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思惑(リンドール国)
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リンドールでは不平不満が募っていた。
いくら陳情書を出しても何もしない。
何も返ってこない。
今までであればレナンとミューズが手分けして行い、時には内緒でミューズが視察をしていたので的確に問題を解決できていた。
そのミューズが隣国へ嫁いでから目に見えて情勢は悪くなっていった。
悪役王女であるミューズを追い出せば、暮らしは良くなるはずだった。
しかし、現実は逆だ。
あれだけカレンが行なっていた見せかけだけの孤児院訪問もとんと見かけなくなり、さらに税の徴収も上乗せされる。
橋や公共の施設が壊れてもなかなか修理されず視察も来ない。
一体どうしたことかと王宮に話に行くも門前払い。
宰相も倒れてしまったとなり、いよいよ民の不安も最高潮に達していく。
「何故こうも上手くいかん!」
愚鈍な女ごときが行なっていた執務が、何故これだけ頭数がいても出来ないのだ。
執務は目に見えて増えていき、外交すら滞っている。
陳情書など目を触れることなく端から破棄されていた。
そもそも執務は全てレナンに回されていたので、官僚たちはまず一から調べ直さねばどういう問題なのか、どういった解決法がいいのかさっぱりわからなかった。
歴史については皆学んでいる。
しかし現在進行形で変わっていく情報に、とうに追いつけていないのだ。
問題は単体ではなく、複数の事が積み重なって起きることが多い。
水害が起きれば、過去そこで水害が起きたことはあるのか。
何故起きたのか。
その土地にはもともと何があったのかなど、歴史を掘り起こさなければならない。
国が山を切り崩したか、はたまた知らない間に土地のものが治水の改変を行ってしまったのか、などの調査が必要だ。
入念な準備と調査でわかるものを、付け焼き刃で報告書だけ見たものに理解できるわけがない。
上辺だけで解決したはずの問題がまた舞い戻ってきて、さらに執務が増える。
いたちごっこだ。
一方カレン達母娘も外出を禁じられ、イライラしていた。
支度金は送られてこず、アドガルムからの連絡もない。
孤児院に行かなくて済むのは清々してるが、街中がピリピリとしていて、新しいドレスを買いに行けないのがストレスだ。
せっかくもらった装飾品をつけて出かける茶会にも呼ばれず、母娘で不貞腐れていた。
「ああ、エリック様。私を早く迎えに来て」
宝石箱を大事そうに抱え、悲劇のヒロインとして呟く。
(きっとあの性悪な義姉のせいでなかなか動けないのね。金に意地汚い女ですもの。支度金を送りたくないとワガママいってるんだわ)
自分がこの城に来た時、恥ずかしながらドレスなどを持っていなかった。
ほんの数着買おうとしたら、
「買い過ぎではないかしら。このお金は領民達が一生懸命働いてくれたおかげなの、大切に使って頂きたいわ」
自分は数十着もドレスを持っているのに、カレンが買おうとすると反対してくるなんて。
自分の使えるお金を減らしたくないからって反対するとは、間違ってる。
反論すると訳のわからない理屈を並べてやり込めようとしてくる。
うるさいので大臣に泣きつき、ミューズを奥の塔に押し込めた。
その塔は昔、国の繁栄を願って王族が神に願いを捧げる場所であったそうだ。
天に近いよう高い塔として建てられた為、住むには不便だ。
今はミューズも居なくなり、祈る者もいなくなったが知ったことではない。
祈るなんて馬鹿らしい。
ちなみにミューズがドレスについて苦言を呈したのは、カレンが高いパーティ用のドレスを闇雲に買おうとしたからだ。
夜会用、式典用、茶会用や訪問用や普段着用など、用途に合わせて様々な物がある。
ひと通り揃えるのならともかく、目的もなくパーティドレスを買うととても高くなる。
呼ばれたパーティに合わせてデザインや色を選ぶ必要があるため、見極めが必要なのであった。
それを何回言ってもカレンは理解しなかったのだ。
しまいには大臣に呼び出され、
「半端者のあなたが口を出されるものではない。世間からのご自身の評判をご存知ないのでしょうか?」
オッドアイであるミューズを蔑み、自分達で流した悪評を本当であるかのように振る舞う。
