差し出された毒杯

しろねこ。

文字の大きさ
20 / 36

リンドールの親類

しおりを挟む
「さて、国を捨てるか」
リンドールのガードナー邸にて、ロキは不遜にそう言い放った。

もともとは違う家名であったガードナー領。

前領主が降爵、もとい公爵の地位を息子に譲って辺境伯領へと移った後で、ロキが新たな公爵となった。

かなり駄々をこねて、家名の変更を強引に国に了承させた。

新しい家名にしたのは、気分を一新するためという気まぐれな理由。

そんなガードナー家では現在家族会議中。

公爵のロキと、公爵夫人のアンリエッタ、長男フェンと次男キール、長女のシフが揃っている。

もともと少ない従者がここ最近更に少なくなっていたため、あまり良くない事になっているのだろうとロキの子どもたちは覚悟はしていた。

現在家族以外で屋敷の中にいるのはロキが設計した機械人形のみ。

ロキは莫大な魔力と、手先の器用さを生かし、魔道具師としての才能を開花していた。

作った魔道具を一つ国に献上した為、無茶な要求が通されたのだ。

しかし基本その能力はあくまで自分のために使うため、遊び心に特化した物が多い。

ガラクタが生まれるのもしばしば。

「父上。国を捨てるという言葉の真意を教えて下さい、そのままの言葉通りでよろしいのでしょうか?」
嫡子であるフェンが問う。

「リリュシーヌもミューズもいないこの国には、価値がない。捨てるというか潰すだな」
ロキは前王妃リリュシーヌの弟で、ミューズの叔父にあたる。

ロキはやれやれと言った顔をした。

「領地は? 領民は?」
キールは心配になる。

国に背くとしても、今まで世話になった皆をどうするのか心配になった。

「守るさ。リリュシーヌ姉さんが生まれ育った場所だ。残してやらんと可哀想だろ」
ロキはぴらっと書類を見せた。

「家族皆、登城しろと言われたよ。名目はないが、リリュシーヌに連なる者を処分しようと、ついに乗り出したようだ。度々王妃から力を貸せって言われていたのを、のらりくらりとかわしていたんだが、そろそろあちらも頂点を取りに本格的に動き出したのであろう。王妃もいつまでも病で倒れた国王を盾にし、今の地位を維持することは出来ないからな。一端は退けた王弟殿下達がそろそろ痺れを切らすだろうから。親父にも登城の手紙が来たそうだ、だからまず俺様たちから排除したいんだろう」
リリュシーヌが亡くなってから、それに連なるロキ達の待遇も変わっていった。

まず、王城にいるミューズに滅多に会えなくなった。

叔父であるロキも、祖父であるシグルドも、彼女と連絡が取れなくなった。

公務でリンドール王城に訪れても会うことが出来ない。

体調を崩しているの一点張り。

ミューズに会えない時が続いた後、国王暗殺という冤罪を被せられ、謀反を起こしたと国外追放の後に殺された、との話が突如知らせられた。

死亡が確認されたと伝わったのは、全てが終わった後。

親類であるロキたちにすら事後報告だった。

ロキもシグルドも当然烈火の如く怒り、リンドール国に抗議した。

「あの心優しいミューズが、父親である国王に、毒を盛るわけがないのに」
ロキは怒りの笑みを浮かべていた。

反逆を疑われ、あれからずっと領地にて謹慎中である。

屋敷の外には見張りがつき、どこかへ行く際は一緒に来るため、出かける事すらままならない。

シグルドとの連絡も禁じられたが、ロキは通信石で頻繁に連絡をとっていた。

「潰すという話ですが、どのような?私達の魔力だけで、何とかなるのでしょうか?」
末子のシフが不安そうに俯く。

キールは安心させるように妹の肩をそっと抱いた。

「シフ安心しろ。俺様の娘だろ」
ロキは自信満々に言った。

ガードナー家の魔力は一般の者より多い。

普段使うことはないが、有事の際には使用出来るようにと、訓練はしていた。

戦に参加したことがあるシグルドから強く言われてた事もあり、この時まで皆真剣に訓練を行なっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 
恋愛
「わ……私と結婚してください!」と叫んだのは、男爵令嬢ミーナ プロポーズされたのは第一騎士団の団長、アークフリード・フェリックス・ブランドン公爵 アークフリードには、13年前に守りたいと思っていた紫の髪に紫の瞳をもつエリザベスを守ることができず死なせてしまったという辛い初恋の思い出があった。 そんなアークフリードの前に現れたのは、赤い髪に緑の瞳をもつミーナ 運命はふたりに不思議なめぐりあいの舞台を用意した。 ⁂がついている章は性的な場面がありますので、ご注意ください。 「なろう」でも公開しておりますが、そちらではまだ改稿が進んでおりませんので、よろしければこちらでご覧ください。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

あなたにわたくしは相応しくないようです

らがまふぃん
恋愛
物語の中だけの話だと思っていました。 現実に起こることでしたのね。 ※本編六話+幕間一話と後日談一話の全八話、ゆるゆる話。何も考えずにお読みください。 HOTランキング入りをしまして、たくさんの方の目に触れる機会を得られました。たくさんのお気に入り登録など、本当にありがとうございました。 完結表示をしようとして、タグが入っていなかったことに気付きました。何となく今更な感じがありますが、タグ入れました。

恋は雪解けのように

ミィタソ
恋愛
王国アルテリア。 公爵家の令嬢エステルは幼馴染の侯爵嫡子クロードと婚約していた。 しかし社交界デビューを目前に、突然の婚約破棄を通告される。 「貴女の瞳には野心がない。装飾品でしかない女性に、我が家の未来は託せぬ」 冷徹に宣告するクロードの手元に、安物とは思えぬ新たな指輪が光っていた。 屈辱に震えるエステルは、古びた温室で偶然出会った謎の青年に差し出された赤い薔薇を握りしめる。 「この花のように、貴女は凍てついた大地でも咲ける」 そう囁いた青年こそ、政敵である辺境伯爵家の嗣子レオンだった。 雪解けと共に芽吹く二人の恋は、王家の陰謀に巻き込まれていく――。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

《完結》戦利品にされた公爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
戦いの《戦利品》として公爵邸に連れて行かれた公爵令嬢の運命は?

処理中です...