生贄な花嫁ですが、愛に溺れそうです

湖月もか

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紅茶入れてみました

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「わあ! 凄い! もうこんなに育ったんですね!」
「そうだな。どう考えても通常の植物より成長早いな。……やっぱりハーブ以外もやらないか?」

 家の裏手に作った畑。
 種をまいてから二週間ほどが経過した。
 既にそこは青々と様々なハーブが育っている。

「お野菜とかは、また今度でいいです。それよりも、ハーブティー作ってみたいです! ……いいですか?」
「なにか郁麻から作り方とか聞いてるのか? ……鈴音が勘で作ると大変なことになる予感がするんだが」
「……大丈夫ですよ。ちゃんと簡単な作り方の紙も入ってましたから」
「なら、いいんだ」

 色々とあったが、山吹と暮らし始めてから2ヶ月程が経過した。
 日々、料理を山吹から教わって、合間には読み書きとかを勉強しながら過ごしている。

 習い始めてすぐの時、一人で料理を作ってみた事がある。……ちなみに山吹が街へ買い物に出かけている間に、だ。
 帰ってきた山吹を出迎えて、驚かせようと思って作ったお味噌汁と卵焼き。
 思惑通り、驚いた山吹と共に食卓へつき、食べた。

 卵焼きを箸で口へ運ぶ山吹を凝視してしまうくらいには、感想が気になった。
 本人は見られて食べにくそうにしているが、そこは気にしない。

 口を開け、少し表面の焦げた卵焼きを入れ--
『……ん? なんか、ジャリジャリするぞ。…………殻が、混ざっているのか。これ、間違って入ったって量じゃ無いんだが、卵は割ったか? あと砂糖と塩間違えてないか? 甘しょっぱいぞ』

 卵を殻ごと棒で砕き、塩と醤油を混ぜて焼いた。つもりだったがどうやら塩と砂糖を間違えたようだ。
 そもそも卵は殻を割って、中だけ入れるのを知らなかった。その時までに山吹に教わった料理には、不幸にも卵を使ってなかったのだ。

 味噌汁に至っては、
『味噌入れすぎだろう……濃いぞ。あと具はどこいった?』

 じゃがいもと豆腐を入れたはずだが……どうやら火にかけ過ぎたのと混ぜすぎた為、具が無くなってしまったようである。

『鈴音。頼むから適当に作るのだけは辞めてくれ。お願いだから、今後はちゃんと作り方を書いた紙を見ながら作ってくれ……頼む。じゃないと、俺は鈴音の作った料理が怖くて食べれない』

 と、山吹に言われてしまった。
 それ以降はちゃんと作り方を書き留めた紙を見ながら、たまに一人で作っている。
 今の所は美味しくできているようだ。

 だが、この事件以来。
 作り方の情報がないまま作った鈴音の料理は、山吹にとって何が出来上がるか不安で仕方がないものとして認識されてしまい、教わったものしか作らせてもらえなかった。

「……ほんとに大丈夫なんだな?」
「大丈夫ですって。ちゃんと頂いた紙の通り作りますから」
「是非、そうしてくれ」

 余程不安らしい。
 念押しをされてしまった。
 ……今では本当に反省しています。


 *  *  ◆  *  *


 どうやら料理が苦手らしい鈴音が、ハーブティーを作るといい台所へ篭っている。
 俺に作ってくれるとの事で出来上がるまでは大人しく待ってて欲しいと、台所を追い出されてしまった。

 ……過去に卵の殻を粉砕して料理したんだ。どれだけ恐ろしいものが出来上がるのか不安で仕方がない。
 台所の方を見ながらも、そわそわと落ち着かない。

「本当に大丈夫なのか……?」

 ガタゴトと音が絶えない。
 時折、あれ?とかどうするんだろう?とか不安を煽る声が聞こえてくる。が、まあいいかとつぶやく声も聞こえる。
 ……ほんとにいいのか、それは。

