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そしてパーティへ
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様々な令息令嬢の集まるパーティは思った以上に心地良かった。
さすが上位貴族のみだ、洗練されたマナーと品位である。異母妹の仕草では恥としかならなかった。
なるべく距離をとり、顔を合わせないようにと出る時間を早め、かち合わないようにしたのだが、遠目から見てもドレスのチョイスもひどい。
ゴテゴテの宝石と胸元のあいたドレス。メイクも濃いため、きれいというより威圧感がある。
媚を売るような高い声に頭痛がしてきた。
ミューズはというと目立たないようにとしずしずと行動しているが、静かな注目を浴びている。装飾は少なめで流行りを取り入れていないドレスは地味だが品がある。
母である王妃が懇意にしていた仕立て屋で購入したものなので、品質は確かだ。
これまでミューズはほとんどの茶会やパーティに参加していなかった。
しかしそのオッドアイにて誰であるかの憶測は立っており、そしてあの悪評のため誰も近づかない。
王族であるミューズに挨拶に来る者はなく、カレンの方ばかり。
噂に踊らされているのだろうが、一目置かれているのは瞭然だ。
やがて王太子達が、入場をし挨拶が始まる。パーティ開催の合図だ。
第一王子のエリックはまさに王子といった風貌で、金髪に緑の目をしている。
適度に鍛えた身体は細すぎず、太すぎず、笑顔が爽やかだ。
第二王子のティタンはエリックよりも背が高く、体格もいい。明らかに騎士という風貌だ。薄紫の髪に淡い黄緑色の瞳、厚い胸板はミューズの理想通りだ。
ぽわんとして見つめていると、後ろからトントンと肩を叩かれる。
「姉様、お久しぶりです」
「リオン!」
懐かしい再会に心弾む。
前回会ったのは母の命日だが、男の子の成長は早い。もうミューズの背丈くらいに成長していた。
シュッとしたスタイルにサラサラの青い髪と瞳。こちらも王子様として申し分ない容姿だと姉としても誇らしい。
「今日の姉様はいつも以上にお美しいです。もちろん普段も素敵ですが、ますます母様に似てきましたね」
にこりと微笑むリオンはマナーもしっかりと学んでいるようで、安心する。
私がしっかりと王家を支え、この大事な弟にきちんと引き継がねば。
改めて自分の使命を心に刻み、しばらく歓談に興じる。
王太子たちは挨拶で忙しそうだし、あちらに行くのは後でもいいだろう。
すごい人だかりに近づけそうにないし。
そう思っていたのだが…
「挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。アドガルム国のティタン=ウィズフォードです。リンドール国のリオン殿とミューズ殿ですね?」
まさかあちらから来るとは思わず、驚いてしまった。
「本来はこちらから挨拶に出向かなければならないのに、申し訳ございません。私はリンドール国第一王女ミューズ=スフォリアと、こちらは弟のリオン=スフォリアでございます」
「リオン=スフォリアです。この度はご招待にあずかり誠にありがとうございます。アドガルム王国のますますのご発展をお祈り申しあげます」
「堅苦しい挨拶はぬきにして頂きたい。俺は二人と仲良くなりたいのです」
優雅にカテーシーをするミューズと美しい所作で礼をするリオンににこやかな笑顔で接する。
「なかなか社交界でお二人に会うことが叶わず、今回はこのように招待状を送ってしまった。迷惑でなかっただろうか?」
「そのような事ございませんわ、こうしてご招待して頂きとても嬉しいです。とても素敵なパーティで心が踊るようですわ」
本心からの言葉でミューズはとてもうきうきしている。
ティタンと再び会うことが出来て、そして素敵な格好を見て惚れ惚れしていた。
ミューズの視線とティタンの視線が絡み合う。
「もしかしてミユ殿…?」
「えっ?」
まさかバレてしまった?しかし、あの時のぼろぼろの姿と今の姿が重なるわけはないと思ったのだが、ティタンの勘は鋭すぎるようだ。
