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XVIII.悪と正義
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翌日メアが登校すると、教室内で能登ユウリの株が上がっていた。
それも尋常ではない上がり方だ。
和傘とネズミを携える自称魔術師、所謂変人という評価からの急上昇なので、そのふり幅は凄まじいものがあった。
何故か、理由は明白であった。昨日と今日で変わったところと言えば一つ、髪型だ。
俺、能登イケるかも。うん、それによく見たら何気にスタイル良くね? いや、普通に可愛くね? アイドルの○○に似てねぇ? ユウリたそマジ天使! 等々、そのような囁きもクラスの至る所から聞こえる。
無価値同然の株が一夜にしてある意味ストップ高となってしまった。それを目の当たりにしたクラスメイト(とりわけ男子諸君)からすると、その急転直下とも言える変化率は目を見張るものであった。
そして同時に、入学直後という一番話しかけやすい時期に繋がりを作っておかなかった男子たちは壮絶に後悔する。国外から来たという彼女のことを知る人間は皆無であった為、そのようなインサイダーな情報を得る者がいなかったのは無理もない。
数々の男子が機を伺う中、真っ先に動くのはとりわけ自身にある程度の自信を持つ者たちだ。ユウリはその日の昼休みだけで他クラス含めそのような男子計三人からアプローチを受けた。
その度に傍らのメアが物凄い剣幕で追い返すのだが、その三人の中の一人、他クラスの生徒だが、同世代の男子は例外なく虫だと考えているメアですら思わず身構えてしまう程の容姿の持ち主の男子もいた。
名は山崎と言うらしい。噂によるとサッカー部のエースで同学年の女子たちの憧れだ。
無論、メアは他の女子とは違いその山崎という色男に対して何ら興味はなかったが、それでも何となく負けた気がして面白くなかった。
だからその日の午後の授業中はその山崎君とやらがどんなに取るに足らない人間かを証明する作業を、難関校の過去問に出てくる数学問題の式を導き出すよりも真剣に取り組んだ。他クラスで接したことも話したこともない相手に対し当然情報は圧倒的に不足していたが、得られる記憶上の視覚的情報を最大限活用し、この年頃の少女では通常考えられないまでの高度な論理的帰結を、悪意と憎悪を綯い交ぜにしながら導き出していった。
結果、メアの中では山崎は手当たり次第女に手を出すろくでなしということになった。
依然メアの心的疲労は増すばかりだが、そこまではまだマシであったと言える。
一番の問題は、クラスの女子の、とりわけ御崎のグループに類する女子のユウリに対する接し方が、最早イジメと称して差し支えないものになっていたことだ。
その日だけで、授業中に隙を見て消しゴムをぶつけられる、体育のバレーボールで明らかにユウリへ集中的にボールをぶつける、廊下ですれ違う度に肩をぶつける等々。今までは離れた所で嘲笑し、たまに面倒事を押し付けるくらいに止まっていたのが、流石のユウリもここまでくると、自身が不必要に不当な扱いを受けていることに気付いた様子であった。
特段ユウリを慮ってのことではない。そもそもメア自身だって思想は違えど、ユウリという少女に対して厳しい態度で接してきた筈だ。だがやり場のないもやもやとした気持ちが胸の中で滞留しているのも確かであった。いくら肺に酸素を送り込んでも中途半端に満たされないような、そんな息苦しさの中で、気を紛らわせようと一心不乱に黒板をノートに取る筆圧だけが強くなっていった。
ユウリ自身が何も言い返したり、拒絶したりしようとしないところも見ていて腹立たしかった。その度に脳裏に浮かぶユウリの言葉。「わたしは例えクラスのほとんどの方から嫌われたとしても、誰か一人にでもに好かれればそれで良いと思っています」。
