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第1話 求婚相手、間違えてますよ?
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「俺と結婚して欲しい」
唐突なプロポーズに、ときめくどころか驚きで呼吸が止まりそうになった。
(この方は何をおっしゃっているのかしら)
うららかな昼下がり。
気心の知れた、メイドのルミネとまったりとお茶をしている最中であった。
そんな時に離れであるこちらの建物に来たのは、従姉妹に求婚しに来たはずの令息だ。
黒い髪に蛇のように鋭い青い目をしている。やや冷たさを感じる目ははまっすぐにこちらを見て、いや見下ろしていた。
(大きい……身長どれくらいあるのかしら)
さすがに座っては居られないので立ち上がったのだけれど、それでもかなり身長差がある。
「あの、シャルペ侯爵令息。求婚相手を間違えておいでですよ?」
本日侯爵子息がここ、キャネリエ家に婚姻の申し出で来たのは知っている。
その相手は確か従妹だったはずなのだが……
「間違えてはいない。俺は確かに『カナリア令嬢』に求婚をしに来たのだ」
シャルペ侯爵令息がそういうと、彼の従者が何やら合図を出す。
そうすると次から次へと綺麗に包装された物や花が運び込まれてきた。
狭い部屋には到底収まりきらず、途中で従者が「隣の部屋にも運び入れていいですか?」などの許可を求めてきた。
「はぁ……」
あっけに取られつい声を漏らしてしまったのだが、それを返事としてとらえられてしまう。
あっという間にドアを開けて、そちらにも運び入れられてしまった。
「すまない、あなたに似合うと思ってつい色々と買ってしまった。好みでない物は誰かに譲るなり、売るなどしてもらって構わないから」
「いえいえそんな! せっかくの贈り物をそんな風にはしませんよ!」
慌てて否定すると侯爵令息は少しほっとした様子を見せる。
「そう言って頂けると嬉しい。あなたは本当に優しいな」
いやいや、大体の人は貰いものを売ったり譲ったりしないと思いますよ?
(それにしても優しいなんて、私この人に何かしたかしら?)
誰にも会わず、外にも出ずに引きこもっているので、この人の事は見たことも聞いたこともなかった。
なのにどうして私に向かってそんな言葉が出るのかしら。
(もしかして両親が健在だった頃にお会いしたことがあったのかしら)
しかしこんなにも印象深い人ならば覚えていると思う。
「もう一度言います。シャルペ侯爵令息、求婚相手を間違っていますよ」
格が上であろうと訂正はさせてもらう。
このような事をされるいわれは本当にないのだから。
「間違いではない。俺はフィリオーネ嬢に求婚をしに来たのだ」
確かにそれは私の名だけれど、カナリア令嬢ではない。
「あのシャルペ侯爵令息――」
「俺の事はゼインと」
初めて会った相手のファーストネームを呼べるわけがない。
しかしまっすぐに見つめてくる目は、私に呼んでもらえることを期待しているようだった。
流されてはいけないわ。
コホンと咳ばらいをしてから改めて訂正をさせていただく。
「私はカナリア令嬢ではありませんよ、シャルペ侯爵令息。カナリア令嬢と呼ばれるのは私の従妹、ククルの事です」
母屋の方に住んでいる従妹、ククル=キャネリエこそカナリア令嬢だ。
キャネリエ家は代々歌姫を輩出している家で、王家に歌姫と認められたものが一族の当主となり、この屋敷を継ぐ決まりとなっている。
父の代の時は女児が生まれず、とりあえず長子であった父が屋敷を引き継いだ。
叔父は屋敷の代わりにそれなりの遺産を相続したのだけれど、今は叔父家族が母屋に住んでいる。
両親が私を残して事故で死んでしまった為だ。
父に代わり、叔父がこの屋敷を管理することとなったのだけれど、それに伴い私はこの離れへと移動した。
亡き両親の想いでが詰まった母屋にいる事がつらかったのと、従妹がカナリア令嬢として世間に認められ始めたからだ。
このままいけば従妹のククルが当主となるだろう。
「いや、まだ決定ではないだろう。選定の儀はまだ先なのだから」
「いろいろとお詳しいのですね」
実はカナリア令嬢と認められるには王家の承諾と、前当主の合格を得られなければならない。
カナリア令嬢は王家の宴や諸外国から人が来た際にその歌声で歓待をする為である。
それ故に生半可な歌ではカナリア令嬢になれないのだが、すでに従妹はカナリア令嬢として活躍している。
それは一体何故なのか。