「イヤですわ、ティタン様。愛称で呼ぶのは親しき仲だけのものです。初対面の者にそのような呼び名をしては婚約者様に怒られてしまいますわ」
動揺を押し殺し、コロコロと笑い飛ばす。
その様子である程度悟ったが、周りに配慮しこの話題は止めにしようと思った。
「…失礼した。しかし俺にはいまだ婚約者がいないので大丈夫だ。ミューズ殿の婚約者殿に無礼を働いてしまったな」
この場でする話ではないなとティタンも気持ちを抑え、謝罪をする。表情は詳しく問いただしたいとそわそわしているのがわかる。
「姉はもまだ婚約者がおりません。そうお気になさらず」
「誠か?!」
ティタンの表情がぱぁーっと明るくなる。
「えぇ。恥ずかしながら我が国の内情をいくらかお聞きしているでしょう。姉は僕が1人前になるよう日々尽力しているのです。それこそ寝る間も惜しんで恋愛もせずに。僕としては早く自分の幸せを掴んでほしいのですが」
「リオン!」
ペラペラと国の、自分の恥部を話され顔を真っ赤にする。淑女らしからぬ大きな声を出してしまい恥ずかしさでいっぱいだ。
「ミューズ殿は結婚したいという気持ちは…?」
「とうに諦めております。ティタン様もお聞きのように巷に流れている噂もありますし…そしてこの瞳、不気味でしょう?」
街で合ったときは分厚い眼鏡を掛け色を隠していたが、ミューズの噂はティタンの耳に必ず入っているはずだ。
好意を持つティタンにも本当は嫌われているのじゃないかと、そう考えるだけで怖くて涙が出そうだ。
「噂?根も葉もないデタラメであろう。我が国にそのようなデタラメに惑わされるものはおらぬ。
それにミューズ殿の瞳はとてもキレイだ。美しく見ていると吸い込まれる」
真摯に見つめられ、その眩しさに思わず目が眩む。
「お気遣い大変嬉しく思います」
この人は本当にミューズを喜ばせる言葉を言ってくれる。心がくすぐったい。
長い睫毛がふせられ照れくさいはにかむような笑顔に、ティタンは釘付けになってしまう。
どんな表情もなんときれいなことか。
「ミューズ殿…」
そっと優しく手に触れるとティタンが跪く。
「俺と結婚してくれないか?」
突然の行動にミューズは狼狽え、周囲からの視線も集まる。
「け、結婚て。私達まだ知り合ったばかりですよ?!」
「ひと目見たときから心惹かれている。あなた以外考えられない」
パーティの主役である王子が跪いているのだ。悪評だらけの王女に。
注目が集まってくるのを感じて普段冷静なミューズでも焦りが生じる。
「とにかく立ってください、お召し物も汚れますし私なんかにそのような言葉勿体のうございます」
「俺の事を好いてはいないのか?」
悲しげな表情で見つめられ、たじたじになる。
助けを求めるようリオンを見るが、姉の困惑と対照的にワクワクした表情で見ている。
いいぞ、もっとやれと目が語っていた。
弟はこの恋を推すようだ。
「いきなり結婚は無理です…まずは婚約からでどうでしょうか」
いち早く場を収めるため折衷案を出すと、ようやくティタンは立ってくれた。
「本当だな、撤回はさせぬぞ。必ず幸せにすると約束する」
婚約まで持ち込めはあとはどうとでもなると両手を握りしめられ、ぐっと見つめられる。
ミューズより頭2つ分高いので威圧感はあるが、怖いという思いはなかった。
「周りが証人だ。早速婚約の誓約書を作成する、良いなリオン殿」
「了承しました」
「ちょっと?!」
身内であるリオンが了承しては断る事が出来なくなる。
「宰相には僕から話しますよ。父はもしかしたら泣くかもしれませんが、姉様の幸せな姿を見ればきっと喜びます。どうか観念してください」
さらりと逃げ道を絶たれ、にこやかな笑顔を向けられる。宰相はこの弟に弱い、断ることはないだろう。
絆を強めたい隣国の王子だ、身分も申し分ない。第二王子ということもあり、宰相権限で推されるだろう。
あっという間の展開にミューズはクラクラしてきた。
好いてはいる、しかし、展開が早すぎる。
もしかして、自分の知らないところで嵌められた?