ふざけるな。メアは奥歯をぎりりと噛んだ。シャーペンの芯がパキンと折れて飛んだのはこれで三度目。
その日は全く授業に集中できなかった。
HRでは担任の篠原が来月の5月26日におよそ三年ぶりの月食があるというような話題を話していたが、メアは上の空だった。だが、そこにおいてはクラスメイトのほとんどがそうだろう。今時天体観測に興味を示す子供は少ないので無理はない。
HRが終わり、一切興味を示さず相槌すらまともに打たない有象無象に全くめげずに月食についての話題を話しきった篠原が教室を後にした瞬間、本日五発目の消しゴムがユウリの頭でバウンドした。同時にどこからともなく沸き起こる嘲笑の囁き。
手にしていたシャーペンを誰に向けるでもなく、けれどもまるで凶器か何かのように握りしめたその時、メアの携帯にメールが入る。
それを確認し、メアは拳を解いた。
衆人観衆の前でユウリの手を引くのは躊躇われた為、席を立ちそっと周りにわからないように、
「時緒と燐華がうるさいから秘密基地行くわよ、付いてきなさい」
そう耳打ちし、そのまま速足で廊下へ出た。
「メアさん!」
先に校舎を出たメアを追いかける形でユウリが駆け寄る。
メアは周りに他の生徒らしき人間がいないのを確認してからユウリに目を向けた。
「メアさんの言った通りでした。わたし、嫌われ者のようです……」
「ふん……」
メアは何かを言おうとはせず、代わりに不機嫌そうに鼻を鳴らした。
確かに当初からクラスで浮いていたユウリは弄りの対象になるには打って付けであったが、決定的な原因はやはり先のメアとのやり取りだ。あれさえなければ、この常識知らずは髪を切ることもなかったし、美容室で華麗な大変身を遂げることもなかった。
四月も終盤に差し掛かり、その日は晴れていたこともあり初夏の足音を感じさせる陽気であった。二人の間を少し生ぬるい緑を含んだ風が吹き、頬を撫でる。
だがメアはそのような陽気の心地良さに浸るでもなく、ただただ機械的に交互に動かす自身の足を見つめながら歩みを進めていた。時折聞こえるスズメか何かの声と、ざりざりと乾いた地面を踏む二人分の一定した足音だけが耳に届く。
悪の魔術師を追って来たという少女。
この少女にとってクラスメイトからの悪意は、どういうものなのだろうか。
「あんたにとって――」
気が付けば、口に出していた。
言葉に反応して、ユウリはメアに顔を向ける。瞬間、また風が吹き、端正に切り揃えられた髪を揺らした。ただ声を掛けられただけだというのに、無表情に近いユウリの口元に微かに笑みが浮かんだようにメアは感じた。
「あんたにとって、悪ってどういうことなの?」
急な問いかけに一瞬、不思議そうに小首を傾げ、だが大して表情は崩さずに、〝正義の魔術師〟は答える。
「人を、殺すことだと思います」
その口から出たのは当たり前過ぎるような回答であった。
だが、当たり前ではあれ、単純ではない。人の死には様々な要因がある。その死に関わる原因となるものを余さず〝悪〟と呼ぶのであれば、それは至る所に混在している。殺人鬼やテロリストのようなわかり易いものばかりではない。
最近よくニュースでも取り沙汰される「イジメ」の問題なんかも、イジメている当人たちにそこまでのつもりがなくても、結果的に人を死に追いやっている場合も少なからずある。ならば、その「イジメ」だって人殺しと同等の悪である筈だ。この自称〝正義〟の魔術師はそのような〝悪〟に対し、どのような感情を抱いているのであろうか。
メアは横目にユウリの様子を確認する。特段変わった様子はない。世間的に見た〝変わった佇まい〟は別にして、それ以外はいつものままだ。確かに先程自身が嫌われ者だと自覚したことを漏らした時の声色は少し寂しげではあったが、その表情に大きな変化は見られなかった。
「あんた、許せないとは思わないの? あんな扱い受けて、少しはやり返したり言い返したりしないの?」
