7 / 21
続きは店の外で
しおりを挟む
持ち帰り用の手土産を持ったルドが、用事を終えてチェルシーのところに来る。
三人はとても驚いていた、ルドが何故ここにいるのか不思議なのだろう。
(あたしとデートなのよ、えっへん!)
心の中で自慢した。
王族の護衛騎士をしていたルドは知名度が高い。
見目の良さもあるが、公の場に出ることも多かったので、騎士達からの信頼も厚く、王宮を離れた今でも根強い人気を誇る。
今でも要人の護衛に呼ばれるくらいの腕前だ。
ライカもまぁまぁの人気だが、スフォリア邸ではからかわれる対象である。
ルドの視線があたしにこの人達は誰かと問うているので、よく考えて答えた。
「あまり仲良くない知り合いです」
「なっ?!」
それを聞いて文句を言いたそうな三人だが、あたしは目も合わせない。
(だって、普通の知り合いなんていったら、事情を知らないルドに話しかけそうだもの)
そんな場面は見たくない。
「ならば話すことはありませんね、すぐ出ましょう」
切り替えの早いルドはそう言って、店を出ようとする。
「チェルシーこちらをお願いしてもいいですか?」
お土産の箱を一つ渡される。
「これは?」
「あなたへのお土産です。実家から戻ったら一緒に屋敷で食べましょう」
あたしにまで買ってくれるなんて、とても優しい。
「お待ち下さい、ルド様」
リーダー格の女が話しかけてくる。
(えとベムだっけ? ベラだっけ?)
嫌いすぎて名前すら忘れてしまった。
「会計は済ませてきたのですぐ出れますよ。食べたばかりですし、馬車に乗りましょう。こちらは俺が持ちます」
全くもって応じることなく、ルドは帰り支度をしている。
進んで重い荷物を持ってくれたりと、気遣いが見えた。
三人もの人を視界にすら入れないなんて器用だなと、チェルシーは考えていた。
(あらあら無視されてるから顔を赤くしてるわ)
ルドは重い荷物を持った手で、器用にお土産の入った紙袋も持つ。
開いた手はチェルシーを立たせる為に差し伸べられた。
「行きましょう」
「ルド様!」
(無視されたのに、まだルドを呼ぶなんて凄い根性ね。羞恥心ないのかしら、不愉快だわ)
「あたし達帰るんで、ゆっくりどうぞ」
ルドの手を取り、チェルシーは立ち上がる。
「どこのどちら様かは知りませんが、気安く話しかけないで下さい」
ルドも拒絶の言葉を投げかけた。
この店をいい思い出のままにしたいから放っておいて欲しいんですけど。
「ひどいことを仰らないでください。私達はとある令嬢の侍女ですの。そちらのチェルシーと仲が良いようなので、ルド様が心配になったのですわ。その子の本性知ってますか?」
(話しかけるなって言ってるのに食い下がるなんて大した根性よね)
ルドはため息をついて、無視するのを諦めた。
「言いたいことがあるなら外でしましょう。お店側に迷惑をかけてしまいますから」
外へ出るよう促し、先に出たのを見てから、ルドはチェルシーと繋いである手を優しく握る。
「あなたとの時間を多く持ちたかったのに、すみません」
「ルドは悪くないですよ、あいつらが悪いんですから」
絡んで来たほうが悪い!
「ありがとうございます、念の為荷物仕舞っておきますね」
ルドは収納魔法でポーチに荷物を入れた。
中では時間が止まるらしく、食品を入れておいても悪くならないらしい。
「お騒がせしてすみません」
カウンターにて店主にと幾ばくかのお金を置いていく。
「いえいえ、受け取れませんよ」
誰がどう見ても悪いのは絡んだあっちなのに、ルドは生真面目だ。
ルドが何気なしに置いたお金を横見する。
それ……あたしの給料の二倍くらいあるわ。
「お店にとって迷惑をかけてしまったので、受け取ってください。足りなければ、スフォリア家侍従のルド=カリオスまで請求書を送ってください。後日改めて謝罪に訪れますから」
丁寧に礼をして、ルドはあたしの手を引いて出ていった。
ドアを通り切るまでに店長さんを見ると、顔を青くしてたわ。
赤髪のルドなんて、この辺りでも有名な騎士だもの。
時折街の警らもしてるから、見たことはあるはず。
今はオフだから雰囲気が変わってて、すぐには気づかなかったみたいだ。
三人はとても驚いていた、ルドが何故ここにいるのか不思議なのだろう。
(あたしとデートなのよ、えっへん!)
