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第20話 変化した日常

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 先日に引き続き、私はまた学園を休む事になった。

 また体調を崩してしまったのだが、これはもう仕方ないと割り切る。

 身体的にも精神的にも負荷が大きすぎたわ。良い事もあったけれど、苦い事も色々とあって、さすがに何もなかったかのように振る舞う事は出来なかった。

 落ち着いてからは体を慣らす練習をしたが、それより問題だったのは衣類が充分にない事だ。

 制服もないので学園に行きたくてもいけず、さすがのお母様でもそこは失念していたと謝られた。

 誰もそこまで考えないから仕方ないと思うわ。

 そうして数日休んだ後に登園したのだが――

「それで、一体何が会ったの? 私が休んでる間に色々あったそうだけど」

 久しぶりの登園、そして久しぶりの友人との会話。

 登園直後は私の変貌にクラス中がざわざわしていたので、ティディとゆっくり話すことが出来なかった。

 お昼休みにようやく話せるようになったのだが、どうやらかなり状況が変わったようだ。

「そうね。まず一番大きな事はオニキス様が突然帰国された事かしら。理由もわからず、あっという間に来なくなったの」

 それについては、やはりとしか言えない。

 あれだけの事をしたのだし、うちの国王陛下とレグリスの王太子が揃う中で、花の女神様を侮辱するような言葉を聞いていたのだから、何もない方がおかしい。

「まぁ王子様って忙しいものね」

 心の中でご愁傷様、とお別れの挨拶をしておく。

 カミディオン国はあの王子の性格を矯正するのに尽力するのかしら?それとも切り捨てる方向に……いや、それ以上考えるのは止めよう。

 きっと大丈夫。うん。

「そして王子様と言えばアルね。聞いた時クラス中が騒然としたわ」

 アーネストは隠すことなくクラスの皆に話をしたそうだ。

 学園長や担任には転園の際に話をしていたので、学園側に大きな混乱はなかったが、学生にとってはそうではない。

 そしてアルは別な意味で注目を浴びていたそうだ。

 平民ながら私やライフォンと仲が良いので、あわよくばアルに私達とのパイプ役になってもらおうという魂胆を幾人かがもっていたらしい。

(簡単にはいかないわよね)

 仮にアルが本物の平民でも、ライフォンが自分と関わりの深いものを得体のしれない貴族に渡すわけはないし、私もそうだ。

 まぁもしもの話に過ぎないんだけど。

「そしてあなたの婚約者。ねぇ……本当はいつから知っていたの?」

「? いつからって、直前まで知らなかったわよ?」

 疑いの眼差しを向けられるけど、本当よ。

「知っていたらもっと色々なお話しをしていたわ」

 知らずに一緒に過ごしていたけれど、それはあくまでも友達としてだった。

 これからはもっと話が出来るし、していきたい。

「そうよね、疑ってごめんなさい。あなたの夢が叶ったのだもの、もっと素直に祝福しなきゃね」

 ティディが私の頭を撫でる。

「ずっと思い出の人を待ち続けて、そしてようやく会えたのだもの。これからは少しあの男に譲らないといけないわよね」

「え?」

 あの男ってアーネストの事?

 ティディはとてもサバサバとしていて人に媚びる事がないけど、まさかあの男呼ばわりするとは思っていなかったわ。

 仮にも王子なんだけど。

「その言い方はあんまりではないでしょうか、ティディ様」

 いつから聞いていたのか、アーネストが少し口を尖らせて会話に入ってくる。

 苦笑したライフォンも一緒だ。

「いいじゃない。あたしからヴィオラを取ったのだから、それくらい許しなさいよ」

「良くありません」

 何故そんなに喧嘩腰なのか。

 いつの間に仲が悪くなったの?

「この男、何回も顔合わせしていたあたしに今回の事を内緒にしていたし、それに加えてこれからあなたと二人で過ごしたいから、遠慮しろと言って来たのよ。後から来たくせに頭に来ちゃうわよね」

「出会ったのは僕の方が先ですから。それにティディ様もそろそろパートナーを見つけなくてはいけないでしょ? お忙しいかと思いましてね」

 もしかして二人って知り合いなの? やけに親しいし、お互いの事に詳しいし。

 私の訝しむ視線に気づいたアーネストが慌てて説明をしてくれる。

「僕はヴィオラ一筋だから安心して。ティディ様……いや、ティターニア様は王族として顔を合わせる事が多かっただけで、親しくも何ともないんだ」

 その名を聞いて驚いた。

 ブルーメ国の王女殿下の名ではないか。

「騙そうとしたのではないのよ、ただ素性をあまり大っぴらにいうものではないし、もしかしたらヴィオラを厄介な事に巻き込むかもって思ったの」

 罰の悪そうな顔をする。

「この国にとって花の女神様は信仰対象で、花の乙女はとても重要な人物だ。愛し子であるならば尚更ね。だから身分を隠してあなたの側にいたのだと思うよ」

「そう、だったんだ」

 気の合う友人だから側にいてくれたのではないのか。ちょっとだけしょんぼりとしてしまう。

「ヴィオラ、違うのよ。アーネスト、そんな誤解を招く言い方はやめて」

 ティディは怒りの形相でアーネストを睨みつける。

「ヴィオラ、あなたならわかるでしょう? あたしがそんな理由で友人を選ばないって。嫌な事はとことんしたくないし、好きなものにはぐいぐい行くタイプだって」

 確かにそうだ。

 ティディは真っすぐな性格の反面、とても頑固な気質を持っている。

 だから命じられたとしても嫌であればしないと思う。

「お父様に言われたのは本当だけど、それだけであなたと一緒に居たわけではないの。あなたが好きだから側にいたのよ」

 好きのニュアンスと頬を染める仕草にやや引っかかりを感じるものの、嘘は言っていなさそうだ。

 アーネストの表情が嫌そうになっているのがちらりと見える。

「私もあなたの事は嫌いではないわ。寧ろ好きよ」

 別に責めるつもりはない、そう言えばティディも表情が明るくなる。

「良かった、嫌われたらどうしようかと思った」

 ティディでもそう思う事はあるのね。

 新たな一面を見たわ。

 それからは皆で仲良く、とはいかないものの、四人で過ごす事が多くなった。

 アーネストは私と二人がいいがティディも譲らないので自然とこうなる。

 ライフォンは二人の仲裁役となった。

 私も二人に仲良くして欲しいと思うのだけど、こればかりは相性があるから無理にとは言えないわ。

 でも欲を言えば目の前での喧嘩はやめて、仲良くして欲しい。

 もうすぐ大事な日が来るのだから。

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