 楽しみに待つことは出来なさそうだ。


 数分後、鈴音がキラキラした笑顔でお盆にのせたハーブティーを二つ持ってきた。
 ほかほかと湯気が上がるそのカップは先日、山吹が街へ買いに行った異国で紅茶を飲む時に使われるというティーカップ。小さいお皿とその上に乗ったカップで、おしゃれだ。色違いのお揃いにした。

 カップの中に見える液体は少し緑で、香りは……悪くない。
 爽やかな香りがカップから漂っている。
 一見したらとても美味しそうなハーブティーだ。

「飲んでみてください!」
「ああ」

 カップも暖めたのだろう。仄かに暖かい持ち手に指をかけ、持ち上げる。
 近くに持ってくるとその香りがより感じられ、気持ちも爽やかになってくる。

 少し息を吹きかけ、カップの縁へ口をつける。
 ……この間鈴音は向かいからこちらをじっと見ている。爛々と輝く瞳は俺の感想を待っているようだ。
 --これは、あの料理の時と同じ表情だ。


 少し熱めのハーブティーを口に入れ





「----っ!」

 苦い。とてつもなく苦い。
 危うく噴き出しそうになった。
 なぜ香りはこんなにも爽やかなのに、その味わいは爽やかでは無いのが不思議でならない。
 そして、身体が液体を拒絶しているのか上手く飲み込む事が出来ない。

 ごくり
 と音を立ててやっと飲み込めた。
 薄らと涙が滲んでいるのがわかる。

 しかもだ。
 舌に僅かに残る液体は少しとろみがあり、それが更に不快にさせている。
 それに、微かだが舌がピリピリとする。
 苦味の下にも苦味がある。……味わえば味わうほど苦い。
 といか、むしろ苦味しか感じられない。本当にハーブティーなのか?これはその辺の雑草を煮たんじゃないよな?と思うくらいに苦い。

 ……ちゃんと郁麻の作り方の書いてある紙の通り作ったのだろうが、どうしてこうなった!?
 作る過程を見たい。是非とも。

「どう、ですか?」

 思わぬ苦味の深さに眉間にシワがよる。
 一部始終をじっと見ていた鈴音がとても不安そうな顔でこちらの様子を窺っている。

「その……正直に、言うぞ? …………凄く苦い」
「え?」
「これは……なんて言ったらいいんだ? というかな、どうやって作ったんだ、これ。とても苦いぞ。香りは爽やかなのに、苦味しかない。口に含むと鼻から、苦味と爽やかな香りが抜けていくのはある意味凄い」

 今机に並んでいるもう一つのカップはもちろん鈴音用だ。
 ここで紅茶の感想を誤魔化したところで直ぐに解るだろう。
 少し心苦しいが、本当に感じたことを伝える。

「……そんなに苦いですか? …………私も飲んでみます」

 そう言ってカップを持ち上げ、口をつけた。熱かったのか、瞬時に離し、恥ずかしそうにこちらを見る。
 ……可愛すぎか。

 ふうと息を紅茶にかけ、しばらくしてからまた口をつけた。今度は大丈夫だったのだろう。
 俺が苦い苦いと言ったのもあるのだろう。恐る恐る液体を口に入れ、そのまま飲み込んだ。

 こくりと喉が上下した。

「……美味しい、です」
「え? 苦く、ないのか?」
「はい。……私は好きです、これ」
「そうか、なら……いいんだ」
「山吹さんには、苦いんですね……。次! 美味しいの作れるようにします」
「いや、あの……程々でいいからな? ……あと頼むから俺にも作る過程を見せてくれないか?」
「大丈夫ですよ! 今度こそ美味しいって思ってもらえるように頑張りますから! ……ちなみにその間、山吹さんは台所立ち入り禁止です」
「そ、そうか……わかった。……楽しみに、待ってるよ」

 次回以降も台所へは、立ち入らせてもらえなさそうだ。とても残念である。

 次こそはと鈴音は意気込んでおり、作り方が書かれているのだろう紙を見ながらここをこうしたら良かったのかと呟いている。
 原因がわからないうえ、作った本人には美味しいと感じられるのだから何処を改善したらいいのか解らないのだろう。

 意図してあの味ではないという事だ。
 ……それがとても恐ろしいぞ、俺は。
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