだ、俺はあの頃から誰からも見向きもされていない。今ではもう自由に恋愛していいと兄上からも言われている」
自分が国を受け負うからティタンは好きな人と婚姻を結んでいいと。
「もちろん王家に損失を与えるような令嬢はダメと言われてるが、君だったら大丈夫だ。スフォリア家の令嬢だし、何よりレナン嬢を助けてくれた王家の命の恩人だ」
「私は死んだ身よ。貴族籍も家名もない、ただの平民で孤児。釣り合いませんわ」
「君が病死と偽られてあの魔の森に連れてかれたのは知っている。実行犯は捕らえ、全て吐いてもらった。
遺体が見つからなかったから、きっとどこかで生きているだろうと信じていたが、森の術師になってるとは思わなかった。近隣の村や町には聞き込みしたんだが、そっちには考えが至らなかったよ。
証拠は全て揃えてあるから後は君が証言すれば復籍する事が出来る。
復籍が嫌なら他の貴族と養子縁組をしても構わないし、アドガルムにいたくないのであれば二人で他国に行こう」
余りの事に言葉を失う。
「待って、ねぇ、どこまで知ってるの?何で私にそこまで」
口調も乱れてしまうが、それどころではない。
いくらなんでも自分の為にここまでしてくれるなんて。
小さい頃に会ったから?術師として王宮へ行ったから?それだけでここまでするだろうか。
遺体が見つからなかったからって、あの森の魔物に骨まで食べられていたかもしれないのに。
「君が好きだから、としか言えない」
王族であるが、恋愛重視な家風である。
好きな人にはとことん尽くすし、愛が重すぎるのも自覚している。
「俺のことは、好きか?」
跪かれ、熱い目線を送られる。
その目の奥には不安と期待が入り混じっていた。
「まだ、混乱しています。あなたが私を好きなのはわかりましたが…」
いつかは結婚して温かな家庭を持ちたいと夢見ていた。
術師として生きてきた自分を受け入れてくれるし、ティタンから感じられる愛情は本物だと思われる。
武術も優れており、経済的にも問題ない。
条件的にもとても良い人だろう。
自分のために国を捨ててくれると言っているが、しかし王太子はそれをあまり望まないようだ。
それならアドガルムに留まるためには…。
懸念はミューズの実家だ。
病死と偽り魔物だらけの森に捨てられた。
先生に拾われなければ無惨な死を遂げて今頃ここにはいなかっただろう。
「もしもあなたと添い遂げたいと言ったら、あなたは私の実家と戦ってくれますか?」
「もちろんだ!」
懸念がそれだけならそれを潰そう。
「何だかんだで私はアドガルムから離れられませんでした。酷い目にはあったけれど故郷ですし、それに母のお墓にも行きたいです。私を愛してくれた人がいる国なので」
ミューズも跪き、ティタンと目線を合わせる。
「私をあなたの妻にしてください」
恥じらいつつもまっすぐにそう言うと、耳まで赤くしてしまう。
「うれしい!」
弾かれたように表情を輝かせ、ミューズを抱き上げた。
「きゃっ?!」
「あぁ今日は良き日だ!すごく幸せだ!」
ミューズを抱え、クルクルと回る。
落ちないようにとミューズはティタンにしがみつく。
「落ち着いてください、ティタンさま!」
「すまない、長年の夢が叶ったからな」
止まってはくれたが、おろしてはくれないようだ。
ミューズを抱えたまま、ベッドに座る。
必然的にミューズはティタンの膝の上だ。
「おろしてください」
顔を赤くし泣きそうになっているが、ティタンはダメだと笑顔で言う。
「戦を早く終わらせ、早く婚姻をしよう。先程言っていたミューズの実家もすぐ取り潰す。そしてミューズを当主にして、俺を婿入りさせてくれ」
「そんなすぐには…」
「婚姻の書類は用意してあるし、スフォリア家の正統な後継者はミューズだ。君の母上の血統だろ?既にミューズの祖父母殿とは話がしてある。君が見つかって戻り次第手続き出来るぞ。
本当はミューズを病死と偽った時に潰そうと思ったが、もしかしたらミューズが悲しむかもと思って我慢していた。復讐したいなら喜んで手を貸すぞ」
もう8年も経つし、まさか王子であるティタンが自分を覚えているとは思わなかった。
「知ってるさ、小さい頃に話をしたからな。その宝石のようなキレイなオッドアイも絹糸のような金髪も覚えている。
そしてあの頃の君は騎士に憧れていた」
(私が、騎士に?)
