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3 魔法学校の聖人候補
573 論文執筆
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573
「どう? 美味しい?」
私の質問にソーヤは目を閉じたまま真剣な顔で考えた後こう言った。
「お見事でございます。このトマトスープはなんら新鮮なトマトを使ったものと遜色がございません。むしろ凝縮したお味で旨味が強い感じすら致します」
「まぁ、その辺りは使い方のさじ加減もあるけど、いい感じみたいね」
これから論文をまとめる前に、先の実験で作った乾燥済みの野菜を再度テイスティングしてみた。これは《無限回廊の扉》に保存したり、魔法を使って保存したりしていないものだ。
その代わり、この魔法学校付近にある山のかなり高い場所に作った室を使ってどの程度この状態のまま保存できているかを確認したものだ。少なくとも、夏場でもこの条件下であれば問題なく保存できていると、味からも確認出来てほっとした。
私の《真贋》によるチェックでも、腐敗の兆候はまったく見られず、フリーズドライされた状態のままだと出たので、安全性にも問題はないだろう。
「乾燥した高地で、いくつかの対策をしておけば、一年ぐらいの保存は十分できそうだね。ただ、この条件に合う場所でしか長期保存が難しいから、どこでも使える手じゃないってところに、まだまだ研究の余地があるけど……
味にも問題ないし、少なくともセルツのような気候条件の場所なら、保存方法として使えることは確かだから、論文にする価値はあるかな。
この保存状況に関するデータも含めてまとめておかなきゃ。本当はもう少し長い期間観察したいところだけど、もう時間がないから、今回の研究はここまでにしなきゃね」
そこから私は授業も受けつつ、論文も書きつつ、生徒会にも出席するという、とても忙しい二学期に突入した。
やるからにはちゃんとしたものを発表したい、というわれながら融通の利かない生真面目さのせいで、九月はそれはもう忙しかった。毎日深夜まで書き物に追われる私を見て、セーヤとソーヤは私の体調を心配して、それはそれは気を使ってくれた。料理もいままで私が作ったことがあるものなら、指示してくれれば自分たちが作ると言って、キッチンに入れてもらえない時もあった。
でも、料理は私のストレス解消になることなので、頼むからやらせてとお願いして、何とかキッチンには入れてもらえるようになったが、ふたりは私の“大丈夫”をまったく信用していないので、少しでも私の手間を減らそうと、がんばってくれた。
普段は私がすることのサポートに徹しているふたりなのに、この執筆中は料理以外の家事はふたりが請け負うと宣言し私を驚かせたが、今回は私はそれに全面的に甘えることにした。彼らにとって私が倒れることのほうが、ずっと困った事態なのはわかっている。彼らに心配をかけないように自重することも私の務めだろう。
(いつもありがとうね、セーヤ・ソーヤ!)
ふたりの協力のおかげで、何とか出来上がった論文とその概要説明分を提出できたのは、提出期限ぎりぎりであと一日遅れたら印刷に間に合わないというところだった。
「書き始めたら思った以上に膨大な量になってしまって、間に合わないかと思ったわ。セーヤとソーヤのおかげで間に合ったよ。ありがとうね」
研究発表会用の書類を入稿した日の夜、そう感謝した私の言葉に、ふたりは何事もなく論文が完成したことを喜んでくれた。
「これで論文についてはひと段落されましたが、それでも生徒会関係は相変わらず忙しくされていることに変わりはないのですから、睡眠はしっかりお取りください。さあ、ブラッシングをされたらお休みにならないと」
今夜は論文完成記念の宴会になった。
今日は豪華な舟盛り。マホロで買い付けてきた新鮮で美味しいお刺身や魚介類たっぷりの和風宴会料理にしてみた。
みんなに論文完成を祝ってもらい、特別に盃に一口だけ日本酒をいただくことにし乾杯した。みんなに祝われながら飲んだその一口は格別だった。
(やり遂げたっていうこの気分で呑むお酒は最高だね。でも、このままずるずる飲んだりしないようにしないと…… お酒は二十歳に……)
自分をそう戒めつつ、たった一口の少し甘くてフルーツのような華やかな香りをした吟醸酒を、自分へのご褒美にした。
上機嫌の私はセーヤに促されて入念なブラッシングを受けた後、お日様の香りのするきれいなシーツが敷かれたベッドに入った。枕元には私が教えた安眠にいい癒し系の香りをしたハーブが置かれている。
研究発表会は十日後、どんな研究が見られるのかも楽しみだ。
「おやすみなさいませ、メイロードさま」
「ゆっくりおやすみください、メイロードさま」
「おやすみ、ふたりともありがとね」
(論文は完成したけど、もう少しわかりやすくするためにプレゼン用の工夫をしたほうがいいかなぁ……)
