カナリアというよりは鶸(ひわ)ですが? 蛇令息とカナリア(仮)令嬢

しろねこ。

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第16話 約束

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「大丈夫だ、俺が守る」

 ゼイン様の声が聞こえるとともに、ガラスが割れる音も響いた。見ると窓が割れており、煙が外へと流れていく。

「誰かはこうしてくるとは思っていたが、こんな変装をしてくるとはな」

 開け放ったドアのところにはゼイン様の他にも王宮の兵士が立っている。

「馬鹿な。ここにいた兵たちは眠らせたはずなのに」

「王宮の兵士たちが、お前たちのような二流に負けるわけがないだろう。人を集め一網打尽にするために泳がせただけだ。大人しく捕縛されろ」

 ゼイン様の声で王宮の兵士が室内になだれ込んでくる。

 割れた窓から逃げ出そうとしたものを、ゼイン様が振るった剣が襲い掛かる。

 鞭のようにしなやかで、そして細く長い刃が人を貫くのが見えた。

「フィリオーネ様、下がりましょう」

 ネイトが私の視界を防ぐように前に出てくれるが、血の匂いは防げない。

 仕方ない事だけど、ぎゅっと目を瞑り、ネイトの服を握りしめてやり過ごす。

 少しして全ての人が捕らえられるも、部屋の中は様変わりし、壊れたものが散乱するというひどい有様であった。

「怪我はしていないかフィリオーネ、具合が悪いなどないか」

「私は、大丈夫です……それよりもゼイン様も大丈夫ですか?」

 ゼイン様が戦うところなんて初めて見たけど、怪我をしていないかが心配だ。

「俺は大丈夫だ。それよりも怖い思いをさせてしまってすまない。ずっと側にいられれば良かったのだが、ここから追い出されたものだからな」

 ゼイン様はレイドとネイトを睨みつけるが二人は目を反らし素知らぬ顔をしている。

「それよりもフィリオーネ様、そろそろお時間です。急いで向かわないと」

「ではゼイン様も一緒に」

 あんなことがあった後なので一人で行くのは心細い。

「いや俺は、少し用を済ませてから向かう。だから先に行っていてはくれないか?」

「え?」

 今までこのような事で断られたことはないのに。

「大丈夫すぐに追いかけるから。フィリオーネの歌には必ず間に合わせる、だから安心して」

 そう言って背を向けるゼイン様の腕に血が付いているのを見つける。

(まさか、怪我をして……!)

 それを隠すためになのだろうか。

 心配でたまらない。

「フィリオーネ様、行きましょう。もう始まってしまいますから」

 ルミネに手を引かれ、私は舞台へと向かう。けれど頭の中はゼイン様の事でいっぱいだ。

(私のせいであんな怪我を負わせてしまった)

 私がもっとしっかりしていたら、もっと強ければ、あんな事にはならなかっただろう。

 悔いても悔やみきれない。

 ふらふらと舞台袖に行くと、ククルが既に到着していた。

「あらフィリオーネ。よく顔を出せたわね、逃げ出すかと思ったのに」

 そんな嫌みなど少しも気にはならない。

「あたしがカナリアになれば、あなたは終わりよ。シャルペ家からも追い出され、貴族からも見向きもされない。みじめな人生を歩むようになるわよ。逃げるなら今のうちよ」

「そう」

 ククルの言う事なんて今はどうでもいい。ゼイン様の事が心配で、返事をするのも億劫だ。

「何よその態度……! 決めた、あたしがカナリアになったらお触れを出すわ。あなたを国外に追放するって」

 そんな権限が与えられるなんて聞いたこともないけれど、そんな事で心は動かない。

「なんとか言いなさいよ、鶸のくせに!」

 キィキィとわめくククルだけれど、何かを話す気にはなれない。

(ゼイン様……どうかご無事でありますように)

 そう願うしかなかった。





 ◇◇◇





「急いで別な服を、フィリオーネの歌に間に合うように」

 ゼインは急いで体を拭いて、レイドに新しい衣装を命じる。

「あんな狭い所でやり合うんじゃなかった。くそ、折角フィリオーネの衣装と合わせたのに!」

 返り血を浴びてしまったことは完璧に誤算であった。

 フィリオーネに危害を加えられるかもしれないとは想定していたが、やはり目の当たりにすると血が上ってしまうものだ。

(血が付いたなどと言えば繊細なフィリオーネの事だ、倒れてしまうかもしれない)

 そんな心配を駆けたくなくてそそくさと離れてしまったが、本当はあのまま一緒に舞台へと向かって間近で応援したかったのに。

 一体誰だ、刺客を放ったのは。

「絶対に許さない」



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