6 / 22
準備をしましょう 1
しおりを挟む
「おい 鐐 ! お前なんだあの加護の威力! 確かに鈴音は無傷だったが……人相手でもあの威力だったとしたら大問題だぞ!?」
バン!
と、両手で机を叩きながら山吹は 鐐 を問いただしている。
その正面にいる 鐐 は、イライラしている山吹とは対称的に涼し気な顔をしている。
「うるさいぞ。……無傷だったのならよかったでは無いか」
「無事なのは良かったのだが、血まみれになったんだぞ!?」
「…………は? それは、どういう意味だ」
「そのままの意味だ! 鈴音に噛み付いた獣が一瞬で弾け飛んだんだぞ!? 跳ね返すどころの威力じゃないぞ!」
「…………はじけ、とんだ?」
「それで鈴音は全身血まみれになって、服一着駄目になってしまった」
「服に関しては後で妾お気に入りの服屋に行ってくるといい。紹介状を書いておく。これを渡せば何着か、安く作ってくれるだろう。…………にしても、弾け飛んだのか。まあ、良いではないか」
「獣相手だから良かったものの……人相手だとどうなるのかが解らん。流石に怖すぎるぞ」
「……いや、相手に悪意や敵意が無ければ影響あるまい」
だとしてもだ。
例えば街で騒動に巻き込まれたとしよう。
そして、偶々攻撃が鈴音当たってしまったとしよう。
その人が先日の獣と同じように、一瞬で弾け飛ぶかもしれないと思うと安心して歩けない。
人が弾け飛ばない保証など何処にもないのだ。
「山吹。ちなみに、その獣とはどのくらいの大きさでどんな獣だったのだ?」
「……は? その情報必要なのか?」
「いや、別にいらぬ。が、妾の好奇心だ」
「………はあ。魔獣じゃなくてただの狼だ」
「なんだつまらぬ」
「つまるつまらんの問題じゃなくてだな……!!」
「や、山吹さん、一旦落ち着きましょう?」
何をそんなに怒ってるのか解らないのだろう。首を傾げる目の前の 鐐 に、山吹はさらに神経を逆撫でされているのが解る。
……まるで今にも噴火しそうな火山のようだ。
血まみれ事件の翌日。
鈴音と山吹は街へ来ている。
買い物と甘味を食べに……だったらどれだけ良かったことか。
髪飾りに付いている加護の威力について、 鐐 と話す為である。
よって、甘味は今回無しだ。残念。
「……というかな、妾も弾ける程だとは思わなかったぞ。……でもまあ、良いではないか。どうせ加護は付けたらもう外せぬのだ。人にぶつかるだけでは、弾ける可能性は低いやもしれぬ。だが、突き飛ばした場合どの程度の威力なのか……検討もつかぬぞ。正確な威力が知りたかったら試すしかないのだが……当然無理だ。もはや。諦めるしかあるまい」
「………………」
「山吹さん、私はこのままでもいいです。この髪飾り、とても気に入ってるので」
「ならいいか」
外せるものでは無いなら気をつければいいのだ。そうそう敵意がある相手に害される可能性は低いだろう。……街中では。
「そうだ。 鐐 、指輪を造ってもらおうと思ったんだが……大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だが、どのようなものにするか決まっておるのか?」
「……この髪飾りと同じような絵柄がいいです。この花、家の玄関にあって……すごく好きなので」
「うむ。……では、二人共指の大きさ測るぞ?」
何処からか糸を出してきて、左手薬指に巻き付けた。一周した所で色をつけている。
これで指の大きさを測っているようだ。
「なるほど。ではこの大きさで指輪を造る。今回も頑張って造るから楽しみにしとくのだぞ!」
「まてまてまてまて! さっき言っただろ? 加護が強すぎると。……これ以上、威力強い加護増やす気か?」
確かに加護の威力が既に強すぎて、まるで一人の人間に国家権力での護衛を動かしてるようである。
既に獣が弾け飛んでいるのだ。
どう考えても、普通の防御の域を超えている。
「けち。……別に良いではないか。鈴音の安全が確保されのだぞ!」
「……それは、そうなんだが」
「……? 何をそんなに渋っているのだ。………………あれか? 『鈴音の事は俺が傍で護りたい! 力付けすぎると頼られなくなりそうで怖い』ってことかのう?」
「……うるさい」
「はははははっ! 山吹、お主顔が赤いぞ。やはり図星なのだな!」
「え、そういう事だったのですか?」
「鈴音……こっち見ないでくれ」
ふいと背けてしまったが、一瞬見えたその顔は真っ赤だった。
