欲望

♚ゆめのん♚

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4話 最期

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~翌日~

どんよりとした雲はどこかへ行ったみたいに日差しが眩しい歌舞伎町。


絵里香は、そんな歌舞伎町を真っ赤なバラの花束を手に持ち歩いていた。
向かった先は、大我のお店「GOLD」だった。

「GOLD」の目の前に立った絵梨花は看板をジーッと数秒見つめる。

絵梨花「よしっ」

そう言った絵梨花は、お店の横にある非常階段を必死に駆け上がる。
屋上に着いた時には、息が上がっていた。

屋上からみた歌舞伎町の景色はとても綺麗だった。
ナンパをしているお兄さん。
地べたに座り喋っているトー横キッズ。
映画館へ 向かうカップル。
そんな人達がいる歌舞伎町。

私は、ここで育った。
絵梨花は、真っ赤なバラの花束を契って屋上から1枚ずつばら蒔いた。

歌舞伎町にいる人は、絵梨花の方を見てスマホを向けている人もいた。

絵梨花「見てくれてありがとう」

そして、黒のバックから1万円札を屋上からばら蒔いた。

私は、愛されたかった。今だって、誰かに助けられたかった。
絵梨花は、屋上の柵を越えた。

絵梨花「バイバイっ」

微笑みながら涙を流して絵梨花はその屋上から飛び降りた。

飛び降りた瞬間、スマホのカメラを向けている人もいる中で 
甲高い悲鳴が歌舞伎町に響き渡る。

ホストクラブ「GOLD」の目の前は、
1万円札とバラが絵梨花の血で真っ赤に染まっていた。

その様子は一気にSNSで拡散された。



〇喫茶店「和」

絵梨花の飛び降り動画を見て大号泣して目が真っ赤に腫れている凛。

私のせいだ。私が真実を掘り下げてしまったからだ。
絵梨花が死んだのは私のせいなのだ。

そう考えれば考えるほど、涙が溢れてくる。

凛は、お店を駆け抜けるように出る。



〇新宿・歌舞伎町

青のシャツに黒いミニスカートを履いている凛は、歌舞伎町をふらふらと歩いている。

絵梨花は、太陽みたいな眩しい人だった。
ホス狂なだけありお金使いは荒かったものの、新宿界隈で1番仲良かった友達。
そんな子を私が殺した。
私は、生きている場所なんて最初から無かったんだ。

すれ違う人は、皆んな幸せそうだな。

歌舞伎町の街を見て深い深いため息をつく凛。

凛「誰か私を殺してくれ....」

殺してくれたらもう、考える必要もない。
おじいちゃんは、生きてくれと言うけど生きる意味が正直分からない。
居なくなれば、自由になれるのに。

凛の中で何かがプツンと切れたような音がした。

凛「誰か!誰か!私を殺してくれえええ!」

街を歩く人は、凛の方を見るが冷たい視線を浴びる。

凛「誰かああ!殺してくれえええ!」

そう凛が叫んだ直後、後ろから幹人が凛を抱きしめる。

幹人「死なないでくれ。頼む」
そう言って抱きしめた力が強くなる。

凛は、何も言わずに大号泣をする。



~翌日~

〇喫茶店「和」
店前のドアには、定休日のプレートがかかっている。

店内には、幹人と凛がテーブル席に座っている。

数秒の沈黙が続いたあと、幹人が凛のことをまっすぐ見つめて、口を開く。

幹人「昨日、凛が外で暴れた数時間前に一通の手紙が届いた」

幹人は、ショルダーバッグから手紙を出して凛へ渡す。

凛「手紙..?」
幹人「とりあえず、読んでみろ」

言われるがまま凛は、手紙を開けて読む。

『凛へ。
   この手紙が届いている時には私はこの世にはいない。
   私のお父さんが大我だと知ったあの時、やっぱりって思ってしまったんだ。 
   なんとなく気づいていたんだよね。お父さんじゃなくても多分親戚なんだろうな。
   それが確信しただけ。凛のことだから今頃、自分を責めてるでしょ。
   責めないで。凛が悪いわけじゃない。むしろ私たちは被害者。
   現実を私は受け止める容量が無かった。先に逝ってごめんね。
   だから私からの遺言。凛。私の分まで生きて欲しい。
   私の分までやりたいことやって。好きな様に自由に生きて欲しい。
   私は貴方の心の中にいるから。今までありがとう。
   絵梨花より』

静かな店内で綺麗なひとつの涙を凛は零した。

凛「絵梨花のばか....」

幹人は、その凛の姿をじっと見つめる。

店内には、悲しい空気が漂っていた。





~3ヶ月後~
相変わらず昼間が似合わない新宿・歌舞伎町。
道の両脇には、大量の生ゴミの山。
外国人観光客がスマホで写真を撮っている。
その写真は、インスタにでも載せて
きっとその投稿のハッシュタグは#歌舞伎町 なのだろう。
今日も、沢山の人で昼間から賑わっている。


ピンクのシャツを着て、黒のロングスカートを履いて
ヘッドフォンで椎名林檎の「罪と罰」をを聞いて、
真っ赤なバラの花束を持って歌舞伎町のど真ん中を堂々と歩く凛。

バラの花束を持っているせいか、周囲の視線を凄く感じる。
凛が向かった先は、絵梨花が亡くなった場所「GOLD」のお店の前だった。

跡形もなく綺麗になっているが、
唯一残っているのはコンクリートに染み付いて落ち切れていない絵梨花の血だった。

店前の端っこに凛はバラの花束を置く。

凛「絵梨花。来たよ。
        1人の人として、友達として、私は愛してたよ」

そう言って、凛はそのビルの屋上を見上げて
その場からゆっくりと立ち去っていく。


〇 喫茶店「和」

白いTシャツの上に緑のエプロンをかけジーンズを履いている幹人は、
コーヒーをカップに注いでいる。

そこに、凛がヘッドフォンを首にかけながらお店に入ってくる。

幹人「おかえりなさい」
凛「ただいま」


テレビでは、大我と真司が逮捕されたニュースが流れている。
そんなニュースを見向きもせず、お店の準備をしている。

絵梨花がこの世から居なくなって今日で3ヶ月。
あれから...上手いこと、警察に情報が回った。
2人は、消えたんだ。

そして、私は、幹人とは付き合い始め
二人で表は喫茶店。裏は、新宿・歌舞伎町の情報屋として働いている。
普通のお客さんも居れば、情報を売る人、買う人もいる。


“カランカラン”

喫茶店「和」のドアが開く。

お客さんは、カウンターに座る。

お客さん「とある件を売りたい...」
幹人「かしこまりました」

幹人は、メモを準備する。
凛はその横でコーヒーを煎れている。

何かを満たすために望む心。
その心は人が受け継いでいくのかもしれない。
それが他の街より多いのが、ここ新宿・歌舞伎町。

凛「あぁ、今日も欲望にまみれた街だ」

ふっと笑った凛の顔は、絵梨花の笑った顔にそっくりだった。

絵梨花の欲望は、凛へと受け継がれていったのだ。


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