根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。

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可愛い弟妹

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レナンが語るは如何にミューズが可愛くて、世間が不当に妹を陥れているかの不満。



エリックも興味が湧いている。

調書の再調査を依頼した事もあり、この姉妹への興味は尽きない。

レナンの話と弟のティタンが懐く令嬢とはどういったものか。

すでにティタンとミューズが出会い、楽しそうに話をしているのは報告で上がってきている。

「わかります。私も弟が大好きで可愛いと思っています。しかし世間では出来の悪い弟と言われているのが気に食わない。何も知らないくせにと憤りを感じますね」
「そうですよね!何も知らないくせに語るなんて、本当に腹が立ちますわ。プンプンですの」
怒ってるのか、茶化しているのか、不思議な言い回しをするものだとエリックはウンウンと頷いて聞いている。

「レナン嬢は家族想いですね、うちと同じだ」

今回の茶会を開催した理由として、父がエリックに来る縁談が多くて決めかねてしまい、ならばいっそ二人一緒に見てもらおうと決めたものだ。

政略的に進める気は全く無く、断りたければ断わって良いと触れも出した。



ただ、宰相と大臣のところだけは来てもらうようしっかりと声を掛けた。
体裁と、誰でもいいわけではないと示すために。

「レナン嬢となら幸せな家庭が作れそうだ」
従者のニコラに目配せをすると、お好きになさいと頷かれる。
認めて貰えたようだ。



レナンはレナンで淑女らしからぬ行動を取り続けているのは、婚約を受け入れるつもりがないからだ。

将来の王妃に相応しくなければ向こうから断られるはずだから、その方が穏便に終わるし王妃なんて務まらないと思っている。




「知っての通り、今日の茶会は俺とティタンの婚約者探しのものだ。つまり君も婚約者候補の一人となる」
「?そうですわね」

エリックの口調も話題も変わる。
雰囲気もわずかに冷え込んだ。

和やかな雰囲気だったはずが、緊迫したものになる。

「ここで君を婚約者として決めても良いという事だ。レナンを気に入った、ぜひディエス殿に打診をさせてもらうよ」
「待ってください、わたくしはそのつもりでは来ておりません。父がどうしてもというので来たのです、妹も同様です。
それにわたくしはエリック様に相応しいのはマリアベル様だと思いますの。同じ公爵家ではありますが、彼女は完璧な淑女ですから」

マリアベル=リバーフェイル。
レナンと同じ公爵家で友人関係でもある。

「彼女は確かに絵に描いたような公爵令嬢だが、俺が望むのは温かく家族を思ってくれる者だ」
射抜く目はレナンを見つめる。
「俺と結婚すれば、妹への謂れのない醜聞をいくらか抑え込める。王族との姻戚関係になれるからな」

先程も牽制を行っていた。

少なくともあれを見ればエリックの前で話題に出す者はいなくなるだろう。



「うちのすぐ下の弟も容姿に自信がないと卑下をしているが、容姿などその人を示すただの指標の一つでしかない。君ならばこの考えを容易く受け入れてくれるだろ」
「人は中身ですよね、それは分かります」

「それに、君が俺とこうしてサロンに来たことを皆が目撃している。婚約者として内定したと皆思っているはずだ。このまま帰ったとしてマリアベル嬢も皆も、何もなかったと言うかな?ひいては令息達も」
「…何もありませんでしたが、面白おかしく話は出回るでしょうね」

人の口に戸は立てられない。
エリックと二人でいたという事実は邪推にまみれたものにされて、触れ回られるだろう。

ここに呼んだ時、いや、声を掛けた時からすでにエリックは決断していた。
エリックが手を出した令嬢、ということで令息達からは敬遠されるだろう。

「諦めて婚約を受けてほしいんだが」
断るデメリットはなかなか大きい。

「考えさせて下さい。さすがに父と相談したいです」

即答は避けねばならないだろう。
後の事は父に任せようと思った。

「ならば今日話した記念にこれを」
渡されたのは王家の家紋入りのカフスボタン。
「受け取れませんわ」
「次回会う時に返して頂ければ良い。口うるさい令嬢や令息がいたら、俺に言いつけると言え。それを見せれば大概の者は引くからな」

渋々ハンカチに包みしまった。

「そろそろ時間だ。ミューズ嬢達も来るだろう」

エリックは非常に満足そうだ。





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