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第12話 鳩の国 困惑

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「レナンは首尾良く行ったかしら」
 最後まで何とか誤魔化せとは伝えた。

 それにもしバレたとしてもレナンが勝手にやったことだと手紙にも書いた。

 仮にレナンが否定しても、一緒に行った父が何とかレナンのせいにするはずだ。

 ヘルガはレナンに騙され、パロマに残っているのだから。

 窓の外を見ると自国の馬車が入ってくるのが見える。

 どうやら式が終わり、帰ってきたようだ。
 どのような喜劇が起きたか、楽しみだ。






「レナンがそのまま花嫁になった?」

「こちらが何かを言う前にエリック様が了承された。花嫁が変わっても両国で結ばれた関係は変わらないと言っていた」
 ということはパロマはお咎めなしなのだろう。

 すべてをエリックが請け負ってくれたとは有り難いことだ。

「良かったわ。これでレナンというお荷物もいなくなったのね」
 大体レナンは王族としての自覚がない。

 ビクビクと怯え、侍女たちとばかり仲良くしていた。

 勉強は出来ても魔力は少ない。

 どうせあの王太子もレナンをいたぶりたいのだろう。

 レナンを見るだけでヘルガは苛々していた、きっとエリックも同じだ。

「そう簡単なものではない……上辺だけの関係は変わらないが、内容にはだいぶ変更があった。まずこれ以降の援助金は支払わないと言われた」

「はっ?」

「ファルケ国を謀った償いの為と言われた。それに、レナンが手元に入ったのならば、援助する価値もない、と」

「そんな、だってそれはエリック王太子が望んだことでしょ?」

「結果論だ。エリック王太子があの場を収める為に言ったのは全てレナンの為だそうで、そうでなければパロマに全面戦争を仕掛けるとも言っていた」
 パロマはファルケに庇護を求めていたはずだ、それなのにその二国を繋ぐ為の花嫁を偽られては怒るのも当然だ。

「でも」

「でも、ではない。今後パロマの情勢は厳しくなるだろう」
 ファルケにとってパロマなど取るに足らぬ弱小国だ。

 その為交流を密にし、こうして何代目か開けてから国同士婚姻をし、絆を深めていた。

「もしもレナンがパロマを見捨てても良いとエリック様に進言すれば、なにかのおりには切り捨てられるかもしれない」
 魔獣も活発化し、最近狼の国も不穏と聞く。

 襲われでもしたらパロマの兵士では太刀打ち出来ないかもしれない。

「あのレナンがそんな事言うわけないでしょ?」
 ヘルガは国王である父の言葉すらも軽んじる。

 自分のしたことなどまるで意に介していないようだ。

 憂いを帯びた表情の国王とは違い、ヘルガの表情は命拾いしたと晴れやかであった。




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