魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

文字の大きさ
11 / 82
第二章 クエストに向かう少女、やり過ぎる

4

しおりを挟む
《人間の装置なんて、そりゃぶっ壊れるに決まってるじゃないですか。アイナが装置をハックして冒険者カードを偽造しますので、マスターはゆっくりと手をかざしてください》
 装置は先ほどと違って異常を来すことなく稼働し、微量の光をツルカの平手に放ちながら無事に測定を終えた。直に装置から半透明のパネルが小さく浮かび上がり、測定結果の委細を提示する。それを確認した受付嬢は、胸に手を当てながら愁眉を開いた。
「ふぅ……どうやら本当に故障だったみたいですね。能力の数値的に、ランクはC。妥当な結果ですっ! あは~っ」
「弱いほうが安心するってか⁉」
 最底辺の測定結果に狂喜する受付嬢に、ツルカは青筋を立てながらカウンターを叩きつけた。
《とりあえず測定結果を偽造できました。Cランク冒険者としてカードが作られると思うので、後は普通にクエストを受けるだけです》
(お、おう。助かった)
 すると、装置の下部から一枚のカードが排出された。先ほどツルカが記入した個人情報を元に名前などが打ち込まれている。
「ではカードをお受け取りください。そちらがあなたの冒険者カードとなります!」
「へ、へえ。こんな一枚のカードが────うわっ⁉」
 ツルカがカードを手に取って色々と確認していると、いきなりカードからパネルが浮かび上がった。いわゆる、タッチレスパネルである。
「な、なんだこれ……」
「カードについてご説明しておきますね。当然ですが、冒険者カードの役割は個人の証明だけではありません。冒険者ギルドでクエストを受けるためや、受けたクエストの詳細を確認できる、いわば魔法端末です。ご覧のようにカードの裏側にある印に指を数秒かざしてもらうと、そのようなパネルがカードから浮かび上がります」
「なるほど……。確かに色々と項目があるな。『受託済みクエスト』、『達成済みクエスト』、『ギルド』、『戦友』……ふむ」
「クエストを受ける際、張り紙に符号があると思います。例で言えば……こちらですね」
 受付嬢は独特で特徴的な符号が記された、一枚の張り紙をツルカに見せつける。
「受託する場合は受付までクエストの張り紙をお持ちして頂きます。そこで私共の担当カードと、引き受ける方の冒険者カードを符号にかざしてもらい、そこで初めて受託完了です。そうするとカードにクエストの詳細が送られます」
「えっと……ひとまずクエストを受ける時は張り紙を持ってくればいいんですね?」
「はい。戦友との協力など、複数人でクエストを受ける場合はしっかり全員の冒険者カードも必要になりますので、そこはご注意ください」
 あまりにも高性能な冒険者カードにツルカは愕然とした。
「んで、もういいかガキ」
「……うん?」
 背後から男の声が聞こえた。先ほどからツルカを待っている男である。文句を言っていたものの、ツルカの手続き終わるまでしっかり待っていてくれていたようだ。
「ああ、すいません! お待たせしましたね……」
 早速、ツルカはクエストコーナーにでも行ってどんな依頼があるか一目しようと思ったが、ふと男が持っている一枚の紙に目を留めた。
「あ? なんだガキ。言った通り、こっちは急いでるんだ。終わったんなら、さっさとどきやがれ。おい、聞いてんのか!」
 どうやら男が手に持っている紙は、クエストコーナーにあった張り紙のようだ。
(危険度B。『イワトカゲ』の討伐依頼。報酬は─────)
 奮起にかられながらツルカは男が持っている紙を指さすと、受付嬢を睨みつけた。
「これ! 私もやるっ、やらせろっ!」
「「……は?」」
 ツルカの発言に、二人は言葉を失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...