髪から覗く耳も少し赤いようだ。
その態度は図星だと言っているようなもの。
カッコイイのに可愛いのは本当に卑怯。ずるい。
つられて鈴音も頬を染める。
「…………なあ、二人共。仲の良さを見せびらかすなら外でやってくれんか? 先程食べた昼食が胃で暴れておる」
鐐 にじろりと妬ましそうに睨まれる。貴継が不在だから余計なのだろう。
にしても、先程皆で食べた 鐐 作の“おむらいす”が出てくるのはいただけない。
「………………あ、えー、と。……頼みたい事が、あってだな。 鐐 と貴継に俺達の婚姻で仲介人として出て欲しい」
先に冷静になったのであろう山吹が、少々強引に話を変えた。
……本来の目的は指輪の予定だったが、婚姻の仲介を頼むのも予定にあったのであながち間違いではない。
「あ、是非お願いします! ……私、家族呼ばないので」
「構わぬぞ。貴継にも後で言っておく。いつやる予定だ? 指輪もその日に合わせよう」
「「………………」」
日程云々は全く話してない。
山吹もすっかり忘れていたのだろう。
「あと、鈴音の花嫁衣装はどうするのだ。……あれは使えまい」
「そうだな……」
「あれ……って、なんですか?」
「鈴音が泉に投げ入れられた時に着てたやつだ。鈴音に大きさが合ってなかったのもあるが…………捨ててしまったんだ。勝手に悪かったな」
既にあの衣装は捨てられてたらしい。
鈴音は当然、知るはず無かったのだが。
「あ、そうなんですね。どうしたのかなとは思ってましたが、別に要らないので問題ないです」
そう。あれは、どうせ【生贄】として着ていたものに過ぎない。
今回の婚姻の時にはちゃんと【花嫁】として、衣装を着たい。
「…………妾のが使えれば良かったんだろうが、身長が違いすぎるから使えぬな。……うむ、妾の衣装を作った所へ行くといい。確かな、ここに……名刺が、あったはず……なんだが」
鐐 さんのは確かに使えるはずがない。鈴音には大きすぎる。
身長は山吹と同じくらいある。
…………なにより、胸が。
「おお! これだ。『アラーニャ』という店に行くといい! ……店主は少しだけ癖があるが、良い腕をしている」
「ありがとうございます! ……あれ、この名刺紙じゃないんですね? 凄く手触りが気持ちいいです……ずっと、触ってたいです」
「……ほんとだ。なんだ、これ。紙と布の中間のような……しなやかで柔らかい紙、か? いや、紙にしてはすべすべしている。……これは、布か」
「ふふふふ。それもそこに行けばわかる。……して、日程はどうするのだ? 指輪は最短でも一月程だが……多分衣装もそれくらいかかるだろう」
「では……出来上がる頃は、どうでしょう? この日がいいというのは、ないので」
「ああ、そうだな。そうするか。…… 鐐 や貴継は日程調整できそうか?」
「当たり前であろう? 鈴音の婚姻なのだぞ。無理にでも調整して絶対参加するので安心せい」
絶対優先は鈴音の婚姻らしい。嬉しいものだ。
「では、頑張って造るからな! ……残念だが甘味は婚姻の後の楽しみに取っておこう! 出来たら連絡する」
「はい! 指輪楽しみにしてます。ありがとうございます!」
「 鐐 、根詰め過ぎないようにな」
思っていた以上に 鐐 がやる気なので、もしかしたら早く出来上がるかもしれない。
出来上がりが楽しみである。
「そういえば、山吹さん。出来たら連絡すると言ってましたが……手段ってあるんですか?」
「……あ、ないな」
その後慌てて店に戻り、店内へ呼びかけるも応答がない。
なんと、既に作業室に篭っていた 鐐 さん。呼び出すのにとても苦労した。
何とか引き摺り出して、話し合った結果。
山吹と鈴音が、一月後に指輪と衣装をそれぞれの店に取りに来るからその時までに造っておく。
という事になった。
--ちなみに、決まった途端また篭ってしまったのは言うまでもないだろう。
今日は朝から加護の話をしに出てきたので、まだ時間も早い。このままアラーニャへ向かう事にした。
まだこれから相談だが、きっと期限が決まっていた方が彼女--彼かもしれないが--動きやすいだろう。
それに、あの不思議な名刺の謎も気になって仕方がない。
取り出した名刺を陽にかざしてみると、少し向こう側が透けて見えた。
そしてその名刺には店名しか書かれていない。
ますます不思議が増えただけだが、薄い布一枚隔てた太陽も凄く綺麗だった。
バン!