そんな事さえ思い浮かんでしまった。
さすが上位貴族のみだ、洗練されたマナーと品位である。異母妹の仕草では恥としかならなかった。
なるべく距離をとり、顔を合わせないようにと出る時間を早め、かち合わないようにしたのだが、遠目から見てもドレスのチョイスもひどい。
ゴテゴテの宝石と胸元のあいたドレス。メイクも濃いため、きれいというより威圧感がある。
媚を売るような高い声に頭痛がしてきた。
ミューズはというと目立たないようにとしずしずと行動しているが、静かな注目を浴びている。装飾は少なめで流行りを取り入れていないドレスは地味だが品がある。
母である王妃が懇意にしていた仕立て屋で購入したものなので、品質は確かだ。
これまでミューズはほとんどの茶会やパーティに参加していなかった。
しかしそのオッドアイにて誰であるかの憶測は立っており、そしてあの悪評のため誰も近づかない。
王族であるミューズに挨拶に来る者はなく、カレンの方ばかり。
噂に踊らされているのだろうが、一目置かれているのは瞭然だ。
やがて王太子達が、入場をし挨拶が始まる。パーティ開催の合図だ。
第一王子のエリックはまさに王子といった風貌で、金髪に緑の目をしている。
適度に鍛えた身体は細すぎず、太すぎず、笑顔が爽やかだ。
第二王子のティタンはエリックよりも背が高く、体格もいい。明らかに騎士という風貌だ。薄紫の髪に淡い黄緑色の瞳、厚い胸板はミューズの理想通りだ。
ぽわんとして見つめていると、後ろからトントンと肩を叩かれる。
「姉様、お久しぶりです」
「リオン!」
懐かしい再会に心弾む。
前回会ったのは母の命日だが、男の子の成長は早い。もうミューズの背丈くらいに成長していた。
シュッとしたスタイルにサラサラの青い髪と瞳。こちらも王子様として申し分ない容姿だと姉としても誇らしい。
「今日の姉様はいつも以上にお美しいです。もちろん普段も素敵ですが、ますます母様に似てきましたね」
にこりと微笑むリオンはマナーもしっかりと学んでいるようで、安心する。
私がしっかりと王家を支え、この大事な弟にきちんと引き継がねば。
改めて自分の使命を心に刻み、しばらく歓談に興じる。
王太子たちは挨拶で忙しそうだし、あちらに行くのは後でもいいだろう。
すごい人だかりに近づけそうにないし。
そう思っていたのだが…
「挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。アドガルム国のティタン=ウィズフォードです。リンドール国のリオン殿とミューズ殿ですね?」
まさかあちらから来るとは思わず、驚いてしまった。
「本来はこちらから挨拶に出向かなければならないのに、申し訳ございません。私はリンドール国第一王女ミューズ=スフォリアと、こちらは弟のリオン=スフォリアでございます」
「リオン=スフォリアです。この度はご招待にあずかり誠にありがとうございます。アドガルム王国のますますのご発展をお祈り申しあげます」
「堅苦しい挨拶はぬきにして頂きたい。俺は二人と仲良くなりたいのです」
優雅にカテーシーをするミューズと美しい所作で礼をするリオンににこやかな笑顔で接する。
「なかなか社交界でお二人に会うことが叶わず、今回はこのように招待状を送ってしまった。迷惑でなかっただろうか?」
「そのような事ございませんわ、こうしてご招待して頂きとても嬉しいです。とても素敵なパーティで心が踊るようですわ」
本心からの言葉でミューズはとてもうきうきしている。
ティタンと再び会うことが出来て、そして素敵な格好を見て惚れ惚れしていた。
ミューズの視線とティタンの視線が絡み合う。
「もしかしてミユ殿…?」
「えっ?」
まさかバレてしまった?しかし、あの時のぼろぼろの姿と今の姿が重なるわけはないと思ったのだが、ティタンの勘は鋭すぎるようだ。
「イヤですわ、ティタン様。愛称で呼ぶのは親しき仲だけのものです。初対面の者にそのような呼び名をしては婚約者様に怒られてしまいますわ」
