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番外編
番外編1-4
暑すぎず寒すぎず、今日のイスは絶好の行楽日和だ。
「晴れてよかったね!」
当日の天気だけが心配だった私は、満面の笑みを浮かべながらセーヤのブラッシングを受けていた。いまとなっては、こうして髪を整えてもらわないと気合いが入らないのだから習慣というのは恐ろしい。
朝の身支度を終えてキッチンへ向かうと、コーヒーのいい香りが漂っていた。カウンターにはいつものメンバーが座っている。
「おはようございます!」
「今日は一段と気合いが入っているようじゃな、メイロード」
大きめのマグカップでコーヒーをすすりながらグッケンス博士が笑っている。
「ああ、今日だっけ? あの〝大食い大会〟って……」
よく冷えたグラスで朝ビールを飲みながらマスタードの効いたレタスドッグにかぶりついているセイリュウ。
「メイロードさま、ささ、お座りください。本日はきっとお忙しくて日中は落ち着いた食事の時間はないでしょうから、せめて朝はしっかり召し上がってくださいね」
ソーヤはテキパキとキッチンを動きながら、私の前にスープやサラダ、オムレツに季節の果物を並べていく。ソーヤは私が作ってあげた料理をデータベースのように記憶していて、リクエストすれば瞬時に再現してくれる。
「ありがとうソーヤ。うんうん、とってもよくできてるわ、美味しそう! パンは木の実の入った硬めのものをスライスして焼いてくれる?」
「了解です。ではバターとチーズ、それに木苺のジャムも添えましょう」
こうして、いつものようにみんなで賑やかな朝食を終えた私は、今回のために押さえた広場に向かった。
『サイデム商会提供、メイロード杯争奪〝北東部式ソヴァ大食い大会〟』
立派な横断幕が掲げられた会場は、まだ開始時間のだいぶ前なのにすでに多くの人が列を作っていた。
(期待されているみたいで何よりだけど、あまり列が伸びるようなら開場時間の前倒しも考えないといけないわね)
会場内ではすでにたくさんの屋台が設営と仕込みをしていた。
蕎麦の屋台はもちろん複数出すが、それ以外にも蕎麦粉を使った手軽な料理を提供する。
「〝おやき〟は皮に蕎麦粉を使い中身は野菜あんやミンチ肉、それに甘い芋あんなどバリエーション豊富に仕込んだからね。屋台では鉄板で焼いたアツアツを食べてもらうのよ」
「素晴らしいです、メイロードさま」
ソーヤは目を爛々と輝かせて、あちこちの屋台に目を走らせている。
「お好み焼き風に味付けして棒に巻きつけた軽食は〝くるくる焼き〟って名前で売るつもり。ジャガイモと蕎麦粉で作ったニョッキを揚げた〝ソヴァ揚げ〟はお酒にも合いそうよね」
「どちらも試作で味見させていただきましたが、大変美味でございました! どちらももっと食べたかったです!」
食べ方としては小麦粉に近いから、知ってくれれば普及は早いだろう。なにより安いし地産地消できれば経済効率もいい。
楽しい催しの演出はどうやらうまくいきそうだ。
(あとは〝大食い大会〟がうまくいってくれれば……)
「晴れてよかったね!」
当日の天気だけが心配だった私は、満面の笑みを浮かべながらセーヤのブラッシングを受けていた。いまとなっては、こうして髪を整えてもらわないと気合いが入らないのだから習慣というのは恐ろしい。
朝の身支度を終えてキッチンへ向かうと、コーヒーのいい香りが漂っていた。カウンターにはいつものメンバーが座っている。
「おはようございます!」
「今日は一段と気合いが入っているようじゃな、メイロード」
大きめのマグカップでコーヒーをすすりながらグッケンス博士が笑っている。
「ああ、今日だっけ? あの〝大食い大会〟って……」
よく冷えたグラスで朝ビールを飲みながらマスタードの効いたレタスドッグにかぶりついているセイリュウ。
「メイロードさま、ささ、お座りください。本日はきっとお忙しくて日中は落ち着いた食事の時間はないでしょうから、せめて朝はしっかり召し上がってくださいね」
ソーヤはテキパキとキッチンを動きながら、私の前にスープやサラダ、オムレツに季節の果物を並べていく。ソーヤは私が作ってあげた料理をデータベースのように記憶していて、リクエストすれば瞬時に再現してくれる。
「ありがとうソーヤ。うんうん、とってもよくできてるわ、美味しそう! パンは木の実の入った硬めのものをスライスして焼いてくれる?」
「了解です。ではバターとチーズ、それに木苺のジャムも添えましょう」
こうして、いつものようにみんなで賑やかな朝食を終えた私は、今回のために押さえた広場に向かった。
『サイデム商会提供、メイロード杯争奪〝北東部式ソヴァ大食い大会〟』
立派な横断幕が掲げられた会場は、まだ開始時間のだいぶ前なのにすでに多くの人が列を作っていた。
(期待されているみたいで何よりだけど、あまり列が伸びるようなら開場時間の前倒しも考えないといけないわね)
会場内ではすでにたくさんの屋台が設営と仕込みをしていた。
蕎麦の屋台はもちろん複数出すが、それ以外にも蕎麦粉を使った手軽な料理を提供する。
「〝おやき〟は皮に蕎麦粉を使い中身は野菜あんやミンチ肉、それに甘い芋あんなどバリエーション豊富に仕込んだからね。屋台では鉄板で焼いたアツアツを食べてもらうのよ」
「素晴らしいです、メイロードさま」
ソーヤは目を爛々と輝かせて、あちこちの屋台に目を走らせている。
「お好み焼き風に味付けして棒に巻きつけた軽食は〝くるくる焼き〟って名前で売るつもり。ジャガイモと蕎麦粉で作ったニョッキを揚げた〝ソヴァ揚げ〟はお酒にも合いそうよね」
「どちらも試作で味見させていただきましたが、大変美味でございました! どちらももっと食べたかったです!」
食べ方としては小麦粉に近いから、知ってくれれば普及は早いだろう。なにより安いし地産地消できれば経済効率もいい。
楽しい催しの演出はどうやらうまくいきそうだ。
(あとは〝大食い大会〟がうまくいってくれれば……)
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番外編を読むために、1巻から読み直して来ました^^
もう何周目かな〜??何回読んでも好きです!!
飯テロとか生産とか内政とか成り上がりとかのバランスが絶妙に好き(笑)
続きも楽しみにしています♪
楽しく読まさせてもらってます。
文庫版を集めたいのはやまやまなんですが
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