心の中で自慢した。
王族の護衛騎士をしていたルドは知名度が高い。
見目の良さもあるが、公の場に出ることも多かったので、騎士達からの信頼も厚く、王宮を離れた今でも根強い人気を誇る。
今でも要人の護衛に呼ばれるくらいの腕前だ。
ライカもまぁまぁの人気だが、スフォリア邸ではからかわれる対象である。
ルドの視線があたしにこの人達は誰かと問うているので、よく考えて答えた。
「あまり仲良くない知り合いです」
「なっ?!」
それを聞いて文句を言いたそうな三人だが、あたしは目も合わせない。
(だって、普通の知り合いなんていったら、事情を知らないルドに話しかけそうだもの)
そんな場面は見たくない。
「ならば話すことはありませんね、すぐ出ましょう」
切り替えの早いルドはそう言って、店を出ようとする。
「チェルシーこちらをお願いしてもいいですか?」
お土産の箱を一つ渡される。
「これは?」
「あなたへのお土産です。実家から戻ったら一緒に屋敷で食べましょう」
あたしにまで買ってくれるなんて、とても優しい。
「お待ち下さい、ルド様」
リーダー格の女が話しかけてくる。
(えとベムだっけ? ベラだっけ?)
嫌いすぎて名前すら忘れてしまった。
「会計は済ませてきたのですぐ出れますよ。食べたばかりですし、馬車に乗りましょう。こちらは俺が持ちます」
全くもって応じることなく、ルドは帰り支度をしている。
進んで重い荷物を持ってくれたりと、気遣いが見えた。
三人もの人を視界にすら入れないなんて器用だなと、チェルシーは考えていた。
(あらあら無視されてるから顔を赤くしてるわ)
ルドは重い荷物を持った手で、器用にお土産の入った紙袋も持つ。
開いた手はチェルシーを立たせる為に差し伸べられた。
「行きましょう」
「ルド様!」
(無視されたのに、まだルドを呼ぶなんて凄い根性ね。羞恥心ないのかしら、不愉快だわ)
「あたし達帰るんで、ゆっくりどうぞ」
ルドの手を取り、チェルシーは立ち上がる。
「どこのどちら様かは知りませんが、気安く話しかけないで下さい」
ルドも拒絶の言葉を投げかけた。
この店をいい思い出のままにしたいから放っておいて欲しいんですけど。
「ひどいことを仰らないでください。私達はとある令嬢の侍女ですの。そちらのチェルシーと仲が良いようなので、ルド様が心配になったのですわ。その子の本性知ってますか?」
(話しかけるなって言ってるのに食い下がるなんて大した根性よね)
ルドはため息をついて、無視するのを諦めた。
「言いたいことがあるなら外でしましょう。お店側に迷惑をかけてしまいますから」
外へ出るよう促し、先に出たのを見てから、ルドはチェルシーと繋いである手を優しく握る。
「あなたとの時間を多く持ちたかったのに、すみません」
「ルドは悪くないですよ、あいつらが悪いんですから」
絡んで来たほうが悪い!
「ありがとうございます、念の為荷物仕舞っておきますね」
ルドは収納魔法でポーチに荷物を入れた。
中では時間が止まるらしく、食品を入れておいても悪くならないらしい。
「お騒がせしてすみません」
カウンターにて店主にと幾ばくかのお金を置いていく。
「いえいえ、受け取れませんよ」
誰がどう見ても悪いのは絡んだあっちなのに、ルドは生真面目だ。
ルドが何気なしに置いたお金を横見する。
それ……あたしの給料の二倍くらいあるわ。
「お店にとって迷惑をかけてしまったので、受け取ってください。足りなければ、スフォリア家侍従のルド=カリオスまで請求書を送ってください。後日改めて謝罪に訪れますから」
丁寧に礼をして、ルドはあたしの手を引いて出ていった。
ドアを通り切るまでに店長さんを見ると、顔を青くしてたわ。
赤髪のルドなんて、この辺りでも有名な騎士だもの。
時折街の警らもしてるから、見たことはあるはず。
今はオフだから雰囲気が変わってて、すぐには気づかなかったみたいだ。
11
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです
珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。
その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる