カナリアというよりは鶸(ひわ)ですが? 蛇令息とカナリア(仮)令嬢

しろねこ。

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第2話 突然の訃報

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「お父様とお母様が……事故で亡くなった?」

 訃報が届いたのは突然の事であった。

 この時期になると毎年恒例で親戚の集まりがあるのだけれど、皆が集まるその日だけおばあ様が歌を披露してくれる事になっている。

 おばあ様はカナリア令嬢であったのだが、病気で体力が落ちたので、だいぶ前に引退さ、今はこうして限られた時にしか歌う事をしない。

 その日は一族の女性達も共に歌う、楽しい日となるはずだった。


 数日前から私も楽しみにしていたのだが、あいにく熱が出てしまい、お留守番することにした。

「今年は行くのやめようかしら」

 お母様が心配してそんな事を言ってくれたけれど、私は首を横に振る。

「気にしないで行ってきて大丈夫だよ。皆が行かないなんて言うと、おばあ様が悲しむだろうし。お父様とお母様楽しんできてね」

 残ってほしい気持ちもあつたけれも、父は現キャネリエ家の当主、行かなければならないだろう。

 自分の我儘で引き止めるのは嫌だった。

「あなたの好きなお菓子を買って帰って来るから、少しだけ待っていてね」

「来年は皆で行こう。早めに帰ってくるからいい子にしてるんだよ」

 お父様の大きな手が私の頭を撫で、お母様が優しく手を握ってくれる。

 二人共心配そうな表情をしていたが、私は精いっぱいの笑顔で見送った。

(大丈夫、二人共早く帰ってきてくれると言ったもの)

 祖父の住む領までは片道二日。だから四日、五日くらいの辛抱だと思っていた。

 なのに……それが生きている両親との最後の会話になるなんて。

 泣いて泣いて、そこからどうなったか覚えていない。

 気づけば葬儀は終わり、家には知らない人が大勢出入りしていた。

「可哀想なフィリオーネ。これからは私がこの家を見ていくから、何も心配しなくていいよ」

 どこか父の面影がある叔父がそう言って、家の中を取り仕切っていく。

 私はそれをぼんやりと見ていた。

 色々な物が運び出されたり、運び込まれたり、思い出の家がどんどんと変わっていく。

「ここは兄さん達の思い出がいっぱいだから辛いだろう。あちらにフィリオーネの住むところを用意したよ」

 そう言って私は離れへと連れて行かれた。

 しばらく放心して過ごすうちに、ようやく目が覚めてくる。

「そうか、私一人になったんだ」

 両親の死から数日、やっとその事実を受け入れられた。

 そして自分の置かれた状況に気が付く。

 叔父は今本邸に住んでいる、つまりキャネリエ家の新しい当主となったのだ。

 両親と暮らしていた思い出の屋敷に叔父達が住むのは複雑な気持ちだけれど、キャネリエ家の存続の為には当然の事だろう。

 それに何も出来ない私を追い出すことなく、離れに住まわせてくれた。その恩に感謝し、私はこのままひっそりと離れで暮らすことを決める。

 両親の死から数週間、私は寝込むことが多くなった。

「体が重い……」

 医師を呼んで診て貰うも、「気持ちの整理がまだついていないからでしょう、よく体を休めてください」と言われるだけで、特に治療されることもない。

 しかし不調の頻度は増すばかりで、その度に医師を呼んでいたら、「お前は金食い虫だな」と叔父に言われてしまい、診てもらう事すらなくなった。

 その為熱を出しても叔父に伝えないようにと使用人たちにお願いした。

「フィリオーネ様のお体の方が大事なのに」

 皆の気遣いはありがたかったけれど、今の当主は叔父だ。気を損ねて皆が仕事を失う事は避けたい。

 それに叔父にはこの家を守ってくれてる事、私を受け入れてくれた事の恩がある。

 言うことを聞かないといけないだろう。

 数日寝込み、元気になり、また寝込むという事が続いている中、従妹のククルがお見舞いに来てくれた。

「大丈夫? フィオ。体調良くないってお父様から聞いたけれど」

「ククルありがとう、今は元気になったわ」

 従妹のククルとは、同い年だ。

 その為幾度も話をしたことがあるけれど、両親を亡くしてからは初めての顔合わせである。

 叔父と共に本邸に住んでいるのだけれど会う機会がなく、これまでずっと話をすることもなかった。

「そう。でもよく熱を出すって聞いたわ。私にうつさないでね」

 ククルはキョロキョロと私の部屋を見る。

「こんなところに住まなきゃいけないなんて、当主になれないと大変なのね」

「そう悪いところでもないわよ」

 元々ここは夜でも気兼ねなく歌うことが出来るようにと、本邸から離れて建てられたもの。

 確かに住むには適さないかもしれないけれど、今までの当主が努力を重ねてきた場所なので、嫌いではない。

 両親が生きていた頃から出入りしていたので、むしろ落ち着く場所だ。

「ふぅん。まぁカナリアになれないあなたにはお似合いね」

 カナリアは国の顔になる大事な役割だ。その為、選定には多くの貴族や王族が参加する。

 私達が十六歳になったらどちらがカナリアになると、言われたけれど。

「確かに体調も悪いし、選定の儀も出られるかわからないけれど……まだ先の話だから」

 そういうとククルは呆れた顔をする。

「この際だから言うけれど、あなたには無理よ。だって歌が下手だものね」

「え?」

「まさか気づいてなかったの? おじい様もおばあ様も、ロイ小父様やラミィ小母様だって、あなたの歌を聴くのは嫌だっておっしゃってたわ」

「嘘……」

 だって皆いつも笑顔で聞いてくれてたわ。

 親戚の集まりで皆と一緒に歌っていてたけれど、そんな事言われたことは一度もない。

「本当よ。その証拠に誰もあなたのお見舞いにも来ないし、手紙すらない。カナリアの血筋なのに歌が下手だから、嫌われているのよ」

 その言葉が胸に突き刺さる。

(確かに誰も来てないわ)

 叔父以外の親戚は、誰もここに来ていない。

 おじい様やおばあ様、親しかったラミィ小母様にも手紙を出したのだけれど、誰からも返事は返ってこなかった。

(ククルのいう事は本当なんだ……)

 そこから私は人を信じるのが怖くなり、離れから出ることをしなくなってしまった。



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