差し出された毒杯

しろねこ。

文字の大きさ
26 / 36

話し合いの場

通された会議室。

ミューズは緊張で、鼓動が早くなるのを感じている。

話し合いの為にアドガルムの重臣が勢揃いしており、他国の者はミューズだけだ。

その中でも最もこの国で力を持つ者、国王アルフレッドが真っ直ぐにミューズを見ている。

こんなにもお世話になっていたのに、ずっと謁見が叶わなかったのだ。

ミューズはこの時、ようやく会うことが出来た事への安堵と、このような場で会うことになってしまった事に怯えていた。

挨拶もせず城に居座っていた事、勝手にティタンとの婚約を結んでしまった事。

報告は全てティタンがしてくれていたが、この時までずっと会えなかったのは、ミューズを認めていないからではないかと考えていた。

「ミューズと申します。この度は命を助けてもらい…「そのような挨拶はいらん」
話を遮られ、はっきりと拒否された。

ミューズはやはりお怒りなのだと後悔と反省で、身を固くする。

「それよりもずっと会いたいと思っていた」
アルフレッドから言われたのは、ミューズにとって意外な言葉。

「大事な息子の妻になる、大事な女性だ。本当は私もすぐに会いに行きたかったのに、次から次へとエリックが仕事を寄越すから、王妃ともども会いに行くことが叶わず……もっとお茶したりとか、一緒にご飯食べたりとかしたかったのに」
国王アルフレッドが怒っている。

息子に対して。

「あの…?」
困惑した。

一国の主のこんな姿を見て、戸惑ってしてしまう。

「そうですよ。わたくしだって会いたかったわ」

「王妃様?」
国王の隣の王妃もぷんぷんと怒っている。

「ティタンにも再三お願いしたのに、全然連れてこないんですもの。せっかく可愛らしいドレスや宝石を見立てようと思ったのに」
王妃アナスタシアはそう言い、息子を睨む。

「病み上がりのミューズに、そんな長くなる事をさせては疲れてしまう、と忠言したのです。ただでさえ母上の買い物は長い」
ティタンはきっぱりと言い切った。

「実際に国を動かすのは父上の仕事だから、仕方ありますまい。それとももう俺に譲って頂けますか?」
エリックは口の端を上げ、笑っている。

「ミューズはわたくしの娘になるのですから、良いものを与えたいじゃない。女性の用事が長いのは仕方ないのよ」

「まだまだエリックには譲らん。孫が生まれたら隠居して、楽しく過ごすんだ。今のうちに働いて私財を貯めておくんだから」
何だか変な親子喧嘩が始まってしまった。

「あれはいつもの事です。時間の無駄ですし、出来ることだけこちらで始めてしまいましょう」
国王達から少し離れた席にリオンが座った。

リオンに倣い重臣達も座る。

慣れてるようで、特に戸惑いもなさそうだ。

ミューズは末席にてマオの隣に腰掛けて様子を見ようと思った。



感想 0

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら

雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」 「え?」 伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。 しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。 その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。 機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。 そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。 しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。 *他サイトでも公開しております。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

ついで姫の本気

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。 一方は王太子と王女の婚約。 もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。 綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。 ハッピーな終わり方ではありません(多分)。 ※4/7 完結しました。 ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。 救いのあるラストになっております。 短いです。全三話くらいの予定です。 ↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。 4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。