余計なイザコザを起こしたくないと思い、言われるがままにミューズは塔へ引き込もったのだ。
いくら陳情書を出しても何もしない。
何も返ってこない。
今までであればレナンとミューズが手分けして行い、時には内緒でミューズが視察をしていたので的確に問題を解決できていた。
そのミューズが隣国へ嫁いでから目に見えて情勢は悪くなっていった。
悪役王女であるミューズを追い出せば、暮らしは良くなるはずだった。
しかし、現実は逆だ。
あれだけカレンが行なっていた見せかけだけの孤児院訪問もとんと見かけなくなり、さらに税の徴収も上乗せされる。
橋や公共の施設が壊れてもなかなか修理されず視察も来ない。
一体どうしたことかと王宮に話に行くも門前払い。
宰相も倒れてしまったとなり、いよいよ民の不安も最高潮に達していく。
「何故こうも上手くいかん!」
愚鈍な女ごときが行なっていた執務が、何故これだけ頭数がいても出来ないのだ。
執務は目に見えて増えていき、外交すら滞っている。
陳情書など目を触れることなく端から破棄されていた。
そもそも執務は全てレナンに回されていたので、官僚たちはまず一から調べ直さねばどういう問題なのか、どういった解決法がいいのかさっぱりわからなかった。
歴史については皆学んでいる。
しかし現在進行形で変わっていく情報に、とうに追いつけていないのだ。
問題は単体ではなく、複数の事が積み重なって起きることが多い。
水害が起きれば、過去そこで水害が起きたことはあるのか。
何故起きたのか。
その土地にはもともと何があったのかなど、歴史を掘り起こさなければならない。
国が山を切り崩したか、はたまた知らない間に土地のものが治水の改変を行ってしまったのか、などの調査が必要だ。
入念な準備と調査でわかるものを、付け焼き刃で報告書だけ見たものに理解できるわけがない。
上辺だけで解決したはずの問題がまた舞い戻ってきて、さらに執務が増える。
いたちごっこだ。
一方カレン達母娘も外出を禁じられ、イライラしていた。
支度金は送られてこず、アドガルムからの連絡もない。
孤児院に行かなくて済むのは清々してるが、街中がピリピリとしていて、新しいドレスを買いに行けないのがストレスだ。
せっかくもらった装飾品をつけて出かける茶会にも呼ばれず、母娘で不貞腐れていた。
「ああ、エリック様。私を早く迎えに来て」
宝石箱を大事そうに抱え、悲劇のヒロインとして呟く。
(きっとあの性悪な義姉のせいでなかなか動けないのね。金に意地汚い女ですもの。支度金を送りたくないとワガママいってるんだわ)
自分がこの城に来た時、恥ずかしながらドレスなどを持っていなかった。
ほんの数着買おうとしたら、
「買い過ぎではないかしら。このお金は領民達が一生懸命働いてくれたおかげなの、大切に使って頂きたいわ」
自分は数十着もドレスを持っているのに、カレンが買おうとすると反対してくるなんて。
自分の使えるお金を減らしたくないからって反対するとは、間違ってる。
反論すると訳のわからない理屈を並べてやり込めようとしてくる。
うるさいので大臣に泣きつき、ミューズを奥の塔に押し込めた。
その塔は昔、国の繁栄を願って王族が神に願いを捧げる場所であったそうだ。
天に近いよう高い塔として建てられた為、住むには不便だ。
今はミューズも居なくなり、祈る者もいなくなったが知ったことではない。
祈るなんて馬鹿らしい。
ちなみにミューズがドレスについて苦言を呈したのは、カレンが高いパーティ用のドレスを闇雲に買おうとしたからだ。
夜会用、式典用、茶会用や訪問用や普段着用など、用途に合わせて様々な物がある。
ひと通り揃えるのならともかく、目的もなくパーティドレスを買うととても高くなる。
呼ばれたパーティに合わせてデザインや色を選ぶ必要があるため、見極めが必要なのであった。
それを何回言ってもカレンは理解しなかったのだ。
しまいには大臣に呼び出され、
「半端者のあなたが口を出されるものではない。世間からのご自身の評判をご存知ないのでしょうか?」
オッドアイであるミューズを蔑み、自分達で流した悪評を本当であるかのように振る舞う。
余計なイザコザを起こしたくないと思い、言われるがままにミューズは塔へ引き込もったのだ。
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