そんなことを頭の隅で考えながら、私はすっきりした気分で、すぐに眠りに落ちた。
「どう? 美味しい?」
私の質問にソーヤは目を閉じたまま真剣な顔で考えた後こう言った。
「お見事でございます。このトマトスープはなんら新鮮なトマトを使ったものと遜色がございません。むしろ凝縮したお味で旨味が強い感じすら致します」
「まぁ、その辺りは使い方のさじ加減もあるけど、いい感じみたいね」
これから論文をまとめる前に、先の実験で作った乾燥済みの野菜を再度テイスティングしてみた。これは《無限回廊の扉》に保存したり、魔法を使って保存したりしていないものだ。
その代わり、この魔法学校付近にある山のかなり高い場所に作った室を使ってどの程度この状態のまま保存できているかを確認したものだ。少なくとも、夏場でもこの条件下であれば問題なく保存できていると、味からも確認出来てほっとした。
私の《真贋》によるチェックでも、腐敗の兆候はまったく見られず、フリーズドライされた状態のままだと出たので、安全性にも問題はないだろう。
「乾燥した高地で、いくつかの対策をしておけば、一年ぐらいの保存は十分できそうだね。ただ、この条件に合う場所でしか長期保存が難しいから、どこでも使える手じゃないってところに、まだまだ研究の余地があるけど……
味にも問題ないし、少なくともセルツのような気候条件の場所なら、保存方法として使えることは確かだから、論文にする価値はあるかな。
この保存状況に関するデータも含めてまとめておかなきゃ。本当はもう少し長い期間観察したいところだけど、もう時間がないから、今回の研究はここまでにしなきゃね」
そこから私は授業も受けつつ、論文も書きつつ、生徒会にも出席するという、とても忙しい二学期に突入した。
やるからにはちゃんとしたものを発表したい、というわれながら融通の利かない生真面目さのせいで、九月はそれはもう忙しかった。毎日深夜まで書き物に追われる私を見て、セーヤとソーヤは私の体調を心配して、それはそれは気を使ってくれた。料理もいままで私が作ったことがあるものなら、指示してくれれば自分たちが作ると言って、キッチンに入れてもらえない時もあった。
でも、料理は私のストレス解消になることなので、頼むからやらせてとお願いして、何とかキッチンには入れてもらえるようになったが、ふたりは私の“大丈夫”をまったく信用していないので、少しでも私の手間を減らそうと、がんばってくれた。
普段は私がすることのサポートに徹しているふたりなのに、この執筆中は料理以外の家事はふたりが請け負うと宣言し私を驚かせたが、今回は私はそれに全面的に甘えることにした。彼らにとって私が倒れることのほうが、ずっと困った事態なのはわかっている。彼らに心配をかけないように自重することも私の務めだろう。
(いつもありがとうね、セーヤ・ソーヤ!)
ふたりの協力のおかげで、何とか出来上がった論文とその概要説明分を提出できたのは、提出期限ぎりぎりであと一日遅れたら印刷に間に合わないというところだった。
「書き始めたら思った以上に膨大な量になってしまって、間に合わないかと思ったわ。セーヤとソーヤのおかげで間に合ったよ。ありがとうね」
研究発表会用の書類を入稿した日の夜、そう感謝した私の言葉に、ふたりは何事もなく論文が完成したことを喜んでくれた。
「これで論文についてはひと段落されましたが、それでも生徒会関係は相変わらず忙しくされていることに変わりはないのですから、睡眠はしっかりお取りください。さあ、ブラッシングをされたらお休みにならないと」
今夜は論文完成記念の宴会になった。
今日は豪華な舟盛り。マホロで買い付けてきた新鮮で美味しいお刺身や魚介類たっぷりの和風宴会料理にしてみた。
みんなに論文完成を祝ってもらい、特別に盃に一口だけ日本酒をいただくことにし乾杯した。みんなに祝われながら飲んだその一口は格別だった。
(やり遂げたっていうこの気分で呑むお酒は最高だね。でも、このままずるずる飲んだりしないようにしないと…… お酒は二十歳に……)
自分をそう戒めつつ、たった一口の少し甘くてフルーツのような華やかな香りをした吟醸酒を、自分へのご褒美にした。
上機嫌の私はセーヤに促されて入念なブラッシングを受けた後、お日様の香りのするきれいなシーツが敷かれたベッドに入った。枕元には私が教えた安眠にいい癒し系の香りをしたハーブが置かれている。
研究発表会は十日後、どんな研究が見られるのかも楽しみだ。
「おやすみなさいませ、メイロードさま」
「ゆっくりおやすみください、メイロードさま」
「おやすみ、ふたりともありがとね」
(論文は完成したけど、もう少しわかりやすくするためにプレゼン用の工夫をしたほうがいいかなぁ……)
そんなことを頭の隅で考えながら、私はすっきりした気分で、すぐに眠りに落ちた。
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