シンデレラは夢を見ない

コトイアオイ

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鉄の心臓

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 シリルとしばらく話してから、彼と別れ、マイルームに戻る。今日の疲れを癒すお風呂の支度のためだ。

扱いこそ使用人のようなものだが、辛うじてお風呂は許されている。近くにいて臭ったら嫌、というかその臭いが移るのが嫌だとラムザ達は言っていた。


どんな理由であれ、お風呂に入れるのなら文句はない。皆の入った後のぬるいお風呂であってもだ。

 タオルと着替えを持って、お風呂へ向かう。

服を脱ぎ、お風呂に入れば、何となく身体全体が休まる気がする。


一世帯が収まりそうな広い浴槽で寛いでいると、ふいに脱衣所から物音がした。脱衣所とお風呂場をしきるガラス戸には、ぼんやりと人影が映っている。それだけならば、この時間に誰だ?となる。ところが、その人影は隠れるつもりがないのか、はたまた声を潜めているつもりなのかは分からないが、アリステラには誰だか丸わかりだった。
  

「ちょっ、お姉様、押さないでよ!」


「貴方こそ!さっさと済ませて帰るわよ!」


お分かり頂けただろうか。


そう、あの姉妹である。わざわざ嫌がらせをしにきたらしい。   


今後のためにも、アリステラはわざとらしく声を張り上げた。


「あ~極楽極楽!もっとお湯が熱かったら、こうもいかないけど、私にはこのぬるいのが最高だわぁ!」



すると、ガラス戸の向こうから、彼女達の動揺が伝わってくる。


「えっ、ぬるいお風呂が好きだったの!?」


「そんな!今度からは火傷するくらい熱いお湯にしとかないといけないわね!」
   


よっし!!今度から熱いお風呂だ!火傷…はまぁ、暫く冷ますなり水を足せば問題ないはずだ。単純な姉妹で助かる。


彼女達は今後の嫌がらせを思いつき、満足したのか、足早に去って行った。いや、もう本当忍ぶ気ゼロだよね。どうせやるなら、もっと徹底して欲しい。あれでばれてないと思えるのが逆に凄いわ。



 お風呂から上がって、アリステラは彼女達の今日の嫌がらせに気づいた。着替えがなくなっていたのだ。


「わぉ」


しかし、アリステラは焦らなかった。こんなこともあろうかと、常に着替えは予備を持ってきている。脱衣所の籠の裏に隠して置いた袋を引っ張り出す。そして、何事もなかったかのように、着替えて部屋に戻った。



馬小屋で寝るから別に着替えなくてもいい気はするけど、汗もかいてるだろうし一応は着替えておきたいからね。


馬小屋寝室の生活も中盤に差し掛かった。特に風邪を引くこともなく、元気にやっておりますとも。シリルには言わなかったが、言わなくて正解だっただろう。終わった頃に笑い話として話すくらいが丁度いい。


 アリステラは心身共に丈夫にできていたらしい。何かに悩むこともなく、今日も馬達に囲まれながら安眠した。
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