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婚姻への一歩
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「すまなかった、ミューズ。すまない」
ティタンはそっとミューズへ手をのばす。
大きい、ゴツゴツとした男性の手。
ミューズはその手にすっと顔を寄せる。
「好きです、好き……」
「俺もミューズが好きだ。他の誰よりも」
緊迫した空気がふいに和らぐ。
ふぅっとエリックはため息をついた。
「父上、手は大丈夫ですか?」
「痛い。後で治癒師に回復を頼むつもりだ」
アルフレッドはだらんと手をおろしていた。
殴る方も結構痛いものだ。
「父上が行かねば俺が行くつもりでした」
「いや、ここは父親の威厳として、いたたたたっ……あいつどんな鍛え方してるんだ」
赤くなった手は動かすだけで痛い。
アルフレッドの顔が引き攣る、先程よりも腫れてきていた。
「本当に女心がわからない息子ばかりね……レナンも何かあればきちんと言って頂戴」
「そうですね、エリック様も時々意地悪なので、困った時はアナ様に相談させてもらいますわ」
エリックもばつが悪そうだ。
「意地悪は否定出来ないな。直すから、俺を捨てないでくれよ」
「どうでしょうね」
レナンはにっこりと笑顔を作りエリックを見つめていた。
話し合いは終わり、皆仕事にもどっていく。
「もっと二人で話し合うです、僕は疲れたのです」
そう言うとマオはティタンにミューズを託す。
ティタンの部屋で二人、沈黙してしまった。
「ティタン様、頬は痛くないですか?」
赤みの残る頬に目がいった。
「少しな。しかしこれは仕方ないものだ、殴られるだけの事を言ったのだから」
実際には殴ったアルフレッドの方が傷は酷かったのだが、二人はその事を知らない。
「では私も。ティタン様、顔を近づけて下さい」
ミューズは握り拳を突き出した。
「そうだな。君には権利がある」
ミューズがそのような提案をすることに少し驚いたが、黙って右の頬を差し出した。
「では」
ミューズが振りかぶった。
温かなものが感じられる。
「何だ?」
予想した衝撃が来ない、寧ろ痛みが引いていく。
「回復魔法です、反対側も出してください」
言われるがまま差し出すとこちらも痛みがなくなった。
「ありがとう。それにしても驚いた、ミューズは魔法が使えるんだな」
「ええ。見つけてくれた時のあれも実は魔法です、防御壁をお花のようにしていたのですわ」
あの時は、これからどうするかで、いっぱいいっぱいだった。
見つかりづらいようにお花の形にカモフラージュしてたつもりが、あっさりティタンに見つかってしまった。
「見つけてくれたのがティタン様で良かったです。そうでなければ私、あなたの隣に居られなかった」
「そうだな。俺もミューズでなければ助けなかったかもしれないな」
「そうなんですか?!」
ミューズはビックリした。
「そのままリンドールの者へと託して終わり、だったろうな。ミューズだから親身になれた。あの時は呪われたなどと周囲に知れたら、余計な悪評でミューズが傷つくんじゃないかと知られぬようにと必死だった」
ティタンは掌を差し出した。
「おいで」
ミューズは恐る恐るティタンの掌に乗ってみる。
大きく厚みがあり、安定感がある手だ。
「軽いな」
改めてその軽さに驚く。
「俺もずっと君が気になっていた」
目線を合わせ、ゆっくりと話しをしていった。
「シグルド殿の孫娘として、よく彼と居たもんな。むさい騎士達の中に可憐な令嬢が来てるって皆気になっていたんだぞ」
バレバレだったと話される。
「そちらのキール殿の婚約者ではないかと他の騎士には言われていたよ、よく話をしていたから」
「キールは従兄弟ですから、婚約者じゃありません」
ミューズはそのように見られていたなど知らなかった。
「俺は知っていたし、その誤解は他の男が近づかなくてよかったからそのままにしていた。が、異性と話すとはそういうものだ。皆面白そうな話題に乗って、それが尾ひれがついて良からぬ噂になる。なんでもだ。ユミルとの話もそうだな。あれも噂だったと話していたが」
ミューズはこくこくと頷く。
「そうです。彼とは本当に何もなくて、寧ろそんな噂に困ってました。それがこんなことになるなんて」
「本当だな……その噂がなければ真っ向から迎えに行こうと思ったのに」
「そう、だったのですか?」
ティタンは恥ずかしさに思わず目を逸らす。
「本当だ。だが、俺も噂に踊らされていた。だから、こんなにも遠回りしてしまって傷つけた……言いたいことは言った方が良かったな」
どんよりと落ち込むティタンを励まそうとミューズは思考を巡らせる。
「私もユーリ様との仲を疑っていましたから、あの時に打診がきても、父が断ったかもしれませんわ。丁度いいタイミングだったのですよ、きっと」
懸命に励ます。
「いや、どう考えてもいいタイミングとは言えないが。まぁいい、ありがとな」
励ましの言葉だけ頂く。
「あとの問題は、ミューズを傷つけた奴らに報いを受けさせる事だな」
