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第15話 狙われるカナリア
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いよいよ選定の儀。
ずっとその準備に追われていたのだが、当日ともなると緊張感が半端ない。心臓はバクバクするし、ここ数日まともに眠れていない。
でもこの日の為に皆で力を合わせ色々な事を克服してきた。
その成果をぜひここで発揮しないと。
「大丈夫、あなたなら見事な歌を披露できるよ」
「いつもありがとうございます。ゼイン様のその言葉に何度支えられたことか」
いつでも自分の味方をしてくれるゼイン様の存在は、今ではとても大きくて大切なものとなっていた。
「俺も何度フィリオーネに支えられたことか……本当に感謝している」
ゼイン様が跪き、私の手を取る。
「綺麗だ、フィリオーネ。あなたなら絶対にカナリア令嬢となれる、いやカナリア令嬢となれずとも、側にいてくれるだけで俺は幸せだ。このまま攫って閉じ込めておきたい」
「あ、あの、ゼイン様?」
突然の告白に手を握って立ち尽くすばかりだ。
「改めて伝えるが、俺の妻になってほしい。カナリアだからではない、あなただから結婚してほしいんだ。一生側にいてくれ」
「ゼイン様……」
カナリアという価値がない私でも、側にいていいの?
「もしもククルがカナリアだったとしても、後悔しないですか?」
ククルがカナリア令嬢となれば、ゼイン様の評判は落ち、シャルペ家も厳しく糾弾されるだろう。
カナリア令嬢は国の大事な役割を担っている。
そのククルと敵対したゼイン様はきっとひどい事を言われてしまうに違いないのに。
「しない。言っただろう、俺はあの女が嫌いだと。あなたにひどい目を合わせてきたものは全員敵だ、死んでも許さない」
そう言って目を細める。
「あなたこそ俺で良いだろうか? あなたの意志を確認することなく婚約を結んだのに……カナリア令嬢ともなれば、それこそ俺よりもいい男から声がかかるかもしれない。それこそ、王族からでも」
不安そうなゼイン様の声に胸が痛む。
他の誰かなんて、選ぶわけはない。
「私はゼイン様が良いです、ゼイン様の事が好きですから」
ゼイン様は立ち上がり、強く抱きしめてくる。
「俺も好きだ。あなたを幸せにし、守る事を誓う。絶対に何があろうと」
足が浮くほど強く抱きしめられ、息が止まりかける。
レイドとルミネがすぐに止めてくれたからいいものの、衣装やヘアセットが乱れたものだから、厳重注意されたゼイン様は外に出されてしまった。
大急ぎで再度着付けをされ、最終チェックにアマリア様も来てくれる。
「ゼイン様とのやり取り、大変でしたわね。体は大丈夫かしら?」
「はい。けど大切にされているってわかりますから、大丈夫です」
「ふふ、愛されてるっていいですわね。そんなに強い愛情表現をされるなんて、ちょっと羨ましいですわ」
アマリア様にそういわれるとちょっと恥ずかしい。
「エイディン様はそういう事ないのですか?」
「言葉では伝えてくれますけど、あの調子だから。どうにも疑わしくてね」
確かに軽薄な話し方と口調だから、なかなか信用が難しいかも。
「けれどアマリア様とエイディン様はとても仲がよろしいですし、きっといいご夫婦になりますよ」
「そうかしら?」
口調はそっけないながらも、頬を染める様子が可愛らしい。
「そういえばこの前はぬいぐるみとアクセサリーをありがとう。でも、私がぬいぐるみを好きだなんて話したことあったかしら?」
「それはゼイン様から聞いたのです。なんでもエイディン様が教えてくれたって」
そう言えばアマリア様の顔が真っ赤になる。