「確かに心地良いとは言い難いですが、恐らくそれはわたしにも原因があるのでしょう。わたしはわたしなりに努力しているつもりですが、それでも他の世界の住人だということで不自然さが出てしまっているのだと思います。わたしの世界において異端は恐怖の対象です。自身と違うというだけで、それは受け入れ難く、排除すべき理由となるのです。それはこの世界でも共通の感覚だとわかりました。ですからわたしはクラスメイトの方たちを責めるよりもわたしがより努力する方を選ぼうと思います」
その自己犠牲的な精神の源は何なのか、メアはようやく収まりかけていた苛立ちが再燃し、ぎりっと拳を握った。それがいつか「自身が死にたい」と思う程の苦痛になった時に初めて〝悪〟だと認定するのだろうか。それともどんなに酷い仕打ちを受けようともこの少女は慈愛に満ちた心でもって「それは自分の所為だ」と言い張るのであろうか。
「そう、それがあんたの〝正義〟?」
心底くだらない思想だと、メアは吐き捨てた。
「いえ、違いますメアさん」
だがユウリはそう即答する。
「だったら何よ」
「悪が人を殺すことと同じように、正義もまた、人を殺すこと、です」
「はあ? 人を殺すことは悪でしょ」
「違います。悪を殺すことは紛れもない正義です」
普段と違いそう言い切るユウリの言葉には、普段の会話と語調の大差はなかったが、それでも、その言葉だけはメアの知らない何かに裏付けされた力強さを感じた。
「悪の存在をなくすこと以外では正義たりえません」
ユウリはそう続ける。言い知れぬ力強さを持った語気を含んで。
メアはそれ以上踏み込みたくはなかった。いつも素直に従うユウリに否定されたことはメアの琴線に触れたと言えなくもなかったが、それ以上に〝正義〟の定義を主張するユウリの様子が〝世界の終焉〟を望む時緒や燐華たちと朧げにだが重なってしまい、思わず口を噤んでしまったのだ。
だが、最後にメアは一言だけ尋ねた。
「じゃあもし、あんたの探す〝悪〟が目の前に現れたら、あんたはその〝悪〟を殺すの?」
「殺します」
ユウリ少しの迷いも見せず、そう言い切って見せた。その言葉と瞳には一片の曇りすらなかった。
それも尋常ではない上がり方だ。
和傘とネズミを携える自称魔術師、所謂変人という評価からの急上昇なので、そのふり幅は凄まじいものがあった。
何故か、理由は明白であった。昨日と今日で変わったところと言えば一つ、髪型だ。
俺、能登イケるかも。うん、それによく見たら何気にスタイル良くね? いや、普通に可愛くね? アイドルの○○に似てねぇ? ユウリたそマジ天使! 等々、そのような囁きもクラスの至る所から聞こえる。
無価値同然の株が一夜にしてある意味ストップ高となってしまった。それを目の当たりにしたクラスメイト(とりわけ男子諸君)からすると、その急転直下とも言える変化率は目を見張るものであった。
そして同時に、入学直後という一番話しかけやすい時期に繋がりを作っておかなかった男子たちは壮絶に後悔する。国外から来たという彼女のことを知る人間は皆無であった為、そのようなインサイダーな情報を得る者がいなかったのは無理もない。
数々の男子が機を伺う中、真っ先に動くのはとりわけ自身にある程度の自信を持つ者たちだ。ユウリはその日の昼休みだけで他クラス含めそのような男子計三人からアプローチを受けた。
その度に傍らのメアが物凄い剣幕で追い返すのだが、その三人の中の一人、他クラスの生徒だが、同世代の男子は例外なく虫だと考えているメアですら思わず身構えてしまう程の容姿の持ち主の男子もいた。
名は山崎と言うらしい。噂によるとサッカー部のエースで同学年の女子たちの憧れだ。
無論、メアは他の女子とは違いその山崎という色男に対して何ら興味はなかったが、それでも何となく負けた気がして面白くなかった。
