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3 魔法学校の聖人候補
369 魔法図書館
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369
その日3コマの授業を受けた私は、世界一の蔵書を誇る学校内の〝魔法図書館〟へ向かった。
中庭を抜け、素晴らしい噴水のあるアプローチの先にあるその図書館は、〝魔法の殿堂〟と呼ばれるに相応しい威容だった。建物の荘厳さ、美しさはもちろん、完璧に整理された蔵書、静かで穏やかな雰囲気、美しくも落ち着いた調度品の数々……ここまで豪華で巨大な図書館を見たのは過去生を含めても初めてだった。
1階の閲覧室では、常時沢山の学生が勉強している。確かに、ここは勉強が捗りそうな場所だ。
そしてここで勉強をしている人の多くは、貴族以外の所謂〝教養系授業〟を初めて受けている庶民出身の魔法使い候補たちだ。彼らは魔法を習う前にこの試練を越えなければならないのだから、皆一様に真剣だ。
チラチラと学生たちの机に置かれた本を見ると、必ず〝魔術師の心得 上巻〟が置いてある。教科書なのだから持っていて当然ではあるのだが、本当に必携の書のようだ。
紙が普及し始めた時、いち早くこの教科書を出版できたので、今では皆自分の新しい教科書を携帯できるようになっている。改定の際、今までよりずっと紙面も増やすことができたため、より分かりやすくなり、学生たちの助けになっていると教授陣も言っているそうだ。
(すごいなぁ、グッケンス博士)
学生たちは皆、とても熱心で、それぞれの勉強や研究に余念がない。私も勉強を頑張らねば、と改めて刺激を受けた。なんだか、気分も高揚している。早速古代イルガン語関連の書籍を探してみたが、書架にあるのは解説書ばかりで原本はなかった。やはり、原本に当たるには、一般生徒閲覧不可の書架に行くしかないようだ。
だが、私にはモートさんから貰った〝魔法の鍵〟がある。
司書さんに声を掛けて鍵を見せると、いかにも司書という雰囲気の真面目そうな女性が、直ぐに場所を教えてくれた。
「その鍵は使わずとも、お持ちになっているだけで書架が開きますので、ご自由にご覧になれますよ。
ですが、この書架の書物は全て持ち出し禁止の貴重なものばかりですので、お取り扱いはくれぐれも慎重にお願い致します」
司書さんの言葉に頷いた私は、礼を言って該当する書架へ移動。
その書架には鎖が掛けられ、一見取り出せないように見えるが、鍵を持つ私が手を伸ばすと鎖をすり抜けて本に触ることができ、取り出すことができた。
(不思議な鍵だね)
まず取り出したのは、授業で言っていた最初の魔法使いに関する古文書の写本だ。
現物は木簡で非常に重い。それは腐食しないよう厳重に保管されており、これは特殊な魔法により正確に現本を写したものである、と本の最初に記されていた。写本とはいえ、原本の正確な写しはかなりの貴重品だ。更に、この羊皮紙の写本には、現在までに解読されている訳文も付いているので、とても読みやすい。
まずは、付録の解説を一読。
〝古の勇者が民を守るため、恐ろしい魔物と決死の戦いをする。だが、魔物はあまりにも強く、勇者は深く傷つき戦うことができなくなってしまった。
そこに、ひとりの魔法使いが現れ、勇者の躰を瞬時に癒しその魂までも回復した。
勇者は再び立ち上がり、魔物を退治した。やがて新しい王となった勇者は、この魔法使いを大いに重用し、国は長く栄えた〟
……という物語だ。
(魔法使いが何者なのか、全然わからないなぁ)
訳文の方を読んでみたが、もうひとつ要領を得ない。魔法使いが登場した初の文献だというが、その魔法使いの記述は極めて曖昧だ。
(じゃ、いよいよ原本を読んでみますか……)
改めて本に目を落とすと、予想していたことが起こり、私の疑問は解決していった。
そう、ちゃんと古代イルガン語も私は読むことができたのだ。本全体の言い回しが古いため、丁度古文を読むような読みにくさはあるが、意味が取れないほどではないので、少しづつだが、読み進めることができた。
私の解読によれば、上記の物語の魔物は竜族のようだ。青龍のような神の眷属とは違う種族だが、強靭な躰や強い攻撃力を持つ種族で、魔物の中でも最も厄介だと言える。
この物語で〝古の勇者〟が戦っているのは〝火の竜〟らしい。しかも、伝説級の巨大な相手だったらしく、国は壊滅し時の王族も皆死に絶え、人々もその地から皆逃げた後に〝古の勇者〟は現れている。
(もう少し早く現れていれば、被害が少なくて済んだのに、遅いよ勇者!)