と、両手で机を叩きながら山吹は 鐐 を問いただしている。
その正面にいる 鐐 は、イライラしている山吹とは対称的に涼し気な顔をしている。
「うるさいぞ。……無傷だったのならよかったでは無いか」
「無事なのは良かったのだが、血まみれになったんだぞ!?」
「…………は? それは、どういう意味だ」
「そのままの意味だ! 鈴音に噛み付いた獣が一瞬で弾け飛んだんだぞ!? 跳ね返すどころの威力じゃないぞ!」
「…………はじけ、とんだ?」
「それで鈴音は全身血まみれになって、服一着駄目になってしまった」
「服に関しては後で妾お気に入りの服屋に行ってくるといい。紹介状を書いておく。これを渡せば何着か、安く作ってくれるだろう。…………にしても、弾け飛んだのか。まあ、良いではないか」
「獣相手だから良かったものの……人相手だとどうなるのかが解らん。流石に怖すぎるぞ」
「……いや、相手に悪意や敵意が無ければ影響あるまい」
だとしてもだ。
例えば街で騒動に巻き込まれたとしよう。
そして、偶々攻撃が鈴音当たってしまったとしよう。
その人が先日の獣と同じように、一瞬で弾け飛ぶかもしれないと思うと安心して歩けない。
人が弾け飛ばない保証など何処にもないのだ。
「山吹。ちなみに、その獣とはどのくらいの大きさでどんな獣だったのだ?」
「……は? その情報必要なのか?」
「いや、別にいらぬ。が、妾の好奇心だ」
「………はあ。魔獣じゃなくてただの狼だ」
「なんだつまらぬ」
「つまるつまらんの問題じゃなくてだな……!!」
「や、山吹さん、一旦落ち着きましょう?」
何をそんなに怒ってるのか解らないのだろう。首を傾げる目の前の 鐐 に、山吹はさらに神経を逆撫でされているのが解る。
……まるで今にも噴火しそうな火山のようだ。
血まみれ事件の翌日。
鈴音と山吹は街へ来ている。
買い物と甘味を食べに……だったらどれだけ良かったことか。
髪飾りに付いている加護の威力について、 鐐 と話す為である。
よって、甘味は今回無しだ。残念。
「……というかな、妾も弾ける程だとは思わなかったぞ。……でもまあ、良いではないか。どうせ加護は付けたらもう外せぬのだ。人にぶつかるだけでは、弾ける可能性は低いやもしれぬ。だが、突き飛ばした場合どの程度の威力なのか……検討もつかぬぞ。正確な威力が知りたかったら試すしかないのだが……当然無理だ。もはや。諦めるしかあるまい」
「………………」
「山吹さん、私はこのままでもいいです。この髪飾り、とても気に入ってるので」
「ならいいか」
外せるものでは無いなら気をつければいいのだ。そうそう敵意がある相手に害される可能性は低いだろう。……街中では。
「そうだ。 鐐 、指輪を造ってもらおうと思ったんだが……大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だが、どのようなものにするか決まっておるのか?」
「……この髪飾りと同じような絵柄がいいです。この花、家の玄関にあって……すごく好きなので」
「うむ。……では、二人共指の大きさ測るぞ?」
何処からか糸を出してきて、左手薬指に巻き付けた。一周した所で色をつけている。
これで指の大きさを測っているようだ。
「なるほど。ではこの大きさで指輪を造る。今回も頑張って造るから楽しみにしとくのだぞ!」
「まてまてまてまて! さっき言っただろ? 加護が強すぎると。……これ以上、威力強い加護増やす気か?」
確かに加護の威力が既に強すぎて、まるで一人の人間に国家権力での護衛を動かしてるようである。
既に獣が弾け飛んでいるのだ。
どう考えても、普通の防御の域を超えている。
「けち。……別に良いではないか。鈴音の安全が確保されのだぞ!」
「……それは、そうなんだが」
「……? 何をそんなに渋っているのだ。………………あれか? 『鈴音の事は俺が傍で護りたい! 力付けすぎると頼られなくなりそうで怖い』ってことかのう?」
「……うるさい」
「はははははっ! 山吹、お主顔が赤いぞ。やはり図星なのだな!」
「え、そういう事だったのですか?」
「鈴音……こっち見ないでくれ」
ふいと背けてしまったが、一瞬見えたその顔は真っ赤だった。
髪から覗く耳も少し赤いようだ。
その態度は図星だと言っているようなもの。
カッコイイのに可愛いのは本当に卑怯。ずるい。
つられて鈴音も頬を染める。
「…………なあ、二人共。仲の良さを見せびらかすなら外でやってくれんか? 先程食べた昼食が胃で暴れておる」
鐐 にじろりと妬ましそうに睨まれる。貴継が不在だから余計なのだろう。
にしても、先程皆で食べた 鐐 作の“おむらいす”が出てくるのはいただけない。
