魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第二章 クエストに向かう少女、やり過ぎる

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 グランディール国、騎士団本部中央会議にて。
 そこには王族、貴族の紳士淑女。並びに、多くの役員が参列していた。
「では。これより来月から行われる冒険者昇格試験の注意事項及び、流れについての会議を行う。今回は皆、参加していただき誠にありがたく思う」
 場を代表して恫喝のような威圧ある声で挨拶をしたのは、騎士団長───アルベルだった。鋭く尖った面相に、歴戦の強者たる佇まい。どんな攻撃であろうが、たじろぐことのない強剛な肉体は、彼の強さそのものを表しているに違いない。現に、名はグランドシオル全土に轟くほど。アルベルは別名『両断の剣王』と呼ばれている。
「半年毎に行われる冒険者昇格試験。これは冒険者にとって、新たなる第一歩となるものだ。庶民の依頼をこなすだけではなく、脅威となる魔物の排除。冒険者はグランドシオル全土で役立っている。よって、冒険者らを支援するのも我々騎士団の役目でもあるのだ」
「ええ、そうです。冒険者は魔物討伐だけではなく、庶民の頼みをも引き受けて下さる善良な方たち。それは国から賞賛を受けるべき存在であります。世界の為に働く冒険者は、騎士団と言った国家団と同等の地位につくべきくらい」
「ふっ、そうだな。だからこそ、国家団である我々は少しでも冒険者の役に立てるかと考案し、この試験を採用して実施している。試験に合格した者は冒険者ランクとなるものを一つ昇格させることが可能だ。基本、昇格するためにはそれなりの実績を残すこと、Sランクならば国から直々に感謝されるほどの功績を頻りと積まなければならない。しかし、冒険者昇格試験は以上の事を必要とせず、各々の試験用ギルドに配属された教官のもと厳密な評価が行われ、基準を満たしたものは自動的に昇格するシステムだ」
 いわば冒険者昇格試験というものは、あらゆる不都合の待遇を受けることのない試験。
 通常、昇格するためには功績を積むことが何よりも優先されるが、これには不都合がある。各々には戦い方のスタイルがあり、そのスタイルと抜群の相性である魔物は限られる。結論、個々の戦い方によって勝敗は左右されるのだ。
 一方、冒険者昇格試験は期間中、個々が有利に受けられるようなクエストを選ぶ事ができ、その戦闘の様子を教官が評価する。昇格したいランク帯によって基準は異なるが、見事、評価の基準を満たした者は、冒険者ランクを昇格させることが可能だ。よって、世界中の冒険者は遥々グランディール国へ来国して、半年に一回のチャンスを掴みに来る。
「冒険者にとってランクは称号だ。己の強さを示す肩書……高いほうがよかろう。冒険者の皆にも強くなってほしい。そういう思いもあってだ。なぁ、君もそう思うだろう?」
 アルベルはやや緊張を走らせて、会議室の隅に目を向ける。
「今回はよく来てくださった。他のSランク冒険者にも本日の会議に招待はしたのだが、実際に来てくれたのは君だけだったよ……」
「……そう、ですか。まあ、他の奴らは我執ばかりですから」
 そこには壁に背を預けながら腕を拱く、一人の少女がいた。生命が宿っていないかのように無愛想な表情を絶えず浮かべて、窓を埋める活気な城下町を見下ろす。
 まだ成長期の真っ只中であろう彼女は、動きやすいように改良された武装巫女装束、その上に羽織。腰には彼女の小さな体に対して、些か長い刀を帯びていた。光を失った漆黒の瞳と、まるで潮のように波立つ長髪は清らかに輝いて一束され、どちらかというと銀髪に幾分近い。少女なのにも関わらず言動、立振る舞いは大人びており、何事にも冷静沈着。寡黙ではあるが、不思議なことに彼女の存在は他と比べ物にならないほど威厳に満ちていた。
「君は上位Sランク冒険者として、下の者らが強くなっていく姿を見たいであろう。Sランク冒険者一位候補、『吹雪の剣姫ふぶきのつるぎひめ』よ」
 彼女は長嘆息して、物憂そうに口を切る。
「ランクが上がったとしてもいいことなど全くもってありません。却って、絶望するだけ。昇格したランク帯に相応しい働きができるのかが問題なのです。昇格したからと浮かれていると、上の者にねじ伏せられますよ。そう、あっさりと……。冒険者の世界は対立が絶えない、まさにサバイバルですから」
 吹雪のように凍える彼女の冷却しきった表情に、思わず全員が震撼する。
「吹雪様は……それほど」
「言いたいことはよく分かる。だが……」
「開催するか否かは皆様に任せます。実際、貫禄のある私が言います。今回の会議、私は冒険者という業界がどれほど過酷なのか……しっかり伝えに来た次第です」
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