手のひらサイズの令嬢はお花の中におりました

しろねこ。

文字の大きさ
12 / 31

呪い返しと婚約解消

しおりを挟む
「アルフレッド様、発言の許可を頂きたく思います」
ミューズの後ろに控えていたマオが手を上げる。

「許す。どうした? マオ」
国王アルフレッドは息子の従者に許可を出した。

皆の視線がマオに集中する。

「このまま婚約を交わすということは、呪いについては秘密にする、ということですよね?」

「そうなるな。サミュエルの存在を外に出したくないという理由もあるが」
アドガルムには呪いを解けるものがいると知られたら、サミュエルが狙われてしまう可能性もある。

呪いの力は危険性の高さに反して、認知度が低く、扱える者は更に少ない。

無理矢理にでもサミュエルを手に入れようとする者が出ても、おかしくないのだ。

「ではミューズ様を陥れた令嬢方の処罰について、お聞きしたいのです。このままアドガルムとしては済ますわけはないと思ってますが、どうするおつもりですか?」

「もちろん何らかの処分は秘密裏にする予定ではあるが、表立っては難しいだろう」
呪いの証拠を提出できない限り、令嬢方への処罰はアドガルムからは要求出来ない。

ミューズへの悪評を流した事や、ドレスを汚した罪くらいしか問い詰められないだろう。

あとは私刑という方法だ。

「重い処罰を望むです。ティタン様が見つけなければ、どうなっていたか、考えるだけでゾッとするです。そのような事をされてこのままとは、許せない」
たとえ表立った処罰は無理でも、裏でぜひ痛い目に合わせたいと、マオは訴えた。

「それは俺も同感です。父上、極刑を望みます。なんなら俺が手を下しに行きます」

「なら僕が手を下すので、ティタン様は大人しくしてて欲しいです。僕の手で復讐するので」

「俺がするから、マオがミューズと共に待っていてくれ」
お互い復讐をするのは自分だとヒートアップしていた。

「落ち着け、二人共。ミューズ嬢が困っているではないか」
アルフレッドがティタンとマオを諌める。

復讐の話となり、ミューズはおろおろしていた。

「二人共、何もそこまでしなくていいんですよ。こうして無事なんですから」

「「良くない」」
二人は声を揃えて言った。

「君は自分の魅力がわかってない。俺以外の男にでも見つかってたら危なかったんだぞ」

「あのような姿のミューズ様をそのままにしていくとは、非道にも程があるです。同じ目に合わせなきゃ許せないです」

「それ、出来るよ」
術師のサミュエルがマオの言葉を受けて、さらっと言った。

「準備は必要だけど、呪い返し出来る。そうすれば呪いをかけた者たちが同じ目に合うだけだ、誰も手を下したことにならない」
サミュエルは事もなげに言った。

「それならば、呪いの薬を作った者に行くのではないのか?」
エリックの疑問に首を横に振る。

「これだけ高度の呪いを作るものが、そんなヘマをするとは思えません。購入者、つまり実行者にその権利が移ります。呪いとは、本当に厭らしい力ですので」
サミュエルはまた床に座り込んだ。 

立っているだけで疲れたらしい。

「薬を作る時間と体力を回復させるために、少々お時間は頂きますが。呪いを返すタイミングをお教えくだされば、合わせます」
エリックは少し考えた。

「一週間後はどうだ。この城で婚約パーティを開こう。リンドールの貴族をひと通り招待する。件の令嬢も、ディエス殿もだ」
ミューズとマオを見た。

「マオとミューズ嬢は背丈が似てると言ったな。ヴェールやウィッグを被り入場や挨拶の際に身代わりとなってくれ。喋らなければバレないだろ」

「僕ですか?!」

「体型は、まぁ、胸は布を詰めればいけるだろ。母上、お揃いのドレスを一組用意してほしいです。体型の違いがばれづらいデザインがいいですね」
アナスタシアにも協力を仰ぐ。

「ふふ、マオにドレスなんて面白そうね」
やる気になっているようだ。

「当日は俺もレナンもサポートに入る。話しかけられたらフォローするが、ばらすタイミングをいつにするか」
口元に手を当てている。

「目立つとしたらダンスの時間ではないかしら? わたくしとマオが揃って中座し、そこでミューズ様の呪いを解いてもらって、ミューズ様と戻るのはどうでしょう?」
レナンの提案にエリックも頷く。

「ではそれで行こう。ティタンはどうだ?」
渋い顔をしている弟に声をかける。

「わかりました」
本当は婚約パーティをしたくなかったのだが、ミューズが受けた仕打ちを返せる場を作れるのはいいかもしれない。

そしてその勢いで婚約が駄目になる可能性もあると考えれば、ティタンにとっては悪いことではない。

「お待ち下さい、私は復讐を望んでおりません!」
あまりにも皆が賛同するものだから、ミューズは焦ってしまった。

言葉を挟む前に次々と皆が案を出すものだから、なかなか言い出せなかった。

「それに、そんな婚約パーティをしたいわけではありません……ティタン様との婚約なのだから、きちんとお披露目したいです」

折角憧れの人と婚約をするのだから、良いパーティにしたい。


「そうだな、すまない。復讐話に盛り上がってしまった」
ミューズの気持ちを置いてきぼりにしてしまった。

「改めてしっかりとしたパーティを開こう」

「……」
ティタンがその言葉を聞いて、顔を暗くしている。

少々気持ちが沈んでいるように感じられ、ミューズは気がかりになった。

ティタンは視線を感じ、誤魔化すように話す。

「ミューズ嬢の婚約パーティならば、きちんとしたものを挙げさせたい」
本心が洩れ出た。

「そうだな、案を変える。申し訳なかった」
エリックは素直に謝った。

ティタンはそうじゃないと言わんばかりに首を横に振った。

「俺との婚約パーティもしないということです。呪いを解いたら、ミューズ嬢との婚約解消を願います」






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

処理中です...