「選定の儀はまだ先ですけれど、私はカナリア令嬢にはなれません。だって私、歌が下手ですから」
私の歌声は従妹に遠く及ばない。
カナリアなんて、一生呼ばれる事はないわ。
唐突なプロポーズに、ときめくどころか驚きで呼吸が止まりそうになった。
(この方は何をおっしゃっているのかしら)
うららかな昼下がり。
気心の知れた、メイドのルミネとまったりとお茶をしている最中であった。
そんな時に離れであるこちらの建物に来たのは、従姉妹に求婚しに来たはずの令息だ。
黒い髪に蛇のように鋭い青い目をしている。やや冷たさを感じる目ははまっすぐにこちらを見て、いや見下ろしていた。
(大きい……身長どれくらいあるのかしら)
さすがに座っては居られないので立ち上がったのだけれど、それでもかなり身長差がある。
「あの、シャルペ侯爵令息。求婚相手を間違えておいでですよ?」
本日侯爵子息がここ、キャネリエ家に婚姻の申し出で来たのは知っている。
その相手は確か従妹だったはずなのだが……
「間違えてはいない。俺は確かに『カナリア令嬢』に求婚をしに来たのだ」
シャルペ侯爵令息がそういうと、彼の従者が何やら合図を出す。
そうすると次から次へと綺麗に包装された物や花が運び込まれてきた。
狭い部屋には到底収まりきらず、途中で従者が「隣の部屋にも運び入れていいですか?」などの許可を求めてきた。
「はぁ……」
あっけに取られつい声を漏らしてしまったのだが、それを返事としてとらえられてしまう。
あっという間にドアを開けて、そちらにも運び入れられてしまった。
「すまない、あなたに似合うと思ってつい色々と買ってしまった。好みでない物は誰かに譲るなり、売るなどしてもらって構わないから」
「いえいえそんな! せっかくの贈り物をそんな風にはしませんよ!」
慌てて否定すると侯爵令息は少しほっとした様子を見せる。
「そう言って頂けると嬉しい。あなたは本当に優しいな」
いやいや、大体の人は貰いものを売ったり譲ったりしないと思いますよ?
(それにしても優しいなんて、私この人に何かしたかしら?)
誰にも会わず、外にも出ずに引きこもっているので、この人の事は見たことも聞いたこともなかった。
なのにどうして私に向かってそんな言葉が出るのかしら。
(もしかして両親が健在だった頃にお会いしたことがあったのかしら)
しかしこんなにも印象深い人ならば覚えていると思う。
「もう一度言います。シャルペ侯爵令息、求婚相手を間違っていますよ」
格が上であろうと訂正はさせてもらう。
このような事をされるいわれは本当にないのだから。
「間違いではない。俺はフィリオーネ嬢に求婚をしに来たのだ」
確かにそれは私の名だけれど、カナリア令嬢ではない。
「あのシャルペ侯爵令息――」
「俺の事はゼインと」
初めて会った相手のファーストネームを呼べるわけがない。
しかしまっすぐに見つめてくる目は、私に呼んでもらえることを期待しているようだった。
流されてはいけないわ。
コホンと咳ばらいをしてから改めて訂正をさせていただく。
「私はカナリア令嬢ではありませんよ、シャルペ侯爵令息。カナリア令嬢と呼ばれるのは私の従妹、ククルの事です」
母屋の方に住んでいる従妹、ククル=キャネリエこそカナリア令嬢だ。
キャネリエ家は代々歌姫を輩出している家で、王家に歌姫と認められたものが一族の当主となり、この屋敷を継ぐ決まりとなっている。
父の代の時は女児が生まれず、とりあえず長子であった父が屋敷を引き継いだ。
叔父は屋敷の代わりにそれなりの遺産を相続したのだけれど、今は叔父家族が母屋に住んでいる。
両親が私を残して事故で死んでしまった為だ。
父に代わり、叔父がこの屋敷を管理することとなったのだけれど、それに伴い私はこの離れへと移動した。
亡き両親の想いでが詰まった母屋にいる事がつらかったのと、従妹がカナリア令嬢として世間に認められ始めたからだ。
このままいけば従妹のククルが当主となるだろう。
「いや、まだ決定ではないだろう。選定の儀はまだ先なのだから」
「いろいろとお詳しいのですね」
実はカナリア令嬢と認められるには王家の承諾と、前当主の合格を得られなければならない。
カナリア令嬢は王家の宴や諸外国から人が来た際にその歌声で歓待をする為である。
それ故に生半可な歌ではカナリア令嬢になれないのだが、すでに従妹はカナリア令嬢として活躍している。
それは一体何故なのか。
「選定の儀はまだ先ですけれど、私はカナリア令嬢にはなれません。だって私、歌が下手ですから」
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