「何で?! 私、そのような事エイディン様に話していないのに」
「そ、そうなのですか?」
「毎年匿名でぬいぐるみは贈られてきていたけれど、もしかしてあれはエイディン様からだったの?」
思い当たる節があったのか、アマリア様は赤くなった頬を押さえてうずくまってしまう。
「誰にも言ってなかったのに、どうして知っているのかしら。もしかしてゼイン様に調べさせたの?」
「それはないと思います。だってゼイン様もエイディン様に聞いたと言っていましたし」
「じゃま怪しいのはあの双子ね……今度問い詰めてやるわ」
コホンと咳ばらいをして、アマリア様が姿勢を正す。
「もうすぐ時間なのに、余計な話をしてしまってごめんなさいね」
「いえ、いいのです。おかげで少し緊張がほぐれました」
いつも凛としたアマリア様の珍しく狼狽える様子に少し気がまぎれた。
「これからこの前のような大勢の前で歌うのだけれど、自信をもって歌って欲しいの。あなたの歌声は素晴らしいわ。皆も喜んでいたし、カナリアに選ばれればもっとたくさんの人を元気にする事が出来るわ。だから、頑張ってね」
アマリア様の激励に背筋が伸びる思いだ。
「緊張したら私たちを、そしてゼイン様を思い出して、私たちは何があってもあなたの味方。それを忘れないで」
「はい」
アマリア様もまた退室し、部屋に静けさが訪れた。
刻一刻と時間が発表の時間が迫って来る。
(大丈夫、私ならやれる! と、思う)
心の中で自信と不安が交互に入り混じる。
その時突如ノックの音が響いた。
「失礼します、フィリオーネ様。婚約者様に頼まれて、最終確認をしに来ました」
ついに出番かと思いきや違ったらしい。
衣装を持った女性たちが大きなカートを押して入ってくる。
「……あなた達見慣れない顔ですね、どこ所属のデザイナーですか?」
「すみません、私たちはこういうものでして――」
ネイトの呼びかけに先頭にいた女性が、大きめなカバンの中に手を入れ、ごそごそと何かを探している。
するとその後ろの大きなカートから煙が噴き出してきた。
「っ!!」
とっさの事で固まってしまうが、ネイトが私の手を引いて後ろに下がらせてくれる。
けれど煙はどんどんと出て来ていて、すぐにでも部屋いっぱいになりそうだ。
「もしかして、毒?!」
「眠くなるだけですよ、貴重なカナリアに傷をつけるわけにはいきませんからね」
いつの間にか入ってきた女性たちはマスクを着けている。
(ゼイン様、助けて!)
煙を吸わないようにと手で押さえるが煙はどんどんと迫ってくる。
ネイトの服にしがみつき、必死で祈る。
「大丈夫だ。俺が守るといっただろう」
ゼイン様の声が聞こえてきた。
ずっとその準備に追われていたのだが、当日ともなると緊張感が半端ない。心臓はバクバクするし、ここ数日まともに眠れていない。
でもこの日の為に皆で力を合わせ色々な事を克服してきた。
その成果をぜひここで発揮しないと。
「大丈夫、あなたなら見事な歌を披露できるよ」
「いつもありがとうございます。ゼイン様のその言葉に何度支えられたことか」
いつでも自分の味方をしてくれるゼイン様の存在は、今ではとても大きくて大切なものとなっていた。
「俺も何度フィリオーネに支えられたことか……本当に感謝している」
ゼイン様が跪き、私の手を取る。
「綺麗だ、フィリオーネ。あなたなら絶対にカナリア令嬢となれる、いやカナリア令嬢となれずとも、側にいてくれるだけで俺は幸せだ。このまま攫って閉じ込めておきたい」
「あ、あの、ゼイン様?」
突然の告白に手を握って立ち尽くすばかりだ。
「改めて伝えるが、俺の妻になってほしい。カナリアだからではない、あなただから結婚してほしいんだ。一生側にいてくれ」
「ゼイン様……」
カナリアという価値がない私でも、側にいていいの?