その決意だけは揺らがなかった。
ティタンはそっとミューズへ手をのばす。
大きい、ゴツゴツとした男性の手。
ミューズはその手にすっと顔を寄せる。
「好きです、好き……」
「俺もミューズが好きだ。他の誰よりも」
緊迫した空気がふいに和らぐ。
ふぅっとエリックはため息をついた。
「父上、手は大丈夫ですか?」
「痛い。後で治癒師に回復を頼むつもりだ」
アルフレッドはだらんと手をおろしていた。
殴る方も結構痛いものだ。
「父上が行かねば俺が行くつもりでした」
「いや、ここは父親の威厳として、いたたたたっ……あいつどんな鍛え方してるんだ」
赤くなった手は動かすだけで痛い。
アルフレッドの顔が引き攣る、先程よりも腫れてきていた。
「本当に女心がわからない息子ばかりね……レナンも何かあればきちんと言って頂戴」
「そうですね、エリック様も時々意地悪なので、困った時はアナ様に相談させてもらいますわ」
エリックもばつが悪そうだ。
「意地悪は否定出来ないな。直すから、俺を捨てないでくれよ」
「どうでしょうね」
レナンはにっこりと笑顔を作りエリックを見つめていた。
話し合いは終わり、皆仕事にもどっていく。
「もっと二人で話し合うです、僕は疲れたのです」
そう言うとマオはティタンにミューズを託す。
ティタンの部屋で二人、沈黙してしまった。
「ティタン様、頬は痛くないですか?」
赤みの残る頬に目がいった。
「少しな。しかしこれは仕方ないものだ、殴られるだけの事を言ったのだから」
実際には殴ったアルフレッドの方が傷は酷かったのだが、二人はその事を知らない。
「では私も。ティタン様、顔を近づけて下さい」
ミューズは握り拳を突き出した。
「そうだな。君には権利がある」
ミューズがそのような提案をすることに少し驚いたが、黙って右の頬を差し出した。
「では」
ミューズが振りかぶった。
温かなものが感じられる。
「何だ?」
予想した衝撃が来ない、寧ろ痛みが引いていく。
「回復魔法です、反対側も出してください」
言われるがまま差し出すとこちらも痛みがなくなった。
「ありがとう。それにしても驚いた、ミューズは魔法が使えるんだな」
「ええ。見つけてくれた時のあれも実は魔法です、防御壁をお花のようにしていたのですわ」
あの時は、これからどうするかで、いっぱいいっぱいだった。
見つかりづらいようにお花の形にカモフラージュしてたつもりが、あっさりティタンに見つかってしまった。
「見つけてくれたのがティタン様で良かったです。そうでなければ私、あなたの隣に居られなかった」
「そうだな。俺もミューズでなければ助けなかったかもしれないな」
「そうなんですか?!」
ミューズはビックリした。
「そのままリンドールの者へと託して終わり、だったろうな。ミューズだから親身になれた。あの時は呪われたなどと周囲に知れたら、余計な悪評でミューズが傷つくんじゃないかと知られぬようにと必死だった」
ティタンは掌を差し出した。
「おいで」
ミューズは恐る恐るティタンの掌に乗ってみる。
大きく厚みがあり、安定感がある手だ。
「軽いな」
改めてその軽さに驚く。
「俺もずっと君が気になっていた」
目線を合わせ、ゆっくりと話しをしていった。
「シグルド殿の孫娘として、よく彼と居たもんな。むさい騎士達の中に可憐な令嬢が来てるって皆気になっていたんだぞ」
バレバレだったと話される。
「そちらのキール殿の婚約者ではないかと他の騎士には言われていたよ、よく話をしていたから」
「キールは従兄弟ですから、婚約者じゃありません」
ミューズはそのように見られていたなど知らなかった。
「俺は知っていたし、その誤解は他の男が近づかなくてよかったからそのままにしていた。が、異性と話すとはそういうものだ。皆面白そうな話題に乗って、それが尾ひれがついて良からぬ噂になる。なんでもだ。ユミルとの話もそうだな。あれも噂だったと話していたが」
ミューズはこくこくと頷く。
「そうです。彼とは本当に何もなくて、寧ろそんな噂に困ってました。それがこんなことになるなんて」
「本当だな……その噂がなければ真っ向から迎えに行こうと思ったのに」
「そう、だったのですか?」
ティタンは恥ずかしさに思わず目を逸らす。
「本当だ。だが、俺も噂に踊らされていた。だから、こんなにも遠回りしてしまって傷つけた……言いたいことは言った方が良かったな」
どんよりと落ち込むティタンを励まそうとミューズは思考を巡らせる。
「私もユーリ様との仲を疑っていましたから、あの時に打診がきても、父が断ったかもしれませんわ。丁度いいタイミングだったのですよ、きっと」
懸命に励ます。
「いや、どう考えてもいいタイミングとは言えないが。まぁいい、ありがとな」
励ましの言葉だけ頂く。
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その決意だけは揺らがなかった。
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