だからその日の午後の授業中はその山崎君とやらがどんなに取るに足らない人間かを証明する作業を、難関校の過去問に出てくる数学問題の式を導き出すよりも真剣に取り組んだ。他クラスで接したことも話したこともない相手に対し当然情報は圧倒的に不足していたが、得られる記憶上の視覚的情報を最大限活用し、この年頃の少女では通常考えられないまでの高度な論理的帰結を、悪意と憎悪を綯い交ぜにしながら導き出していった。
結果、メアの中では山崎は手当たり次第女に手を出すろくでなしということになった。
依然メアの心的疲労は増すばかりだが、そこまではまだマシであったと言える。
一番の問題は、クラスの女子の、とりわけ御崎のグループに類する女子のユウリに対する接し方が、最早イジメと称して差し支えないものになっていたことだ。
その日だけで、授業中に隙を見て消しゴムをぶつけられる、体育のバレーボールで明らかにユウリへ集中的にボールをぶつける、廊下ですれ違う度に肩をぶつける等々。今までは離れた所で嘲笑し、たまに面倒事を押し付けるくらいに止まっていたのが、流石のユウリもここまでくると、自身が不必要に不当な扱いを受けていることに気付いた様子であった。
特段ユウリを慮ってのことではない。そもそもメア自身だって思想は違えど、ユウリという少女に対して厳しい態度で接してきた筈だ。だがやり場のないもやもやとした気持ちが胸の中で滞留しているのも確かであった。いくら肺に酸素を送り込んでも中途半端に満たされないような、そんな息苦しさの中で、気を紛らわせようと一心不乱に黒板をノートに取る筆圧だけが強くなっていった。
ユウリ自身が何も言い返したり、拒絶したりしようとしないところも見ていて腹立たしかった。その度に脳裏に浮かぶユウリの言葉。「わたしは例えクラスのほとんどの方から嫌われたとしても、誰か一人にでもに好かれればそれで良いと思っています」。
ふざけるな。メアは奥歯をぎりりと噛んだ。シャーペンの芯がパキンと折れて飛んだのはこれで三度目。
その日は全く授業に集中できなかった。
HRでは担任の篠原が来月の5月26日におよそ三年ぶりの月食があるというような話題を話していたが、メアは上の空だった。だが、そこにおいてはクラスメイトのほとんどがそうだろう。今時天体観測に興味を示す子供は少ないので無理はない。
HRが終わり、一切興味を示さず相槌すらまともに打たない有象無象に全くめげずに月食についての話題を話しきった篠原が教室を後にした瞬間、本日五発目の消しゴムがユウリの頭でバウンドした。同時にどこからともなく沸き起こる嘲笑の囁き。
手にしていたシャーペンを誰に向けるでもなく、けれどもまるで凶器か何かのように握りしめたその時、メアの携帯にメールが入る。
それを確認し、メアは拳を解いた。
衆人観衆の前でユウリの手を引くのは躊躇われた為、席を立ちそっと周りにわからないように、
「時緒と燐華がうるさいから秘密基地行くわよ、付いてきなさい」
そう耳打ちし、そのまま速足で廊下へ出た。
「メアさん!」
先に校舎を出たメアを追いかける形でユウリが駆け寄る。
メアは周りに他の生徒らしき人間がいないのを確認してからユウリに目を向けた。
「メアさんの言った通りでした。わたし、嫌われ者のようです……」
「ふん……」
メアは何かを言おうとはせず、代わりに不機嫌そうに鼻を鳴らした。
確かに当初からクラスで浮いていたユウリは弄りの対象になるには打って付けであったが、決定的な原因はやはり先のメアとのやり取りだ。あれさえなければ、この常識知らずは髪を切ることもなかったし、美容室で華麗な大変身を遂げることもなかった。
四月も終盤に差し掛かり、その日は晴れていたこともあり初夏の足音を感じさせる陽気であった。二人の間を少し生ぬるい緑を含んだ風が吹き、頬を撫でる。
だがメアはそのような陽気の心地良さに浸るでもなく、ただただ機械的に交互に動かす自身の足を見つめながら歩みを進めていた。時折聞こえるスズメか何かの声と、ざりざりと乾いた地面を踏む二人分の一定した足音だけが耳に届く。