私はツッコミを入れつつ、更に読み進む。
〝古の勇者〟は三日三晩の死闘で力を失い、動けなくなる。そこに忽然と魔法使いが現れるのだ。魔法使いは何も語らず〝古の勇者〟に癒しを与えその躰に闘志を蘇らせた。更に、魔法使いは戦う彼を助けて共に戦い、遂に〝火の竜〟を退治する。
(うーん、魔法を使ったとすれば、これはたしかに治癒系の《白魔法》だろうな。はっきりとは書かれていないけど、どうやら本当に《白魔法》はあったみたいだ)
その後、新たな王となった〝古の勇者〟と共に、国を復興していった魔法使いは、その術を何人かの弟子に授けた後、どこかへ去ってしまう。
〝正しく使いなさい。さすれば、これはお前たちを助けるだろう〟という言葉だけを残して。
私は真剣に内容を考えながら、メモを取り集中していた。
「すごいわね!!どこまで読めてるのかしら!?」
いきなり、後ろから声をかけてきたのはロキ教授。
(しまった。集中して周りが見えてなかった!)
私は、興味津々でノートを覗き込む教授から必死にノートを隠しながら、どうしようかと考えつつ若干引きつり気味の笑顔で振り向いた。
その日3コマの授業を受けた私は、世界一の蔵書を誇る学校内の〝魔法図書館〟へ向かった。
中庭を抜け、素晴らしい噴水のあるアプローチの先にあるその図書館は、〝魔法の殿堂〟と呼ばれるに相応しい威容だった。建物の荘厳さ、美しさはもちろん、完璧に整理された蔵書、静かで穏やかな雰囲気、美しくも落ち着いた調度品の数々……ここまで豪華で巨大な図書館を見たのは過去生を含めても初めてだった。
1階の閲覧室では、常時沢山の学生が勉強している。確かに、ここは勉強が捗りそうな場所だ。
そしてここで勉強をしている人の多くは、貴族以外の所謂〝教養系授業〟を初めて受けている庶民出身の魔法使い候補たちだ。彼らは魔法を習う前にこの試練を越えなければならないのだから、皆一様に真剣だ。
チラチラと学生たちの机に置かれた本を見ると、必ず〝魔術師の心得 上巻〟が置いてある。教科書なのだから持っていて当然ではあるのだが、本当に必携の書のようだ。
紙が普及し始めた時、いち早くこの教科書を出版できたので、今では皆自分の新しい教科書を携帯できるようになっている。改定の際、今までよりずっと紙面も増やすことができたため、より分かりやすくなり、学生たちの助けになっていると教授陣も言っているそうだ。
(すごいなぁ、グッケンス博士)
学生たちは皆、とても熱心で、それぞれの勉強や研究に余念がない。私も勉強を頑張らねば、と改めて刺激を受けた。なんだか、気分も高揚している。早速古代イルガン語関連の書籍を探してみたが、書架にあるのは解説書ばかりで原本はなかった。やはり、原本に当たるには、一般生徒閲覧不可の書架に行くしかないようだ。
だが、私にはモートさんから貰った〝魔法の鍵〟がある。
司書さんに声を掛けて鍵を見せると、いかにも司書という雰囲気の真面目そうな女性が、直ぐに場所を教えてくれた。
「その鍵は使わずとも、お持ちになっているだけで書架が開きますので、ご自由にご覧になれますよ。
ですが、この書架の書物は全て持ち出し禁止の貴重なものばかりですので、お取り扱いはくれぐれも慎重にお願い致します」
司書さんの言葉に頷いた私は、礼を言って該当する書架へ移動。
その書架には鎖が掛けられ、一見取り出せないように見えるが、鍵を持つ私が手を伸ばすと鎖をすり抜けて本に触ることができ、取り出すことができた。