「もしもククルがカナリアだったとしても、後悔しないですか?」
ククルがカナリア令嬢となれば、ゼイン様の評判は落ち、シャルペ家も厳しく糾弾されるだろう。
カナリア令嬢は国の大事な役割を担っている。
そのククルと敵対したゼイン様はきっとひどい事を言われてしまうに違いないのに。
「しない。言っただろう、俺はあの女が嫌いだと。あなたにひどい目を合わせてきたものは全員敵だ、死んでも許さない」
そう言って目を細める。
「あなたこそ俺で良いだろうか? あなたの意志を確認することなく婚約を結んだのに……カナリア令嬢ともなれば、それこそ俺よりもいい男から声がかかるかもしれない。それこそ、王族からでも」
不安そうなゼイン様の声に胸が痛む。
他の誰かなんて、選ぶわけはない。
「私はゼイン様が良いです、ゼイン様の事が好きですから」
ゼイン様は立ち上がり、強く抱きしめてくる。
「俺も好きだ。あなたを幸せにし、守る事を誓う。絶対に何があろうと」
足が浮くほど強く抱きしめられ、息が止まりかける。
レイドとルミネがすぐに止めてくれたからいいものの、衣装やヘアセットが乱れたものだから、厳重注意されたゼイン様は外に出されてしまった。
大急ぎで再度着付けをされ、最終チェックにアマリア様も来てくれる。
「ゼイン様とのやり取り、大変でしたわね。体は大丈夫かしら?」
「はい。けど大切にされているってわかりますから、大丈夫です」
「ふふ、愛されてるっていいですわね。そんなに強い愛情表現をされるなんて、ちょっと羨ましいですわ」
アマリア様にそういわれるとちょっと恥ずかしい。
「エイディン様はそういう事ないのですか?」
「言葉では伝えてくれますけど、あの調子だから。どうにも疑わしくてね」
確かに軽薄な話し方と口調だから、なかなか信用が難しいかも。
「けれどアマリア様とエイディン様はとても仲がよろしいですし、きっといいご夫婦になりますよ」
「そうかしら?」
口調はそっけないながらも、頬を染める様子が可愛らしい。
「そういえばこの前はぬいぐるみとアクセサリーをありがとう。でも、私がぬいぐるみを好きだなんて話したことあったかしら?」
「それはゼイン様から聞いたのです。なんでもエイディン様が教えてくれたって」
そう言えばアマリア様の顔が真っ赤になる。
「何で?! 私、そのような事エイディン様に話していないのに」
「そ、そうなのですか?」
「毎年匿名でぬいぐるみは贈られてきていたけれど、もしかしてあれはエイディン様からだったの?」
思い当たる節があったのか、アマリア様は赤くなった頬を押さえてうずくまってしまう。
「誰にも言ってなかったのに、どうして知っているのかしら。もしかしてゼイン様に調べさせたの?」
「それはないと思います。だってゼイン様もエイディン様に聞いたと言っていましたし」
「じゃま怪しいのはあの双子ね……今度問い詰めてやるわ」
コホンと咳ばらいをして、アマリア様が姿勢を正す。
「もうすぐ時間なのに、余計な話をしてしまってごめんなさいね」
「いえ、いいのです。おかげで少し緊張がほぐれました」
いつも凛としたアマリア様の珍しく狼狽える様子に少し気がまぎれた。
「これからこの前のような大勢の前で歌うのだけれど、自信をもって歌って欲しいの。あなたの歌声は素晴らしいわ。皆も喜んでいたし、カナリアに選ばれればもっとたくさんの人を元気にする事が出来るわ。だから、頑張ってね」
アマリア様の激励に背筋が伸びる思いだ。
「緊張したら私たちを、そしてゼイン様を思い出して、私たちは何があってもあなたの味方。それを忘れないで」
「はい」
アマリア様もまた退室し、部屋に静けさが訪れた。
刻一刻と時間が発表の時間が迫って来る。
(大丈夫、私ならやれる! と、思う)
心の中で自信と不安が交互に入り混じる。
その時突如ノックの音が響いた。
「失礼します、フィリオーネ様。婚約者様に頼まれて、最終確認をしに来ました」
ついに出番かと思いきや違ったらしい。
衣装を持った女性たちが大きなカートを押して入ってくる。
「……あなた達見慣れない顔ですね、どこ所属のデザイナーですか?」
「すみません、私たちはこういうものでして――」
ネイトの呼びかけに先頭にいた女性が、大きめなカバンの中に手を入れ、ごそごそと何かを探している。
するとその後ろの大きなカートから煙が噴き出してきた。
「っ!!」
とっさの事で固まってしまうが、ネイトが私の手を引いて後ろに下がらせてくれる。
けれど煙はどんどんと出て来ていて、すぐにでも部屋いっぱいになりそうだ。
「もしかして、毒?!」
「眠くなるだけですよ、貴重なカナリアに傷をつけるわけにはいきませんからね」
いつの間にか入ってきた女性たちはマスクを着けている。
(ゼイン様、助けて!)
煙を吸わないようにと手で押さえるが煙はどんどんと迫ってくる。
ネイトの服にしがみつき、必死で祈る。
「大丈夫だ。俺が守るといっただろう」
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