悪の魔術師を追って来たという少女。
この少女にとってクラスメイトからの悪意は、どういうものなのだろうか。
「あんたにとって――」
気が付けば、口に出していた。
言葉に反応して、ユウリはメアに顔を向ける。瞬間、また風が吹き、端正に切り揃えられた髪を揺らした。ただ声を掛けられただけだというのに、無表情に近いユウリの口元に微かに笑みが浮かんだようにメアは感じた。
「あんたにとって、悪ってどういうことなの?」
急な問いかけに一瞬、不思議そうに小首を傾げ、だが大して表情は崩さずに、〝正義の魔術師〟は答える。
「人を、殺すことだと思います」
その口から出たのは当たり前過ぎるような回答であった。
だが、当たり前ではあれ、単純ではない。人の死には様々な要因がある。その死に関わる原因となるものを余さず〝悪〟と呼ぶのであれば、それは至る所に混在している。殺人鬼やテロリストのようなわかり易いものばかりではない。
最近よくニュースでも取り沙汰される「イジメ」の問題なんかも、イジメている当人たちにそこまでのつもりがなくても、結果的に人を死に追いやっている場合も少なからずある。ならば、その「イジメ」だって人殺しと同等の悪である筈だ。この自称〝正義〟の魔術師はそのような〝悪〟に対し、どのような感情を抱いているのであろうか。
メアは横目にユウリの様子を確認する。特段変わった様子はない。世間的に見た〝変わった佇まい〟は別にして、それ以外はいつものままだ。確かに先程自身が嫌われ者だと自覚したことを漏らした時の声色は少し寂しげではあったが、その表情に大きな変化は見られなかった。
「あんた、許せないとは思わないの? あんな扱い受けて、少しはやり返したり言い返したりしないの?」
「確かに心地良いとは言い難いですが、恐らくそれはわたしにも原因があるのでしょう。わたしはわたしなりに努力しているつもりですが、それでも他の世界の住人だということで不自然さが出てしまっているのだと思います。わたしの世界において異端は恐怖の対象です。自身と違うというだけで、それは受け入れ難く、排除すべき理由となるのです。それはこの世界でも共通の感覚だとわかりました。ですからわたしはクラスメイトの方たちを責めるよりもわたしがより努力する方を選ぼうと思います」
その自己犠牲的な精神の源は何なのか、メアはようやく収まりかけていた苛立ちが再燃し、ぎりっと拳を握った。それがいつか「自身が死にたい」と思う程の苦痛になった時に初めて〝悪〟だと認定するのだろうか。それともどんなに酷い仕打ちを受けようともこの少女は慈愛に満ちた心でもって「それは自分の所為だ」と言い張るのであろうか。
「そう、それがあんたの〝正義〟?」
心底くだらない思想だと、メアは吐き捨てた。
「いえ、違いますメアさん」
だがユウリはそう即答する。
「だったら何よ」
「悪が人を殺すことと同じように、正義もまた、人を殺すこと、です」
「はあ? 人を殺すことは悪でしょ」
「違います。悪を殺すことは紛れもない正義です」
普段と違いそう言い切るユウリの言葉には、普段の会話と語調の大差はなかったが、それでも、その言葉だけはメアの知らない何かに裏付けされた力強さを感じた。
「悪の存在をなくすこと以外では正義たりえません」
ユウリはそう続ける。言い知れぬ力強さを持った語気を含んで。
メアはそれ以上踏み込みたくはなかった。いつも素直に従うユウリに否定されたことはメアの琴線に触れたと言えなくもなかったが、それ以上に〝正義〟の定義を主張するユウリの様子が〝世界の終焉〟を望む時緒や燐華たちと朧げにだが重なってしまい、思わず口を噤んでしまったのだ。
だが、最後にメアは一言だけ尋ねた。
「じゃあもし、あんたの探す〝悪〟が目の前に現れたら、あんたはその〝悪〟を殺すの?」
「殺します」
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