(不思議な鍵だね)
まず取り出したのは、授業で言っていた最初の魔法使いに関する古文書の写本だ。
現物は木簡で非常に重い。それは腐食しないよう厳重に保管されており、これは特殊な魔法により正確に現本を写したものである、と本の最初に記されていた。写本とはいえ、原本の正確な写しはかなりの貴重品だ。更に、この羊皮紙の写本には、現在までに解読されている訳文も付いているので、とても読みやすい。
まずは、付録の解説を一読。
〝古の勇者が民を守るため、恐ろしい魔物と決死の戦いをする。だが、魔物はあまりにも強く、勇者は深く傷つき戦うことができなくなってしまった。
そこに、ひとりの魔法使いが現れ、勇者の躰を瞬時に癒しその魂までも回復した。
勇者は再び立ち上がり、魔物を退治した。やがて新しい王となった勇者は、この魔法使いを大いに重用し、国は長く栄えた〟
……という物語だ。
(魔法使いが何者なのか、全然わからないなぁ)
訳文の方を読んでみたが、もうひとつ要領を得ない。魔法使いが登場した初の文献だというが、その魔法使いの記述は極めて曖昧だ。
(じゃ、いよいよ原本を読んでみますか……)
改めて本に目を落とすと、予想していたことが起こり、私の疑問は解決していった。
そう、ちゃんと古代イルガン語も私は読むことができたのだ。本全体の言い回しが古いため、丁度古文を読むような読みにくさはあるが、意味が取れないほどではないので、少しづつだが、読み進めることができた。
私の解読によれば、上記の物語の魔物は竜族のようだ。青龍のような神の眷属とは違う種族だが、強靭な躰や強い攻撃力を持つ種族で、魔物の中でも最も厄介だと言える。
この物語で〝古の勇者〟が戦っているのは〝火の竜〟らしい。しかも、伝説級の巨大な相手だったらしく、国は壊滅し時の王族も皆死に絶え、人々もその地から皆逃げた後に〝古の勇者〟は現れている。
(もう少し早く現れていれば、被害が少なくて済んだのに、遅いよ勇者!)
私はツッコミを入れつつ、更に読み進む。
〝古の勇者〟は三日三晩の死闘で力を失い、動けなくなる。そこに忽然と魔法使いが現れるのだ。魔法使いは何も語らず〝古の勇者〟に癒しを与えその躰に闘志を蘇らせた。更に、魔法使いは戦う彼を助けて共に戦い、遂に〝火の竜〟を退治する。
(うーん、魔法を使ったとすれば、これはたしかに治癒系の《白魔法》だろうな。はっきりとは書かれていないけど、どうやら本当に《白魔法》はあったみたいだ)
その後、新たな王となった〝古の勇者〟と共に、国を復興していった魔法使いは、その術を何人かの弟子に授けた後、どこかへ去ってしまう。
〝正しく使いなさい。さすれば、これはお前たちを助けるだろう〟という言葉だけを残して。
私は真剣に内容を考えながら、メモを取り集中していた。
「すごいわね!!どこまで読めてるのかしら!?」
いきなり、後ろから声をかけてきたのはロキ教授。
(しまった。集中して周りが見えてなかった!)
私は、興味津々でノートを覗き込む教授から必死にノートを隠しながら、どうしようかと考えつつ若干引きつり気味の笑顔で振り向いた。
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※タイトル少し変えました。
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