自分すら覚えていない思い出にうーんと唸っていると、ティタンが苦笑いしている。
「悪しき竜を倒し、姫を救う騎士の冒険譚を熱く語ってくれた。その様子を見て俺も騎士を目指してみようと思ったのだ」
「あっ!」
思い出した。
あの頃とてもハマっていた本があった。
よくあるおとぎ話の一つだ。
その挿絵が好きで、いつか私もお姫様抱っこしてくれるような強い人と結婚したいと思ったほどだ。
「でもそのお話をしたのは、とても華奢な子で…」
話しながら思い出していくと確かに紫の髪の子と話したが。
「あの頃俺は体が弱く病がちであった、兄上にも心配をかけていた。少しずつ身体を鍛え、薬草学を学び食生活も変えてなんとか人並みになってきた」
今を見れば人並みかとは何なのかと思うが…それはともかく、ミューズの言動がその後ティタンの人生に大きく影響したようだ。
「申し訳ありません、子供の頃の私は何も考えず発言しておりました。ティタン様の人生観に影響を及ぼしてしまうなんて」
王族相手に何という話をしていたんだろうと今更ながら真っ青になってしまう。
「いいんだ、俺はあの頃から誰からも見向きもされていない。今ではもう自由に恋愛していいと兄上からも言われている」
自分が国を受け負うからティタンは好きな人と婚姻を結んでいいと。
「もちろん王家に損失を与えるような令嬢はダメと言われてるが、君だったら大丈夫だ。スフォリア家の令嬢だし、何よりレナン嬢を助けてくれた王家の命の恩人だ」
「私は死んだ身よ。貴族籍も家名もない、ただの平民で孤児。釣り合いませんわ」
「君が病死と偽られてあの魔の森に連れてかれたのは知っている。実行犯は捕らえ、全て吐いてもらった。
遺体が見つからなかったから、きっとどこかで生きているだろうと信じていたが、森の術師になってるとは思わなかった。近隣の村や町には聞き込みしたんだが、そっちには考えが至らなかったよ。
証拠は全て揃えてあるから後は君が証言すれば復籍する事が出来る。
復籍が嫌なら他の貴族と養子縁組をしても構わないし、アドガルムにいたくないのであれば二人で他国に行こう」
余りの事に言葉を失う。
「待って、ねぇ、どこまで知ってるの?何で私にそこまで」
口調も乱れてしまうが、それどころではない。
いくらなんでも自分の為にここまでしてくれるなんて。
小さい頃に会ったから?術師として王宮へ行ったから?それだけでここまでするだろうか。
遺体が見つからなかったからって、あの森の魔物に骨まで食べられていたかもしれないのに。
「君が好きだから、としか言えない」
王族であるが、恋愛重視な家風である。
好きな人にはとことん尽くすし、愛が重すぎるのも自覚している。
「俺のことは、好きか?」
跪かれ、熱い目線を送られる。
その目の奥には不安と期待が入り混じっていた。
「まだ、混乱しています。あなたが私を好きなのはわかりましたが…」
いつかは結婚して温かな家庭を持ちたいと夢見ていた。
術師として生きてきた自分を受け入れてくれるし、ティタンから感じられる愛情は本物だと思われる。
武術も優れており、経済的にも問題ない。
条件的にもとても良い人だろう。
自分のために国を捨ててくれると言っているが、しかし王太子はそれをあまり望まないようだ。
それならアドガルムに留まるためには…。
懸念はミューズの実家だ。
病死と偽り魔物だらけの森に捨てられた。
先生に拾われなければ無惨な死を遂げて今頃ここにはいなかっただろう。
「もしもあなたと添い遂げたいと言ったら、あなたは私の実家と戦ってくれますか?」
「もちろんだ!」
懸念がそれだけならそれを潰そう。
「何だかんだで私はアドガルムから離れられませんでした。酷い目にはあったけれど故郷ですし、それに母のお墓にも行きたいです。私を愛してくれた人がいる国なので」
ミューズも跪き、ティタンと目線を合わせる。
「私をあなたの妻にしてください」
恥じらいつつもまっすぐにそう言うと、耳まで赤くしてしまう。
「うれしい!」
弾かれたように表情を輝かせ、ミューズを抱き上げた。
「きゃっ?!」
「あぁ今日は良き日だ!すごく幸せだ!」
ミューズを抱え、クルクルと回る。
落ちないようにとミューズはティタンにしがみつく。
「落ち着いてください、ティタンさま!」
「すまない、長年の夢が叶ったからな」
止まってはくれたが、おろしてはくれないようだ。
ミューズを抱えたまま、ベッドに座る。
必然的にミューズはティタンの膝の上だ。
「おろしてください」
顔を赤くし泣きそうになっているが、ティタンはダメだと笑顔で言う。
「戦を早く終わらせ、早く婚姻をしよう。先程言っていたミューズの実家もすぐ取り潰す。そしてミューズを当主にして、俺を婿入りさせてくれ」
「そんなすぐには…」
「婚姻の書類は用意してあるし、スフォリア家の正統な後継者はミューズだ。君の母上の血統だろ?既にミューズの祖父母殿とは話がしてある。君が見つかって戻り次第手続き出来るぞ。
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