動揺を押し殺し、コロコロと笑い飛ばす。
その様子である程度悟ったが、周りに配慮しこの話題は止めにしようと思った。
「…失礼した。しかし俺にはいまだ婚約者がいないので大丈夫だ。ミューズ殿の婚約者殿に無礼を働いてしまったな」
この場でする話ではないなとティタンも気持ちを抑え、謝罪をする。表情は詳しく問いただしたいとそわそわしているのがわかる。
「姉はもまだ婚約者がおりません。そうお気になさらず」
「誠か?!」
ティタンの表情がぱぁーっと明るくなる。
「えぇ。恥ずかしながら我が国の内情をいくらかお聞きしているでしょう。姉は僕が1人前になるよう日々尽力しているのです。それこそ寝る間も惜しんで恋愛もせずに。僕としては早く自分の幸せを掴んでほしいのですが」
「リオン!」
ペラペラと国の、自分の恥部を話され顔を真っ赤にする。淑女らしからぬ大きな声を出してしまい恥ずかしさでいっぱいだ。
「ミューズ殿は結婚したいという気持ちは…?」
「とうに諦めております。ティタン様もお聞きのように巷に流れている噂もありますし…そしてこの瞳、不気味でしょう?」
街で合ったときは分厚い眼鏡を掛け色を隠していたが、ミューズの噂はティタンの耳に必ず入っているはずだ。
好意を持つティタンにも本当は嫌われているのじゃないかと、そう考えるだけで怖くて涙が出そうだ。
「噂?根も葉もないデタラメであろう。我が国にそのようなデタラメに惑わされるものはおらぬ。
それにミューズ殿の瞳はとてもキレイだ。美しく見ていると吸い込まれる」
真摯に見つめられ、その眩しさに思わず目が眩む。
「お気遣い大変嬉しく思います」
この人は本当にミューズを喜ばせる言葉を言ってくれる。心がくすぐったい。
長い睫毛がふせられ照れくさいはにかむような笑顔に、ティタンは釘付けになってしまう。
どんな表情もなんときれいなことか。
「ミューズ殿…」
そっと優しく手に触れるとティタンが跪く。
「俺と結婚してくれないか?」
突然の行動にミューズは狼狽え、周囲からの視線も集まる。
「け、結婚て。私達まだ知り合ったばかりですよ?!」
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パーティの主役である王子が跪いているのだ。悪評だらけの王女に。
注目が集まってくるのを感じて普段冷静なミューズでも焦りが生じる。
「とにかく立ってください、お召し物も汚れますし私なんかにそのような言葉勿体のうございます」
「俺の事を好いてはいないのか?」
悲しげな表情で見つめられ、たじたじになる。
助けを求めるようリオンを見るが、姉の困惑と対照的にワクワクした表情で見ている。
いいぞ、もっとやれと目が語っていた。
弟はこの恋を推すようだ。
「いきなり結婚は無理です…まずは婚約からでどうでしょうか」
いち早く場を収めるため折衷案を出すと、ようやくティタンは立ってくれた。
「本当だな、撤回はさせぬぞ。必ず幸せにすると約束する」
婚約まで持ち込めはあとはどうとでもなると両手を握りしめられ、ぐっと見つめられる。
ミューズより頭2つ分高いので威圧感はあるが、怖いという思いはなかった。
「周りが証人だ。早速婚約の誓約書を作成する、良いなリオン殿」
「了承しました」
「ちょっと?!」
身内であるリオンが了承しては断る事が出来なくなる。
「宰相には僕から話しますよ。父はもしかしたら泣くかもしれませんが、姉様の幸せな姿を見ればきっと喜びます。どうか観念してください」
さらりと逃げ道を絶たれ、にこやかな笑顔を向けられる。宰相はこの弟に弱い、断ることはないだろう。
絆を強めたい隣国の王子だ、身分も申し分ない。第二王子ということもあり、宰相権限で推されるだろう。
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