「………………あ、えー、と。……頼みたい事が、あってだな。 鐐 と貴継に俺達の婚姻で仲介人として出て欲しい」
先に冷静になったのであろう山吹が、少々強引に話を変えた。
……本来の目的は指輪の予定だったが、婚姻の仲介を頼むのも予定にあったのであながち間違いではない。
「あ、是非お願いします! ……私、家族呼ばないので」
「構わぬぞ。貴継にも後で言っておく。いつやる予定だ? 指輪もその日に合わせよう」
「「………………」」
日程云々は全く話してない。
山吹もすっかり忘れていたのだろう。
「あと、鈴音の花嫁衣装はどうするのだ。……あれは使えまい」
「そうだな……」
「あれ……って、なんですか?」
「鈴音が泉に投げ入れられた時に着てたやつだ。鈴音に大きさが合ってなかったのもあるが…………捨ててしまったんだ。勝手に悪かったな」
既にあの衣装は捨てられてたらしい。
鈴音は当然、知るはず無かったのだが。
「あ、そうなんですね。どうしたのかなとは思ってましたが、別に要らないので問題ないです」
そう。あれは、どうせ【生贄】として着ていたものに過ぎない。
今回の婚姻の時にはちゃんと【花嫁】として、衣装を着たい。
「…………妾のが使えれば良かったんだろうが、身長が違いすぎるから使えぬな。……うむ、妾の衣装を作った所へ行くといい。確かな、ここに……名刺が、あったはず……なんだが」
鐐 さんのは確かに使えるはずがない。鈴音には大きすぎる。
身長は山吹と同じくらいある。
…………なにより、胸が。
「おお! これだ。『アラーニャ』という店に行くといい! ……店主は少しだけ癖があるが、良い腕をしている」
「ありがとうございます! ……あれ、この名刺紙じゃないんですね? 凄く手触りが気持ちいいです……ずっと、触ってたいです」
「……ほんとだ。なんだ、これ。紙と布の中間のような……しなやかで柔らかい紙、か? いや、紙にしてはすべすべしている。……これは、布か」
「ふふふふ。それもそこに行けばわかる。……して、日程はどうするのだ? 指輪は最短でも一月程だが……多分衣装もそれくらいかかるだろう」
「では……出来上がる頃は、どうでしょう? この日がいいというのは、ないので」
「ああ、そうだな。そうするか。…… 鐐 や貴継は日程調整できそうか?」
「当たり前であろう? 鈴音の婚姻なのだぞ。無理にでも調整して絶対参加するので安心せい」
絶対優先は鈴音の婚姻らしい。嬉しいものだ。
「では、頑張って造るからな! ……残念だが甘味は婚姻の後の楽しみに取っておこう! 出来たら連絡する」
「はい! 指輪楽しみにしてます。ありがとうございます!」
「 鐐 、根詰め過ぎないようにな」
思っていた以上に 鐐 がやる気なので、もしかしたら早く出来上がるかもしれない。
出来上がりが楽しみである。
「そういえば、山吹さん。出来たら連絡すると言ってましたが……手段ってあるんですか?」
「……あ、ないな」
その後慌てて店に戻り、店内へ呼びかけるも応答がない。
なんと、既に作業室に篭っていた 鐐 さん。呼び出すのにとても苦労した。
何とか引き摺り出して、話し合った結果。
山吹と鈴音が、一月後に指輪と衣装をそれぞれの店に取りに来るからその時までに造っておく。
という事になった。
--ちなみに、決まった途端また篭ってしまったのは言うまでもないだろう。
今日は朝から加護の話をしに出てきたので、まだ時間も早い。このままアラーニャへ向かう事にした。
まだこれから相談だが、きっと期限が決まっていた方が彼女--彼かもしれないが--動きやすいだろう。
それに、あの不思議な名刺の謎も気になって仕方がない。
取り出した名刺を陽にかざしてみると、少し向こう側が透けて見えた。
そしてその名刺には店名しか書かれていない。
ますます不思議が増えただけだが、薄い布一枚隔てた太陽も凄く綺麗だった。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
退屈扱いされた私が、公爵様の教えで社交界を塗り替えるまで
有賀冬馬
恋愛
「お前は僕の隣に立つには足りない」――そう言い放たれた夜から、私の世界は壊れた。
辺境で侍女として働き始めた私は、公爵の教えで身だしなみも心も整えていく。
公爵は決して甘やかさない。だが、その公正さが私を変える力になった。
元婚約者の偽りは次々に暴かれ、私はもう泣かない。最後に私が選んだのは、自分を守ってくれた静かな人。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる